使用実態調査:ビジネス成功の鍵となる消費者理解の方法


製品やサービスを提供する企業にとって、お客様がどのように製品を使っているかを知ることは何よりも大切です。この「どう使われているか」を体系的に調べる方法が「使用実態調査」です。この記事では、マーケティング担当者や商品企画者、経営者の皆様に向けて、使用実態調査の基本から実践的な活用方法までをわかりやすく解説します。

使用実態調査は、ユーザーの使い方を詳しく調べる方法

使用実態調査(Usage Survey)は、消費者が製品やサービスをどのように、どんな場面で、どれくらいの頻度で使っているかを詳しく調べる調査方法です。たとえば、あるシャンプーブランドが「20代女性は朝と夜どちらでシャンプーすることが多いのか」「週に何回使うのか」「どんな効果に満足しているのか」などを調べるのが使用実態調査です。

使用実態調査が企業にもたらす4つの価値

製品開発の道しるべ

実際の使用状況を知ることで、お客様が本当に必要としている機能がわかります。例えば、炊飯器メーカーが「実は多くのユーザーが炊飯器で煮込み料理も作っている」という事実を発見したら、その機能を強化した新製品を開発できるでしょう。

マーケティング戦略の最適化

顧客の使用文脈を理解することで、共感を呼ぶメッセージングが可能になります。例えば、あるスマホアプリの使用実態調査で「通勤電車の中で使うユーザーが多い」ということがわかれば、「スキマ時間を有効活用」といったメッセージでの広告展開が効果的かもしれません。

顧客満足度向上のヒント

「この機能が使いにくい」「こんな場面で困っている」という声を集めれば、迅速に改善することができます。例えば、掃除機メーカーが「隙間ノズルが使いづらい」という不満を早期に発見し改良すれば、顧客の信頼を高められるでしょう。

競合との差別化

競合製品と比較した自社製品の強みと弱みを客観的に把握できます。これにより、市場での独自ポジションを確立するための戦略が立てられます。

日本マーケティング協会の調査では、使用実態調査を定期的に実施している企業は、そうでない企業に比べて顧客満足度が平均20%高いという結果が出ています。つまり、お客様の声に耳を傾ける企業は、より愛される企業になる可能性が高いのです。

効果的な使用実態調査の設計と手順

使用実態調査を効果的に行うためには、しっかりとした計画と手順が必要です。ここでは、調査の設計から実施までのステップを、実例を交えながら解説します。

調査目的を明確にする

まず最初に、「何を知りたいのか」を明確にします。漠然と「ユーザーの声を聞きたい」では、得られる情報も漠然としたものになってしまいます。例えば、「新発売の電気ケトルの使用頻度と満足度を把握し、次期モデルの改良点を3つ以上特定する」といった具体的な目標を設定しましょう。

目的が明確になると、必要な質問項目や対象者も自然と見えてきます。

調査対象を適切に選ぶ

次に、誰に調査するかを決めます。製品やサービスの利用者全体を代表するようなバランスの取れたサンプルを選ぶことが重要です。例えば、スポーツドリンクの調査なら、「10代〜60代までの男女で、月に1回以上スポーツドリンクを飲む人」といった条件を設定します。

サンプル数も重要です。一般的には300〜500人程度が目安ですが、製品の特性や予算によって調整します。統計的に信頼できる結果を得るには、ある程度の人数が必要なのです。

使用実態調査で使われる主な調査手法

オンラインアンケート

短時間で多くの回答を集められます。例えば、新しいスマートフォンアプリの使用実態を調べるなら、アプリ内でアンケートを表示する方法が効率的です。コストパフォーマンスが高く、統計的分析にも適しています。

対面インタビュー

深い洞察を得られる方法です。例えば、高級炊飯器の使い方を調査するなら、実際にユーザーの家庭を訪問し、どのように使っているかを詳しく聞き取ることで、アンケートでは気づかなかった発見があるかもしれません。

観察調査

実際の使用状況を直接観察する方法です。ウェブサイトのユーザビリティ調査では、ユーザーの画面操作を観察することで、どこで迷っているか、どのように情報を探しているかといった具体的な行動が把握できます。

