アンケート設計のコツとは?回答率向上と精度を高める実践方法
「アンケートを作ってみたいけれど、どこから手をつけていいか分からない」「せっかく作ったのに回答が集まらない」そんな悩みを抱えていませんか?
実は、アンケートの成功は設計段階でほぼ決まってしまいます。どれだけ多くの人に配布しても、設計が不十分では期待する結果は得られません。
この記事では、初めてアンケートを作る方でも実践できる設計のコツを、具体例を交えながら分かりやすく解説します。
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アンケート設計の基本原則
なぜ設計が重要なのか
アンケート設計は、料理でいえばレシピのようなものです。
材料(質問)をただ並べるだけでは美味しい料理(有用なデータ)は作れません。 たとえば、カフェの店長が新メニューの評価を知りたいとします。「新メニューはどうですか?」という漠然とした質問では、回答者は「何について答えればいいの?」と困ってしまうでしょう。
一方、「新メニューの味について5段階で評価してください」なら、明確で答えやすい質問になります。このように、ちょっとした工夫で回答の質は大きく変わります。 良い設計は回答率にも直結します。分かりにくい質問や長すぎるアンケートは、途中で諦められてしまう原因になります。
回答者のことを考えて作られたアンケートは、最後まで答えてもらいやすく、質の高いデータが集まります。成功するアンケートの3要素
効果的なアンケートには、共通する3つの特徴があります。
- 明確な目的
「なんとなく意見を聞きたい」では、適切な質問は作れません。レストランが顧客満足度を調べるなら、「料理の味」「接客の質」「店内の雰囲気」など、具体的に知りたいポイントを整理することから始めましょう。 - 回答者への思いやり
答える人の立場に立って、負担にならない工夫が必要です。専門用語を使わない、回答時間を短くする、といった配慮が回答率を左右します。 - 分析を見据えた構成
集めたデータをどう活用するかを考えて質問を組み立てることで、後から「あの質問も入れておけば良かった」と後悔せずに済みます。
設計前の準備段階のコツ
事前の準備でしっかりと押さえておきたいポイントを紹介していきます。
目的の明確化と仮説立案
アンケート作りの第一歩は、「何のために調査するのか」をはっきりさせることです。
目的を明確にするには、「5W1H」が役立ちます。誰に(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、いつ(When)、どこで(Where)、どのように(How)調査するかを整理してみましょう。
また仮説を立てることも大切です。「配送に時間がかかりすぎているのでは?」「商品説明が分かりにくいのでは?」など、事前に予想を立てておくと、それを確かめる質問を作ることができます。
ターゲット設定のポイント
「誰に答えてもらうか」を明確にすることで、質問の内容や言葉遣いが決まります。
年齢や性別だけでなく、行動パターンも考慮しましょう。スマホアプリの改善が目的なら、「月10回以上アプリを使う人」といった利用頻度での絞り込みが効果的です。ターゲットによって、質問の表現も変わります。
10代向けなら親しみやすい言葉を、企業の経営者向けならビジネス用語を適度に使うなど、相手に合わせた調整が必要です。
調査手法の選定基準
アンケートには様々な実施方法があり、それぞれに特徴があります。
オンライン調査は費用が安く、短期間で多くの回答を集められます。ただし、インターネットを使わない層の意見は聞けません。高齢者の声を重視するなら、郵送調査の方が適している場合もあります。
複雑な商品について詳しく聞きたいときは、対面調査が有効です。
相手の表情を見ながら追加質問もできますが、時間とコストがかかります。
予算・期間の現実的な設定
アンケート調査は、想定以上に時間とお金がかかります。
予算では、質問作成費用、回答者への謝礼、システム利用料、分析作業費などを考慮する必要があります。
期間についても現実的な見積もりが大切です。設計だけでも、目的整理から質問作成、テスト実施まで含めると2〜3週間は必要でしょう。
効果的な設問作成のコツ
聞きたいことを並べていくのではなく、正しく必要な情報を手に入れるために効果的なコツを紹介していきます。
シンプルで分かりやすい設問文の作り方
良い質問の基本は、誰が読んでも迷わずに答えられることです。
「一文一義」の原則を守りましょう。一つの質問では一つのことだけを聞きます。「商品の価格と品質についてどう思いますか?」という質問は、価格に満足しているが品質に不満がある場合、回答者を困らせてしまいます。
専門用語は避けて、誰でも分かる言葉を使いましょう。「ROI」ではなく「投資効果」、「UI/UX」ではなく「使いやすさ」といった具合に、一般的な表現に置き換えます。
適切な回答形式の選択と使い分け
質問の内容に応じて、最適な回答形式を選ぶことが重要です。
単一選択式 一つだけ選んでもらう形式です。「あなたの年代は?」といった基本情報や、「最も重要だと思うのは?」といった優先順位を聞くときに適しています。
- 複数選択式
当てはまるものをすべて選んでもらう形式です。「利用したことがあるSNSをすべて選んでください」といった質問に向いています。 - 評価尺度式
満足度や重要度を段階的に評価してもらう形式です。5段階評価が一般的ですが、中間を避けたい場合は4段階や6段階を使うこともあります。 - 自由記述式
