【マーケター向け】CM分析で効果を確実に測定できる実践ガイド
日本のテレビCM市場は年間約1.7兆円規模とも言われていますが、その効果を正確に測定している企業は意外と少ないのが現実です。効果的なCM効果測定をしていないと、マーケティング予算が適切に活用されているかどうかを正確に判断することはできません。
この記事では効果的なCM分析の方法から、最適なCM効果分析ツールの選び方、さらにはCM売上効果の測定などを紹介します。これらを活用して、広告投資の最適化と効果の最大化を行いましょう。
CM効果測定の基本を理解する
テレビCMへの投資効果を最大化するためには、効果測定の基本を正しく理解することが不可欠です。これまではテレビCMの効果測定が難しいと考えられていましたが、現在ではテクノロジーの進化により、様々な測定方法が確立されています。ここでは、CM分析の基本概念から、デジタル広告との違い、そして効果測定の重要性について解説します。
CM分析とは何か?
CM分析は、テレビCMの放送によって生じた視聴者の認知、態度、行動の変化を測定・評価するプロセスです。従来、テレビCMの効果は把握しにくいという課題がありましたが、最近は様々な手法を用いて効果を可視化しやすくなりました。
CM効果測定は主に以下の3種類に分類されます。
・売上・問い合わせデータによる測定: 企業が独自に取得できるデータから効果を測定する方法です。コスト負担が小さく、売上や問い合わせ数の向上が目的の場合に適しています。
・リサーチによる測定: ブランド認知やイメージ向上目的の場合に効果的です。CM放映前後で調査を行い、ブランド認知だけでなく、誰に認知され、どのように評価され、どんな行動につながったかを測定します。コスト負担は中程度です。
・分析ツールによる測定: 継続的にCMを実施し、より高い効果を模索する企業向けです。コストはかかるものの、詳細な分析が可能になります。
CM分析の方法は、どんどん進化していて最新の技術を活用することで、従来は測定が難しかった「波及効果」まで可視化できるようになってきています。例えば、MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)と呼ばれる手法では、テレビCMが他の広告施策に与える影響を定量化することが可能です。
テレビCMとデジタル広告の違い
テレビCMとデジタル広告では、効果測定の方法や特性に大きな違いがあります。テレビCMの効果測定では主に視聴率(GRP)や注視率(GAP)といった指標が用いられるのに対し、デジタル広告ではクリック数やコンバージョン率など、より具体的な行動データを測定します。
デジタル広告の大きな利点は効果測定の容易さにあります。どれだけ見られたか、クリックされたかというデータがリアルタイムで取得でき、すぐに分析できます。一方、テレビCMは従来そこまで細かい測定が難しかったものの、現在では様々な手法で効果を可視化できるようになっています。
テレビCMとデジタル広告は、特性が異なるため、多くの企業は両方を組み合わせたクロスメディア戦略を展開しています。さらに、近年ではテレビCMもデジタル広告と同じ物差しで効果を測る「テレビコンバージョンインデックス(TCVI)」のような新指標も開発されています。
効果測定の目的と意義
CM効果測定を行う目的は、単に広告の成果を確認するだけではありません。意義は以下の三つにあります。
第一に、費用対効果の可視化です。テレビCMは一般的に高額な投資を伴うため、その投資がどれだけのリターンをもたらしているかを正確に把握することが重要です。デジタル技術の進化により、Webサイトへのアクセス数、問い合わせ数、購買数といった具体的な数値を測定できるようになり、費用対効果の可視化が進んでいます。
第二に、広告効果の最適化です。CMが消費者の認知、興味、購買意欲に与える影響をデータに基づいて把握し、クリエイティブや放映戦略を改善することで、広告効果を最大化できます。また、どの層にCMが届いているのか、どの層が反応しているのかを分析することで、ターゲットとする顧客層への訴求力を高めることができます。
第三に、PDCAサイクルの実現です。CM放映後の効果測定結果を基に、計画→実行→評価→改善のサイクルを回すことで、継続的な広告効果の向上を図ることができます。特にブランド認知やイメージアップを目的とする場合、リサーチによる効果測定がPDCAを回すための重要なツールとなります。
