ユニクロのマーケティング戦略を読み解く:なぜ「嫌われないブランド」でいられるのか?
「ユニクロって、なんでこんなに“万人向け”なのにブレないんだろう?」
おそらく多くの人が、ふと思ったことがあるはず。安定した品質、手に取りやすい価格、機能性。そして世代も性別も問わず、気づけば誰もが1枚は持っている。にもかかわらず、“安っぽさ”や“妥協感”があまりないのが、ユニクロというブランドのすごさです。
今回は、そんなユニクロのマーケティングをKnowns消費者リサーチの一次調査データとともに紐解いていきます。
Knowns消費者リサーチは検索するだけ、調査設計もデータ集計も不要でブランド分析や競合比較、生活者インサイトまで即座に取得できるマーケティングツールです。
本記事で使用しているユニクロ、ZARA、H&Mに関するデータはいずれもKnowns消費者リサーチで簡単に詳細をみることができます。
まずは、ユニクロの“立ち位置”を数字で見てみる
「嫌われない」「選ばれ続ける」という印象は、果たして事実なのか?
Knownsの消費者リサーチ(n=3,000以上)をもとに、ユニクロの“現在地”をZARA、H&Mと比較してざっくり確認してみましょう。
ユニクロは認知98%にして、ネガティブわずか1.4%。これは、かなり驚異的な数値です。
ユニクロは「広く知られ(認知98.2%)・深く好かれ(強い好感35.2%)・強く欲される(強い購買意向37.7%)」の三拍子が揃っています。一方、ZARA/H&Mは悪くない水準ながら、ユニクロ比で強度はおおむね半分前後。とくに強い購買意向はユニクロ(37.7%)がZARA(20.2%)/H&M(17.6%)の約2倍と差が明確です。
「LifeWear」という思想は、なぜここまで支持されたのか?
ユニクロを語る上で避けて通れないのが、「LifeWear」というブランド哲学。
「究極の普段着」とも訳されるこの思想、正直なところ少し抽象的に聞こえませんか?
でも、Knownsのデータを見ると、その“抽象”が“共感”としてきちんと届いていることがわかります。
強い好感は「20代後半〜30代前半」がピーク
「ユニクロが好き」という声は、全年代にまんべんなく広がっていますが、特に強いのがこの層。
| 年代 | とても好き(強い好感) |
|---|---|
| 20–24歳 | 40.2% |
| 25–29歳 | 42.5% |
| 30–34歳 | 41.1% |
| 35–39歳 | 36.8% |
| 40–44歳 | 32.4% |
| 45–49歳 | 28.7% |
| 50–54歳 | 24.6% |
“20代後半〜30代前半”という層は、仕事・育児・プライベートを横断する日々を過ごしている人が多い世代。
汎用性が高く、機能的で、変に気取ってない。そんな服が生活に自然に溶け込むからこそ、この高い共感につながっているのかもしれません。
競合他社と比較してみるとユニクロは20代後半〜30代前半がピーク。対してZARAは10代〜20代前半が厚く、H&Mも10代〜20代前半が頂点。ユニクロは30代以降でも強度が落ちにくい=“生活シーンをまたいで選ばれる”傾向が見えます。
ZARA(年代別:強い好感)
| 年代 | とても好き(強い好感) |
|---|---|
| 10歳代 | 33.7% |
| 20–24歳 | 30.4% |
| 25–29歳 | 26.7% |
| 30–34歳 | 19.0% |
| 35–39歳 | 14.7% |
| 40–44歳 | 15.0% |
| 45–49歳 | 14.8% |
| 50–54歳 | 9.5% |
H&M(年代別:強い好感)
| 年代 | とても好き(強い好感) |
|---|---|
| 10歳代 | 30.8% |
| 20–24歳 | 30.7% |
| 25–29歳 | 21.3% |
| 30–34歳 | 15.5% |
| 35–39歳 | 15.4% |
| 40–44歳 | 15.0% |
| 45–49歳 | 14.8% |
| 50–54歳 | 9.5% |
「機能性」と「ちょうどいいデザイン」の両立が効いている
「LifeWear」は、ただのスローガンではありません。
たとえば有名な「ヒートテック」は、ただ暖かいだけでなく、吸湿発熱、伸縮、速乾、薄手で着膨れしないなど、機能性を重ねていく中で日常性に落とし込まれたプロダクトです。
しかも、それが“いかにも高機能!”という顔をしていないところもポイント。
Knownsの調査でも、ユニクロに対してポジティブな回答をした人の自由記述には、
- 「日常に馴染む」
- 「とりあえず行けば何かある」
- 「クセがないのに、ちゃんとしてる」
といったコメントが散見されました。
つまりユニクロは、「あなたの生活をじゃましない」「でもちゃんと役に立つ」服を提案している。
これが、“とても好き”と言わせる力になっていると考えられます。