日記式調査

一定期間の使用状況を記録してもらう方法です。例えば、スキンケア製品の使用感を調べるため、2週間の使用日記をつけてもらうことで、時間経過による効果や使用感の変化がわかります。

ユーザーテスト

実際に製品を使ってもらい、その様子を観察する方法です。新しい家電製品の使いやすさを評価する際に、実際に操作してもらいながら感想を聞くことで、取扱説明書のわかりにくさや操作パネルの問題点などが明らかになります。

複数の方法を組み合わせると、より立体的な理解ができます。例えば、まずオンラインアンケートで全体傾向を把握し、その後、特徴的な回答をした人に対面インタビューを行うという方法が効果的です。

質問項目を設計する

質問の内容と順序は、調査の成否を左右する重要な要素です。定量的質問(「週に何回使いますか?」など数値で答えるもの)と定性的質問(「どんな点が気に入っていますか?」など自由に回答するもの)をバランスよく配置しましょう。

質問は中立的な表現を心がけ、誘導的な聞き方は避けます。例えば「この素晴らしい機能についてどう思いますか?」ではなく「この機能についてのご意見をお聞かせください」と聞くべきです。

また、質問の順序も重要です。一般的な質問から具体的な質問へ、簡単な質問から複雑な質問へと進めると、回答者の負担が少なくなります。

調査を実施し、データを収集する

調査を開始する前に、少人数でプレテストを行い、質問の分かりやすさや回答にかかる時間を確認します。問題があれば修正してから本調査に進みましょう。

回答率を上げるためには、適切なインセンティブを用意するのも効果的です。例えば、アンケート回答者に抽選でギフトカードをプレゼントするなどの工夫ができます。ただし、過度なインセンティブは回答の質に影響する可能性もあるので注意が必要です。

データを分析し、洞察を導き出す

収集したデータは、適切な方法で分析します。定量データは統計的手法を用いて傾向を把握し、定性データはテキストマイニングなどを活用してキーワードや感情を抽出します。

例えば、スマートウォッチの使用実態調査で「30代男性は健康管理機能を重視し、20代女性はデザイン性を重視している」といった傾向が見えてくるかもしれません。こうした発見は、製品開発やマーケティングの方向性を決める貴重な指針となります。

アクションプランを立て実行

調査は、実施をして終わりになりがちですが、重要なのは、調査結果をもとに具体的なアクションプランを立てることです。「こういう課題があるから、こう改善しよう」という流れを明確にしましょう。

例えば、「多くのユーザーがアプリの起動速度に不満を持っているため、次回のアップデートでは処理速度の改善を優先する」といった具体的な対応策を決めます。

Knownsなら、使用実態調査を手軽に実施

目的を明確にし、アクションプランを立て実行するまでには工数も時間もかかります。調査を行うだけで数ヶ月かかることもざらにあります。

Knownsでは、日々アプリのユーザーに対してアンケートを行っており、月間5,000万件のブランドデータを収集しています。

それらを活用することで、早くお手軽に使用実態調査ができるようになります。最短3日でレポートを納品できるのです。

もしご興味がある方は、Knownsで実際にどんなことができるかを資料でご確認ください。

消費者行動分析:使用実態調査データの活用

使用実態調査で集めたデータは、適切に活用することで価値を生み出します。ここでは、データから意味のある洞察を引き出し、ビジネスに活かす方法を具体例とともに解説します。

セグメンテーション分析で顧客を理解する

顧客を属性や行動パターンでグループ分けすることで、それぞれのグループの特徴や傾向がわかります。これをセグメンテーション分析と呼びます。簡単に言えば、「お客様を似た特徴ごとにグループ分けして、それぞれの特徴を深く理解する」ということです。

例えば、コーヒーショップのアプリを分析したところ、
・「朝の通勤前に利用する忙しいビジネスパーソン」
・「午後にゆっくり作業する学生やフリーランス」
・「週末に友人と来店する社交的なグループ」という3つの主要セグメントが見つかったとします。各セグメントで注文内容や滞在時間が異なるため、それぞれに合わせたサービス改善や情報発信ができるようになります。