測定すべき主要な指標とは
効果的なCM分析を実施するには、適切な指標の選定が不可欠です。どの指標を測定するかによって、CM効果の見え方が大きく変わります。ここでは、CM効果を確実に把握するための主要な測定指標を解説します。
視聴率とGRPの違い
CM効果測定の基本となるのが視聴率とGRP(Gross Rating Point:延べ視聴率)です。この二つは似ているようで異なる指標です。
視聴率は「テレビ番組・CMがどのくらい視聴されているか」を示す指標で、「世帯視聴率」と「個人視聴率」に分けられます。一方、GRPは一定期間に放送されたCMの視聴率を合計した数値で、CM配信の効果を測る際に重要な指標となっています。
GRPの計算式は【個人全体(+タイムシフト)視聴率×CMの本数】です。例えば、視聴率10%の番組に10本、5%の番組に5本、3%の番組に2本のCMを流した場合、GRPは131となります。GRPが500前後で「CMが認知される」とされていますが、放送エリアや時期、CM自体のインパクトなどによっても効果は変わります。
ブランド認知度の変化
CM効果測定において、ブランド認知度の変化は重要な指標です。ブランド認知度は「消費者がブランドを知っているかどうか」を示す指標で、CM放映前後の変化を測定することでCMの効果を確認できます。
測定方法としては、アンケート調査が一般的です。CM放映前後に調査を実施し、ブランド認知度、好意度、購入意向などの変化を比較します。このような調査は「ブランドリフト調査」とも呼ばれ、心理的な変化を捉えるのに役立ちます。
例えば、ある化粧品ブランドのCM放映後、商品認知率の向上とブランドイメージのポジティブな変化が確認されましたが、売上には大きな変化が見られなかったケースがあります。これは、認知度向上には成功したものの、購買意欲の創出には至らなかったことを示しています。
ウェブトラフィックと検索数
デジタル時代において、CM放映後のウェブトラフィックと検索数の変化は重要な指標です。CM放映直後にサイト訪問数や特定キーワードの検索数が急増した場合、CM視聴者の関心が行動に結びついたと判断できます。
実例として、スーパーボウルCM放映後、関連サイトのトラフィックが大幅に増加した事例があります。ウェブサイトでは通常より1,900%近く、アプリストアでは600%近くトラフィックが増加していることも。これはテレビCMがウェブサイト訪問に与える影響の大きさを示しています。
また、テレビCM出稿データとウェブサイトアクセスデータを突合して分析するツールも登場しており、CM出稿後のウェブサイトセッション増加を可視化できるようになっています。
売上・購買データの活用
CM効果を最終的に評価するのは、売上や購買データの変化です。CM放映後の問い合わせ数、販売数、売上高などを分析することで、CMが実際の購買行動にどう影響したかを把握できます。
一般的に、効果測定は「接触効果」「心理効果」「売上効果」の3段階で分析します。接触効果(リーチ数など)と心理効果(認知度など)を経て、最終的には売上効果(売上高増加など)が重要です。
特に注目すべき指標はROI(投資収益率)で、広告費用に対してどれだけの売上が得られたかを表します。また、MMM(マーケティングミックスモデリング)という手法を用いると、CM施策が購買行動にどう影響し、売上につながるかを階層型モデルで分析できます。
SNSでの反応とエンゲージメント
CM分析では、SNSでの反応とエンゲージメントも重要な指標です。特にX(旧Twitter)はリアルタイム性が高く、CM放映直後の素直な反応を把握するのに適しています。
CM放映中に商品独自のハッシュタグを登場させることで、関連する投稿を促し、それらの検索数や投稿数の変化を測定することができます。さらに、ポジティブ/ネガティブの反応をリアルタイムに分析し、インターネット広告のクリエイティブに反映させることも可能です。
SNS分析ツールを活用すれば、CM視聴後の消費者の行動や投稿がどのように拡散され、CM未視聴者にどう影響したかも分析できます。
以上の指標を適切に組み合わせて分析することで、CM効果を多角的に測定し、次回の広告戦略の改善に活かすことができます。
KnownsではCM分析が簡単にできる
Knownsでは、日々アプリのユーザーに対してアンケートを行っており、月間5,000万件のブランドデータを収集しています。