ユニクロの「嫌い(どちらかというと+とても)」は1.4%。ZARA 2.3%/H&M 3.2%と比べても薄い。「日常に馴染む」「クセがないのに、ちゃんとしてる」という声が、数字にも表れています。
ターゲットを絞らない、ユニクロのマーケティング
多くのアパレルブランドが「20代女性」「ファミリー層」といった特定セグメントにフォーカスした戦略を取るなか、ユニクロはやや異質な存在です。
なぜなら、ユニクロはあえてターゲットを絞らないマーケティング戦略を行っているから。
これは「誰にでも合う服をつくる」という発想ではなく、「人を属性で分けるのではなく、ニーズで捉える」というアプローチです。
年代に関係なく “好き” を獲得している
実際に、私たちが実施したユニクロに関する消費者調査(Knownsリサーチ)では、全年代を通じて高い「好感度」と「購買意向」が見られました。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 認知(知っている) | 98.2% |
| 好感(とても好き+どちらかというと好き) | 79.3% |
| 強い好感(とても好き) | 35.2% |
| 購買意向(とても+したい) | 93.7% |
| 強い購買意向(とても購入・利用したい) | 37.7% |
とくに注目したいのは「とても好き」「とても購入したい」という強い支持の割合。
この数字は、ZARAやGUなど他ブランドと比較しても高い水準で、ユニクロが“なんとなく選ばれる”ブランドではなく、“信頼されて選ばれる”ブランドになっていることを物語っています。
属性ではなく、状況や用途で設計された商品群
ユニクロのアプローチの特徴は、年齢や性別といった「静的な属性」ではなく、「人がそのとき必要としている機能やシーン」に応じた商品設計をしていること。
- 仕事の日にはシャツや感動パンツ
- 冬の朝にはヒートテック
- 真夏の電車ではエアリズム
- おうち時間には部屋着やルームソックス
これらがどの年代にも当てはまり得るというのがポイントです。
実際、ユニクロに対して「とても好き」と回答した割合は20代後半〜30代前半で4割を超えており、30代後半〜40代も3割以上が強い好感を持っています。
つまり、「誰でも着られる服」ではなく、「誰でも“自分ごと”として選べる服」になっているのが、ユニクロの強みです。
競合は“女性寄り”に強い
ZARAの強い好感は女性21.2%/男性13.7%、H&Mは女性17.9%/男性13.2%。女性側に厚みが出やすい一方、ユニクロは年代を跨いで好感・意向が高水準。属性でなく“用途・機能”を設計軸にした結果、選ばれ方の“広がり”が違って見えます。
| ブランド×性別 | 強い好感 | 好感(計) |
|---|---|---|
| ZARA|女性 | 21.2% | 55.5% |
| ZARA|男性 | 13.7% | 44.9% |
| H&M|女性 | 17.9% | 53.8% |
| H&M|男性 | 13.2% | 46.5% |
STP戦略に当てはめるとどうなる?
マーケティングフレームワークの「STP」に当てはめると、ユニクロの立ち位置がより明確になります。
- S(セグメンテーション):年齢・性別ではなく、「用途」や「機能性」のニーズ別に捉える
- T(ターゲティング):特定の誰か、ではなく「服に実用性を求めるすべての人」
- P(ポジショニング):高品質・機能性・適正価格という“普段着のベンチマーク”としての立場
とくにZARAやH&Mのような「トレンド志向」ブランドと比べて、ユニクロは“服を選びたくない人にも選ばれる”という強みを持っています。
なぜ、ここまで好かれるのか?
「とても好き」「とても購入したい」といった強い支持がここまで高いブランドは、アパレル業界ではそう多くありません。
裏を返せば、ユニクロはただのファストファッションではなく、ライフインフラとしての服を目指す存在になっているとも言えます。
商品開発・価格設計・販促・店舗体験など、あらゆるタッチポイントで「これでいい」ではなく「これがいい」と思わせる作り込みがある。それがマーケティング戦略としてしっかり機能しているというわけです。
この記事で参照したデータについて
今回ご紹介したユニクロに関するデータは、Knowns(ノウンズ)という消費者リサーチSaaSを使って取得したものです。
Knownsでは、全国のパネルユーザーに対し、ブランド認知・好感・利用意向などを軸に自由に調査を設計できます。
競合比較やセグメント別の傾向分析も可能なので、「戦略仮説を定量で検証したい」ときには非常に重宝します。
マーケティング戦略やコンセプト設計において、こうした定量的な“生活者の声”があると意思決定の強度が変わってきます。
気になる方は、ぜひKnownsの資料もご覧ください。
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