ブランド認知度調査とは?手法・設問例・活用方法を詳しく解説


ブランド認知度調査は、企業のマーケティング戦略において欠かせない重要な調査です。しかし、多くの企業が「なんとなく必要そう」という理由で実施し、結果を十分に活用できていないのが現状です。

本記事では、ブランド認知度調査の基本的な概念から具体的な実施方法、結果の活用方法まで、実践的な内容を詳しく解説します。調査を検討している企業の担当者の方にとって、具体的なアクションにつながる情報をお届けします。


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ブランド認知度調査とは

定義と目的

ブランド認知度調査とは、消費者が特定のブランドをどの程度知っているかを定量的に測定する調査です。

単純に「知っている・知らない」を調べるだけでなく、どのような経路で知ったのか、どの程度詳しく知っているのかまで深掘りします。

この調査の主な目的は3つあります。

  • 自社ブランドの市場での立ち位置を客観的に把握すること
  • 競合他社との比較による相対的な強み・弱みの発見
  • マーケティング施策の効果測定と改善点の特定

これらの一部だけの実行ではブランド認知度調査をしたとはいえません。労力と手間がそれぞれかかりますが、この3つはおさえておきましょう。

ブランドイメージ調査との違い

ブランド認知度調査とブランドイメージ調査は、しばしば混同されがちですが、調査の目的と内容が大きく異なります。

認知度調査は「知っているかどうか」という事実を測定します。一方、イメージ調査は「どのような印象を持っているか」という感情や評価を調べるものです。

両者は密接に関連しており、多くの場合、同時に実施されます。認知度が高くても良いイメージを持たれていなければ、購買行動には結びつかないからです。

ブランドイメージ調査について深堀している記事も是非参考にしてください。


参考:ブランド調査の方法を7つ解説|ポイントやタイミングも丁寧に説明


実施すべき企業の条件・フェーズ

ブランド認知度調査は、すべての企業に必要というわけではありません。実施すべき企業には、いくつかの条件があります。

  • BtoC(企業対消費者)ビジネスを展開している企業

消費者向けの商品やサービスを提供している場合、認知度は売上に直結する重要な要素となります。

  • 競合他社が複数存在する市場で事業を行っている企業

差別化が困難な業界では、認知度が競争優位の源泉となることが多いです。

  • 企業のフェーズ

創業から3年以上経過し、ある程度の市場での活動実績がある段階が適しています。創業直後では比較対象となるデータが不足しており、調査結果の解釈が困難になる可能性があります。

自社が当てはまるかどうかまず確認してみましょう。

ブランド認知度調査を実施すべきタイミング

新商品発売・リニューアル時

新商品の発売やブランドリニューアルは、認知度調査を実施する絶好のタイミングです。発売前の事前調査により、市場での認知度の現状を把握できます。

例えば、食品メーカーが新しいスナック菓子を発売する場合を考えてみましょう。事前調査で類似商品の認知度や購買行動を調べることで、効果的なマーケティング戦略を立案できます。発売後の事後調査では、プロモーション活動の効果を定量的に測定し、次回の商品開発に活かすことができます。

リニューアル時の調査では、変更前後での認知度の変化を追跡することが重要です。パッケージデザインの変更やブランド名の変更が、消費者の認知にどのような影響を与えたかを客観的に評価できます。

売上伸び悩み時

売上が思うように伸びない時期は、その原因を探るために認知度調査が有効です。売上低迷の原因は様々ですが、認知度不足が要因の一つである可能性があります。

売上伸び悩みの背景には、いくつかのパターンがあります。認知度自体が低い場合、商品の存在を知らない消費者が多いことが原因です。認知度は高いが購買に結びついていない場合は、商品の魅力や価値が十分に伝わっていない可能性があります。

調査結果により、認知度向上が必要なのか、それとも認知から購買への転換率改善が必要なのかが明確になります。これにより、限られたマーケティング予算を最も効果的な施策に集中投下できます。

ブランディング施策策定時

中長期的なブランディング戦略を策定する際には、現状の認知度を正確に把握することが不可欠です。戦略の出発点となる現状分析において、認知度調査は重要な役割を果たします。

ブランディング施策の効果を測定するためには、施策実施前の認知度をベースラインとして設定する必要があります。現時点での認知度を把握することで、認知度30%の状態から始まり、1年後に50%を目指すといったような具体的な目標設定が可能になります。

また、ターゲット層別の認知度分析により、どの層に重点的にアプローチすべきかが明確になります。20代女性では認知度が高いが、30代男性では低いといった傾向が分かれば、施策の優先順位を決定する際の重要な判断材料となります。