機能のひとつに「CM分析」もあり、様々な企業のCMを閲覧できたり、CMを見た前後のブランドイメージのデータが溜まっています。このデータを活用することで、早く効率的にCM分析ができるようになります。
もしご興味がある方は、Knownsで実際にどんなことができるかを資料でご確認ください。
CM効果測定のステップバイステップ
テレビCMの効果を正確に測定するには、計画的なアプローチと適切な手順が必要です。CM分析を行う際は、単なる視聴率の確認にとどまらず、体系的なプロセスを踏むことで、投資対効果を最大化できます。ここでは、CM効果測定を成功させるための5つのステップを詳しく解説します。
目標設定とKPIの明確化
CM効果測定を始める前に、まず明確な目標とKPI(重要業績評価指標)を設定する必要があります。KPIはマーケティング施策の適切さを評価し、改善するための定量的な指標です。
効果的なKPIとして以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 適切なタイミングで計測が可能なこと(計測可能性)
- 成果と強く関係していること(成果との関連性)
- 施策と強く関係していること(施策との関連性)
テレビCMのKPI設定では、商品の購入数、来店者数、ブランド認知度、検索数増加など、CMの目的に合わせた指標を選定します。一般的に400GRPという数字がCM認知度向上の一つの目安とされています。
ベースラインの取得
効果測定の基礎となるのが「ベースライン」の取得です。ベースラインとは、テレビCM配信前の通常状態のデータを指します。これはCM配信後の効果を比較するための基準点となります。テレビCM配信前には、次のようなデータ収集が重要です。
- Webサイトの訪問者数とコンバージョン率
- 指名検索数
- 商品の売上データ
- SNSでの言及・エンゲージメント
これらのデータはできるだけフラットなものを収集しましょう。例えば、Webサイトでコンテンツマーケティングを実施している場合は、Googleのアップデートによるアクセス増減があるため、数ヶ月の平均PV・CVを算出するなど工夫が必要です。
データ収集とツールの準備
CM配信後のデータ収集には、効果測定ツールが大きな助けとなります。広告効果測定ツールは「様々な媒体における広告を一元管理し、広告の成果や費用対効果を測定・可視化するツール」です。テレビCM効果測定では以下のようなデータを収集します。
- Webサイト・SNSのアクセス解析
- 指名検索の増加数
- 3rd partyデータの活用
効果測定ツールを選ぶ際は、計測可能な範囲、ユーザー行動分析のしやすさ、間接効果の分析支援機能の有無などを検討することが重要です。近年では「テレシーアナリティクス」などテレビCMの効果をWebサイトやアプリでのユーザー行動を基に可視化するツールも登場しています。
分析とレポート作成
収集したデータを基に、CM効果の分析とレポート作成を行います。分析の際は、次のような指標を統合的に分析することで、テレビCMの効果を多角的に把握できます。
- GRP(延べ視聴率):CMのリーチと影響力
- リーチ数:CMがどれだけの人に届いたか
- ブランドリフトの変化:認知度、好意度、購買意向の変化
- Webサイトへのアクセス数:CM放映前後のサイト訪問者数の変化
- 購買数:CMによる商品購入の増加数
分析ではマーケティング・ミックス・モデリング(MMM)を活用することで、テレビCMが他の広告施策や外部要因と比較してどれだけの効果があったかを定量化できます。
改善施策の実行
最後に、分析結果に基づいて改善施策を実行します。効果測定の結果に合わせてCMの出稿量や出稿時間帯・番組帯を変更し、より効率的なCM展開を図りましょう。
たとえば、特定の時間帯や曜日に反応が良かった場合は、その時間帯にさらにCMを集中させることが考えられます。また、特定のキーワードで検索が増えた場合は、そのキーワードを強調した広告を作るなど、戦略を練り直していきます。
このようにデータに基づくPDCAサイクルを継続的に回すことで、CM効果の最大化を実現できます。最近のCM配信は個人視聴率の普及により、詳細なターゲティングが可能となり、狙ったターゲット層にアプローチできるよう技術が向上しています。
効果測定に活用できるツール
CM効果を正確に測定するには、適切なツールと技術の活用が欠かせません。テレビCM分析は膨大なデータを扱うため、専門的なツールを使いこなすことで、より精度の高い分析が可能になります。ここでは、CM効果測定に役立つ主要なツールと技術を紹介します。