朝の忙しい時間帯には注文を事前に準備できる機能を強化したり、午後の長時間利用者には電源完備の快適な座席を用意したりといった具体的な施策につながるのです。

使用実態調査から得られる5つの重要なインサイト

潜在ニーズの発見

明示的に表現されていない顧客の潜在的なニーズを見つけることができます。例えば、ベビーカーの調査で「片手で操作したい」という直接的な要望はなくても、「買い物中に困る」という声が多ければ、「片手操作が可能な設計」という潜在ニーズが見えてきます。

使用頻度と継続率の要因

どのような特徴を持ったユーザーが製品を頻繁に使い、長く続けているかがわかります。例えば、フィットネスアプリの調査で「友達と一緒に目標設定している人ほど継続率が高い」という発見があれば、ソーシャル機能の強化につながります。

購買決定要因

購入を決める際に重視するポイントが明らかになります。例えば、シャンプーの購入決定要因が「香り」「価格」「ボトルデザイン」のどれなのかによって、マーケティング戦略が変わってきます。

不満点と改善機会

現在の製品やサービスのどこに不満を感じているかがわかります。例えば、スマートスピーカーの調査で「聞き取り精度に不満がある」という声が多ければ、音声認識技術の改善が優先課題となります。

ブランド認知と連想

自社ブランドに対してどのようなイメージを持っているかが明らかになります。例えば、ある飲料ブランドが「若者向け」と思われているのに、実際には中高年層にも人気があるということがわかれば、ターゲット層を広げたマーケティングが可能になります。

これらのインサイトを組み合わせることで、製品開発、マーケティング、顧客サービスなど様々な領域での意思決定がより的確になります。

ペルソナ作成で顧客像を具体化する

調査データをもとに典型的なユーザー像(ペルソナ)を作成すると、製品開発やマーケティングの方向性が明確になります。ペルソナは、架空の人物像ですが、実際のデータに基づいているため、具体的な意思決定を手助けになります。

例えば、健康管理アプリの主要ユーザーとして「健康意識が高く、忙しい40代の会社員・田中さん」というペルソナを作成します。田中さんの典型的な一日、抱える課題、アプリに求めるものなどを詳細に描写することで、「田中さんのような人に役立つ機能は何か」を具体的に考えられるようになります。

ペルソナを社内で共有することで、「このペルソナにとってこの機能は便利だろうか?」といった具体的な議論ができるようになり、製品開発の方向性がブレにくくなるのです。

カスタマージャーニーで体験を可視化

顧客が製品やサービスと出会ってから購入、使用、再購入までの一連の流れを可視化することで、各段階での課題や改善点が見えてきます。これをカスタマージャーニーと呼びます。

例えば、家電製品のカスタマージャーニーを分析したところ、「購入後の初期設定段階でつまずくユーザーが多い」ということがわかったとします。これを受けて、わかりやすい初期設定ガイドや動画マニュアルを作成するというアイデアが生まれます。

また、アパレルECサイトの分析で「商品詳細ページからカートに入れる段階で離脱が多い」という発見があれば、サイズ表示の改善やレビュー機能の強化といった対策を検討できます。

顧客の体験を一連の流れとして捉えることで、「どこで困っているのか」「どこでドロップアウトしているのか」という重要なポイントが明確になるのです。

使用実態調査×顧客満足度調査で相乗効果

顧客満足度調査と使用実態調査を組み合わせることで、より深いユーザー理解が可能になります。この二つの調査を連携させることで生まれる相乗効果と、その活用方法について説明します。

使用頻度と満足度の関係を紐解く

製品をよく使うユーザーほど満足度が高いのか、それとも逆の関係があるのかを分析することで、興味深い発見があります。

例えば、あるフィットネスアプリの調査で「週3回以上使用するヘビーユーザーの満足度は平均4.5点/5点と非常に高い一方、月に1〜2回程度の利用者の満足度は3.2点/5点と低め」という結果が出たとします。この場合、「利用頻度を高めることが満足度向上につながる」と仮説を立て、初心者ユーザーの利用頻度を上げるための施策(例:初心者向けの短時間プログラムの充実、週間チャレンジの導入など)を検討できます。

逆に、「使用頻度が高いほど不満も増える」という製品カテゴリーもあります。例えば、ある家事代行サービスでは「月4回以上利用するユーザーの方が、月1回程度の利用者よりも細かい点に不満を持つ傾向がある」ということがわかるかもしれません。この場合は、ヘビーユーザー向けの特別なケアプログラムを検討する必要があるでしょう。