ブランド認知度調査の手法と特徴

ネットリサーチ

ネットリサーチは、現在最も広く利用されている調査手法です。インターネットを通じて調査対象者にアンケートを配信し、回答を収集します。

この手法の最大のメリットは、コストの安さと実施スピードの速さです。従来の調査手法と比較して、費用を大幅に削減できます。また、調査開始から結果取得まで、最短で数日から1週間程度で完了できます。

一方で、インターネットを利用しない層(高齢者など)からの回答が得られにくいという制約があります。また、回答者の真剣度にばらつきがあり、適当に回答される可能性も考慮する必要があります。

インタビュー調査

インタビュー調査は、調査員が対象者と直接面談して詳細な情報を収集する手法です。個別インタビューとグループインタビュー(フォーカスグループ)の2つの形式があります。

この手法の強みは、回答の背景にある理由や感情を深く掘り下げられることです。「なぜそのブランドを知っているのか」「どのような場面で思い出すのか」といった定性的な情報を豊富に収集できます。

ただし、実施コストが高く、時間もかかります。また、サンプル数が限られるため、統計的な代表性に課題がある場合があります。

郵送調査

郵送調査は、調査票を郵送で配布・回収する伝統的な手法です。インターネット環境に依存しないため、幅広い年齢層からの回答を得られます。

特に高齢者層や、インターネットリテラシーが低い層への調査では有効です。また、回答者が時間をかけて慎重に回答する傾向があり、回答の質が高いという特徴があります。

しかし、実施期間が長く(通常1ヶ月以上)、コストも高めです。また、回収率の低下が近年の課題となっており、十分なサンプル数を確保するのが困難な場合があります。

調査会社委託 vs 自社実施の比較

調査の実施方法として、専門の調査会社に委託する方法と、自社で実施する方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあります。

  • 調査会社委託の場合

専門的な知識と経験に基づいた高品質な調査が期待できます。調査設計から分析まで、一貫したサポートを受けられるため、初めて調査を実施する企業には特に有効です。一方で、費用が高く、調査内容の細かな調整が困難な場合があります。

  • 自社実施の場合

コストを抑えられ、調査内容を自由に設計できます。また、調査結果を即座に社内で共有・活用できるというメリットもあります。ただし、調査設計や分析に関する専門知識が必要で、結果の信頼性を確保するのが課題となります。

状況に合わせて適切な実施方法を選択しましょう。

ブランド認知度調査の重要指標

純粋想起率

純粋想起率は、ブランド認知度を測る最も重要な指標の一つです。これは、特定の商品カテゴリーについて「思い浮かぶブランドを教えてください」と質問した際に、自社ブランドが挙げられる割合を示します。

純粋想起率が高いブランドは、消費者が商品を購入する際に最初に検討される可能性が高くなります。つまり、競合他社よりも有利な立場に立てるということです。


参考:純粋想起とは?測定方法から向上施策まで完全解説


助成想起率

助成想起率は、ブランド名を提示した上で「このブランドを知っていますか?」と質問した際の認知率です。純粋想起率よりも高い数値になるのが一般的です。

この指標は、ブランドの潜在的な認知度を測定します。助成想起率が高いということは、適切なきっかけがあれば消費者がそのブランドを思い出せる状態にあることを意味します。

純粋想起率と助成想起率の差が大きい場合、ブランドは知られているものの、消費者の心の中での優先順位が低い可能性があります。この場合、ブランドの印象を強化する施策が必要になります。

認知経路・チャネル分析

消費者がどのような経路でブランドを知ったかを分析することも重要です。テレビCM、インターネット広告、口コミ、店頭など、様々な接触ポイントがあります。

認知経路の分析により、最も効果的なマーケティングチャネルを特定できます。例えば、若年層はSNSやインターネット広告経由での認知が多く、中高年層はテレビCMや新聞広告経由が多いといった傾向が見えてきます。

この情報を活用することで、ターゲット層に最も効率的にリーチできるメディアミックスを構築できます。限られた広告予算を最大限に活用するための重要な判断材料となります。

競合比較分析の手法

自社ブランドの認知度を単独で測定するだけでなく、競合他社との比較分析を行うことが重要です。市場での相対的な位置づけを把握することで、より戦略的な判断が可能になります。

競合比較では、主要な競合ブランドを3〜5社程度選定し、同じ条件で認知度を測定します。純粋想起率、助成想起率、ブランドイメージなどを横並びで比較することで、自社の強み・弱みが明確になります。

また、時系列での変化を追跡することで、競合他社の施策の効果や市場でのシェア変動を把握できます。これにより、競合対策や差別化戦略の立案に活用できます。


参考:他社と差別化するポイントを見つける|競合分析のコツと効率化


調査設問例と設計のポイント

属性別設問例(性年代・居住地・年収等)