Google Analyticsの活用
Google Analyticsは、CM放映後のウェブサイトへの影響を測定する強力なツールです。広告からの流入を正確に測定するには、URLパラメータの設定が重要です。広告のURLに「?」以降のパラメータを付加することで、どの広告からの流入かを判別できるようになります。
また、Google広告と連携させることで、コンバージョン率や新規ユーザーとリピーター別の流入キーワードなど、より詳細なデータが得られます。これにより、CM放映後のウェブトラフィックの変化を正確に把握し、CM効果を数値化できます。
Nielsenやスイッチメディアの視聴率データ
ニールセンのテレビ視聴率データは、CM分析の基礎となる重要な指標を提供します。視聴率は「テレビ番組やCMを見た人口の割合」を示し、様々なバリエーションがあります。例えば、ライブ視聴のみの視聴率、ライブ+当日再生、ライブ+3日間(C3)、ライブ+7日間(C7)などがあります。
さらに、ニールセンとビデオリサーチが共同で提供する「トータル広告視聴率(Total Ad Ratings)」は、テレビとデジタルデバイス(PC、タブレット、スマートフォン)にまたがる広告キャンペーンの非重複の視聴者数、リーチ、フリークエンシーを測定します。これにより、クロスプラットフォームの広告効果を包括的に理解できます。
ソーシャルツールの選び方
ソーシャルリスニングツールは、SNS上のCMに関する反応をリアルタイムで分析するのに役立ちます。特にX(旧Twitter)は、CMに対するリアルタイムな反応を把握するのに適しています。
ツール選定の際は以下の点に注目しましょう:
- 分析したいSNSメディアへの対応状況
- 分析機能の充実度
- リスク対応機能の有無
- データフィルタリング機能の精度
優れたソーシャルリスニングツールは、CMに関連する投稿を抽出し、ポジティブ/ネガティブの評価やユーザー属性まで分析できます。これにより、CMがターゲット層に届いているかを確認できます。
MMM(マーケティングミックスモデリング)とは
MMMは、様々なマーケティング施策の効果を数値データをもとに可視化する統計分析手法です。テレビCMやデジタル広告、SNSなどの施策が売上や広告のクリック数などに与える影響を定量化します。
MMMの特徴は、オンライン・オフライン広告を統合的に分析できる点です。テレビCMなどのオフライン広告の効果を数値化し、他の施策との関係性も分析できます。例えば「雑誌広告がWeb広告の効果をアシストしていた」といった施策同士の相性も把握できます。
最近では、消費者調査MMMという手法も登場し、テレビCMが売り上げに与える効果を「テレビCMの効果は年間92億7800万円」といった具体的な数値で推定できるようになっています。
このようなツールと技術を組み合わせることで、CM効果測定の精度と効率が大幅に向上します。
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Knownsでは、日々アプリのユーザーに対してアンケートを行っており、月間5,000万件のブランドデータを収集しています。
Knownsでは「CM分析」もあり、様々な企業のCMを見れたり、CMを見た前後のブランドイメージのデータが溜まっています。このデータを活用することで、早く効率的にCM分析ができるようになります。
もしご興味がある方は、Knownsで実際にどんなことができるかを資料でご確認ください。
まとめ
この記事では、テレビCM分析の基本から簡単に分析ができる方法まで幅広く解説してきました。
適切な効果測定なしでは、CM市場での投資対効果を最大化することは不可能です。そのため、視聴率やGRP、ブランド認知度、ウェブトラフィック、売上データなど複数の指標を組み合わせた分析アプローチが不可欠です。
効果測定のステップをしっかり実行することで、CMを改善して投資対効果の高いマーケティング施策にできます。
テレビCM分析は、マーケティング戦略全体を最適化するための重要な取り組みです。この記事で紹介した手法やツールを活用し、データに基づいた意思決定を行うことで、広告投資の効果を最大限に引き出しましょう。
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