使用頻度と満足度の関係を理解することで、ユーザータイプに応じた適切な対応が可能になります。

満足度調査と使用実態調査の連携による4つのメリット

問題の根本原因の特定:満足度調査で「使いにくい」という回答があっても、具体的にどの場面で、どのように使いにくいのかはわかりません。使用実態調査と連携することで、「通勤電車内でスマホを片手で操作する際に使いにくい」といった具体的な問題状況が特定できます。

優先改善項目の明確化:限られたリソースの中で、どの問題から解決すべきかの優先順位付けができます。例えば、「画面が見にくい」という不満が多くても、使用実態調査で「屋外での使用が少ない」ことがわかれば、屋内での視認性改善を優先できます。

顧客セグメント別の対応策策定:満足度と使用パターンの両面からユーザーを分類することで、セグメント別の細やかな対応が可能になります。例えば「満足度が高く使用頻度も高いロイヤル層」「満足度は高いが使用頻度が低い潜在成長層」など、セグメント別に異なるアプローチができます。

将来予測の精度向上:現在の使用パターンと満足度の関係から、将来のトレンドを予測できます。例えば「特定の使い方をするユーザーの満足度が急上昇している」ことがわかれば、その使い方が今後主流になる可能性を示唆しています。

二つの調査を連携させることで、「何が問題か」だけでなく「なぜ問題なのか」「誰にとって問題なのか」という深い理解が得られ、より効果的な対策を打つことができます。

推奨意向(NPS)と使用実態の関連付け

NPSとは Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)の略で、「この製品・サービスを友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?(0〜10点)」という質問への回答をもとに算出される指標です。簡単に言えば、「どれだけのお客様があなたの製品を人に勧めたいと思っているか」を測る指標です。

この推奨意向(NPS)と使用実態を関連付けて分析することで、「どのような使い方をしているユーザーが製品を人に勧めたくなるのか」という洞察が得られます。

例えば、あるクレジットカードの調査で「ポイント還元サービスを頻繁に利用しているユーザーはNPSが高い」ということがわかれば、ポイントプログラムの魅力をより強く訴求するマーケティング戦略を立てられます。

また、家電製品の調査で「付属のスマホアプリを使いこなしているユーザーはNPSが高いが、アプリを使っていないユーザーのNPSは低い」ということがわかれば、アプリの使い方ガイドを充実させる、初期設定でアプリの導入を促すといった施策が考えられます。

推奨意向の高いユーザーの特徴を理解することで、「どのような体験が口コミを生み出すのか」という重要なポイントが見えてくるのです。

使用実態調査を効果的に活用するには

使用実態調査は、ビジネスの成功に不可欠なリサーチの一つです。本記事で解説した内容を踏まえ、効果的な調査と活用を行いましょう。改めてポイントをまとめます。

成功する使用実態調査のポイント

・まず何よりも明確な目的設定:「何を知りたいのか」「どう活用するのか」を事前に明確にすることで、必要な情報を効率的に収集できます。

・適切な調査手法の選択:目的に応じて最適な手法や、複数の手法を組み合わせしましょう。

・バランスの取れた質問:定量的質問と定性的質問をバランスよく配置することで、数値的な傾向と背景にある理由の両方を把握できます。

・定期的な調査の実施:一回限りの調査ではなく、定期的に実施して変化を追跡することも大切です。消費者の行動や嗜好は常に変化しているため、継続的なモニタリングが必要になります。例えば、四半期ごとや半年ごとに定点観測を行うことで、トレンドの変化を捉えることができます。

Knownsなら調査設計から分析・示唆出しまでご支援

使用実態調査は、適切な目的の設定からアクション実行まで細かい部分に配慮しながら進めて行く必要があります。

ただ、普段の業務をこなしながら、使用実態調査を推進していくのはかなり大変です。

Knownsでは、これまで多くの時間・コストがかかっていた使用実態調査を、累計数十億のアンケートデータを保有するプラットフォームを活用し、「より手軽に・より安価に」、アンケートの実施から分析レポート・示唆出しまでご提供が可能です。

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