効果的な認知度調査を実施するためには、回答者の属性を詳細に把握することが重要です。基本的な属性項目として、性別、年代、居住地域、職業、年収、家族構成などがあります。

  • 性別・年代の設問

「あなたの性別を教えてください」「あなたの年齢を教えてください」といった直接的な質問が一般的です。年代は5歳刻みまたは10歳刻みで区切ることが多く、調査の目的に応じて適切な区分を選択します。

  • 居住地域

都道府県レベルでの把握が基本ですが、都市部と地方部の違いを分析したい場合は、市区町村レベルまで詳細に聞く場合もあります。年収については、プライバシーに配慮し、選択肢形式で幅を持たせた設問にするのが一般的です。

認知度測定の具体的設問例

認知度を正確に測定するためには、設問の順序と表現が重要です。まず純粋想起から始め、その後助成想起を測定するという流れが基本となります。

認知の深さを測る設問として、「○○というブランドについて、どの程度詳しくご存知ですか?」という質問も有効です。「名前だけ知っている」「なんとなく知っている」「よく知っている」といった選択肢で、認知の質を測定できます。

対象者設計の注意点

調査対象者の設計は、調査結果の信頼性に直結する重要な要素です。まず、調査の目的に応じて適切なターゲット層を設定する必要があります。

サンプル数については、統計的な信頼性を確保するため、最低でも300〜500サンプルは必要です。より詳細な分析を行う場合は、1000サンプル以上が望ましいとされています。地域別や年代別の分析を行う場合は、各セグメントで十分なサンプル数を確保する必要があります。

調査票作成時の留意事項

調査票の作成では、回答者の負担を最小限に抑えながら、必要な情報を効率的に収集することが重要です。質問数は15〜20問程度に収め、回答時間は10分以内を目安とします。

質問の順序も重要な要素です。属性に関する質問は最後に配置し、認知度に関する核心的な質問を前半に持ってくることで、回答者の集中力が高い状態で重要な情報を収集できます。

また、誘導的な質問は避け、中立的な表現を心がけます。「人気の○○ブランドをご存知ですか?」ではなく、「○○ブランドをご存知ですか?」という表現にすることで、回答のバイアスを防げます。

調査結果の活用方法

認知度が低い場合の対策

認知度が低い場合、まず認知度向上を最優先課題として取り組む必要があります。この段階では、ブランドの存在を多くの人に知ってもらうことが重要です。

効果的な対策として、マス広告の活用が挙げられます。テレビCM、新聞広告、屋外広告など、リーチの広いメディアを活用してブランド名の露出を増やします。特に、ターゲット層がよく利用するメディアを重点的に活用することが重要です。

また、話題性のあるキャンペーンやイベントの実施も有効です。SNSでの拡散を狙った企画や、インフルエンサーとのコラボレーションなど、口コミを生み出す施策を展開します。ただし、認知度向上には一定の時間がかかるため、継続的な取り組みが必要です。

認知度は高いが興味関心が低い場合

認知度は高いものの、消費者の興味関心が低い場合は、ブランドの魅力や価値を効果的に伝える施策が必要です。この状況は、ブランドは知られているが「自分には関係ない」と思われている可能性があります。

対策として、ターゲット層に響くメッセージの開発が重要です。商品の機能的価値だけでなく、情緒的価値や体験価値を訴求することで、消費者の関心を引くことができます。

また、実際に商品を体験してもらう機会を増やすことも効果的です。試供品の配布、店頭でのデモンストレーション、体験イベントの開催などにより、ブランドへの理解と関心を深めることができます。

認知度は高いが購入に繋がらない場合

認知度も関心も高いにも関わらず購入に至らない場合は、購買の障壁を特定し、それを取り除く施策が必要です。価格、購入場所、商品の種類など、様々な要因が考えられます。

価格が障壁となっている場合は、価格戦略の見直しや、価値に見合った価格であることを訴求する必要があります。お試し価格での提供や、分割払いオプションの導入なども検討できます。

購入場所が限られている場合は、販売チャネルの拡大が有効です。オンライン販売の強化、新たな小売店との提携、自動販売機での販売など、消費者がアクセスしやすい販売方法を検討します。

購入はあるがリピートに繋がらない場合

初回購入はあるものの、リピート購入に繋がらない場合は、商品やサービスの品質、顧客体験の改善が必要です。この段階では、既存顧客の満足度向上が最重要課題となります。

まず、既存顧客へのアンケート調査を実施し、不満点や改善要望を把握します。商品の品質、価格、サービス対応など、様々な観点から評価を収集し、優先順位をつけて改善に取り組みます。

また、顧客との継続的な関係構築も重要です。メールマガジンやSNSを通じた情報発信、ロイヤルティプログラムの導入、定期的なキャンペーンの実施などにより、ブランドとの接点を維持し、再購入を促進します。

ブランドイメージが曖昧な場合

ブランドは知られているものの、明確なイメージが形成されていない場合は、ブランドアイデンティティの再構築が必要です。消費者にとって「何のブランドなのか」が不明確な状態を改善する必要があります。

まず、自社が目指すブランドイメージを明確に定義します。品質、革新性、親しみやすさ、高級感など、どのような価値を消費者に提供したいのかを具体化します。その上で、一貫したメッセージとビジュアルアイデンティティを展開します。

広告やプロモーション活動においても、統一されたトーン&マナーを維持することが重要です。また、商品パッケージ、店舗デザイン、スタッフの対応など、あらゆる顧客接点でブランドイメージを体現することで、消費者の心の中に明確な印象を形成できます。

ブランド認知度調査の費用・期間

費用相場と内訳

ブランド認知度調査の費用は、調査手法、サンプル数、調査項目の複雑さによって大きく変動します。一般的な相場を理解しておくことで、適切な予算計画を立てることができます。

  • ネットリサーチの場合

500サンプルで30〜50万円程度が相場です。1000サンプルでは50〜80万円程度になります。この費用には、調査設計、データ収集、基本的な集計・分析が含まれます。より詳細な分析や報告書作成を依頼する場合は、追加で20〜30万円程度が必要になります。

  • インタビュー調査の場合

個別インタビュー1件あたり3〜5万円、グループインタビュー1回あたり30〜50万円程度が相場です。会場費、謝礼、分析費用などが含まれます。郵送調査は、ネットリサーチの1.5〜2倍程度の費用がかかるのが一般的です。

調査期間の目安

調査期間は手法によって大きく異なります。適切なスケジュール管理により、必要なタイミングで結果を活用できるよう計画することが重要です。

  • ネットリサーチの場合

調査設計から結果報告まで2〜3週間程度が標準的です。調査票の作成・確認に3〜5日、データ収集に3〜7日、集計・分析に3〜5日、報告書作成に3〜5日程度を要します。

  • インタビュー調査の場合

1〜2ヶ月程度の期間が必要です。対象者のリクルーティングに時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。郵送調査は最も時間がかかり、2〜3ヶ月程度を見込んでおく必要があります。

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近年、調査の効率化とコスト削減を実現するツールとして、セルフサービス型の調査プラットフォームが注目されています。これらのツールを活用することで、従来よりも短期間・低コストで調査を実施できます。

セルフサービス型プラットフォームの利点は、調査設計から実施まで自社でコントロールできることです。調査内容の変更や追加分析も柔軟に対応でき、スピーディーな意思決定が可能になります。

ただし、調査設計や結果解釈には専門知識が必要なため、初回は専門家のサポートを受けることをお勧めします。経験を積むことで、自社での調査実施能力を向上させることができます。

Knownsではサポートと自社設計の両方を実現できます。詳しいサービス内容はこちらからご覧ください。


参考:Knowns 消費者リサーチ


実際のデータ活用事例・CEP分析

Knownsで取得できる既存データと独自データを使って、アンケート調査とデータ分析を踏まえた消費者インサイト分析の活用例を一部紹介していきます。

・CEP分析×Knowns カップアイス市場編

CEP(カテゴリーエントリーポイント)とは特定のカテゴリーを購入しようと想起するオケージョン(機会)のことです。CEPを知ることにより、同カテゴリーがどのように購入されるのかの理解が深まり、様々なCEP軸でのブランド分析をすることで市場や競合に対してのブランドがもつ課題や取るべき戦略が見えてきます。

Knownsではブランドの競合データ収集・分析をすることで、CEPを見つけて自社との差別化できるポイントを発見します。

カップアイスブランドの場合、まずどういったときにカップアイスが欲しいかという項目でCEP毎での複数ブランドの数値を比較します。

この数値をみて、自社ブランドが競合と比較してどのCEPが得意なのか不得意なのかを見極めます。

そのうえで、差別化ポイントになりそうなCEPを見つけたらより詳しく深堀していきます。気になる続きは是非こちらの資料からご覧ください。

記事でも紹介中なので詳しい内容を知りたい方はこちらもみていってください。


参考:カテゴリーエントリーポイント分析の具体事例|歯磨き粉市場編


参考:カテゴリーエントリーポイント分析の具体事例|カップアイス市場編


まとめ

ブランド認知度調査は、企業のマーケティング戦略において重要な役割を果たします。単に「知られているかどうか」を調べるだけでなく、認知の質、競合との比較、認知経路の分析など、多角的な視点から調査を実施することが重要です。

本記事の内容を参考に、自社に最適な調査計画を立案しましょう。