回答者の生の声を聞ける貴重な形式です。ただし分析に時間がかかるため、本当に必要な場合に限定して使いましょう。
バイアスを避ける選択肢設計
公平で中立的な選択肢を用意することで、信頼性の高いデータが得られます。 選択肢の順番には注意が必要です。
一般的に、最初と最後の選択肢が選ばれやすい傾向があります。「素晴らしい新サービス」「画期的な機能」といった主観的な表現は、回答者の判断を誘導してしまいます。中立的で客観的な表現を心がけましょう。
論理的な設問順序と構成
質問の順番は、回答者の心理的な流れを考慮して決めることが大切です。
冒頭は答えやすい基本的な質問から始め、中盤に調査の核心となる質問を配置し、終盤に自由記述や個人的な質問を配置します。前の質問の回答によって次の質問が変わる場合は、分岐設定を活用しましょう。
設問数の最適化
質問数は、回答者の負担と得たい情報のバランスを考えて決めます。
オンライン調査では10〜20問程度が適切とされていますが、内容や対象者によって調整が必要です。本当に必要な情報だけに絞り込むことが、質の高い回答を得るコツです。
回答率を上げる設計のコツ
アンケート設計の際に離脱を防ぐためにも回答率を上げるコツを紹介していきます。
回答者の負担を軽減する
回答率向上の最重要ポイントは、回答者の負担を最小限に抑えることです。 「所要時間:約5分」といった時間の明示や「10問中3問目」といった進捗表示が効果的です。すべての質問を必須にするのではなく、本当に必要な情報だけを必須項目に設定しましょう。
魅力的な導入文とインセンティブ設計
アンケートの冒頭文は、回答者の協力を得るための重要な要素です。 なぜこの調査が必要なのか、回答者にとってどんなメリットがあるのかを分かりやすく伝えましょう。謝礼については、金銭的な謝礼だけでなく、調査結果の共有、商品の割引クーポン、抽選でのプレゼントなど、様々な形があります。
スマートフォン対応とユーザビリティ
現在、多くの人がスマートフォンでアンケートに回答します。モバイル対応は必須の要件です。レスポンシブデザインの採用、十分な大きさのボタン配置、読み込み速度の最適化などが重要です。
心理的ハードルを下げる
最初にすべての質問を見せるのではなく、一問ずつ表示することで負担感を軽減できます。難しい質問は後半に配置し、最初は答えやすい質問から始めましょう。
データ分析を見据えた設計のコツ
実施後には回収したデータを施策や戦略に活かしていくため、どのように使うのかまでをイメージする必要があります。
その際に押さえておきたいポイントをご紹介します。
集計しやすいデータ形式の設計
後の分析作業を考慮した設計により、時間とコストを大幅に削減できます。
「非常に満足(5点)」から「非常に不満(1点)」といった評価尺度は、平均値や標準偏差の計算が容易になります。同じような質問では、選択肢の表現や順序を統一することで、比較分析がしやすくなります。
クロス分析に必要な属性項目の設定
異なる属性間の関係を調べるクロス分析は、アンケート結果を深く理解するための重要な手法です。
年齢、性別、居住地域、職業などの基本属性により、回答傾向の違いを分析できます。商品の利用頻度、購入金額、利用期間などの行動属性も有用な分析軸になります。
数値化可能な回答形式の活用
統計的な分析や比較を行うためには、回答を数値化できる形式で設計することが重要です。
5段階または7段階で評価してもらうリッカート尺度が最も一般的です。各段階に数値を割り当てることで、平均値の計算や統計検定が可能になります。
分析目的に応じた設問設計
どんな分析を行いたいかを事前に決めることで、必要な情報を漏れなく収集できます。
顧客満足度と再購入意向の関係を調べたい場合、両方とも5段階評価で聞くことで、相関係数を計算できます。
よくある設計ミスと対策
せっかく費用と労力をかけて実施したアンケートでもちょっとした見落としやケアレスミスで使えないということになると大変困りますよね。ここでは先回りしてよくある設計ミスとその対策をお伝えします。
設問設計でよくある失敗パターン
アンケート設計では、経験豊富な担当者でも陥りやすい失敗があります。
- 複数の要素を一つの質問で聞いてしまう
価格と品質についてどう思いますか?」では、価格に満足しているが品質に不満がある場合、回答者は困ってしまいます。
- 誘導的な質問
「素晴らしい新サービスについてどう思いますか?」といった表現は、回答者の判断を誘導してしまいます。 - 選択肢の不備
すべての回答者が当てはまる選択肢がない、複数の選択肢に同時に当てはまるといった問題があります。
回答精度を下げる要因と改善方法
「1年前の満足度はどうでしたか?」といった記憶に頼る質問は、回答精度を下げる大きな要因です。現在の状況について聞くか、比較的最近の出来事に限定して質問しましょう。
「よく利用しますか?」という質問では、「よく」の基準が人によって異なります。「週に3回以上利用しますか?」といった具体的な基準を示すことで、回答の精度を高められます。
アンケート調査実施で対面する課題
消費者から生の情報が手に入るアンケートは実用的なデータではありますが、実施するにあたりいくつかのハードルがあります。今必要かどうか、今できる環境かどうかの判断をするためにもアンケート実施による課題を知っておきましょう。
設計にかかる時間と労力の実態
アンケート設計は、想像以上に時間と労力がかかる作業です。質の高いアンケートを作成するためには、十分な時間を確保することが重要です。
小規模なアンケートでも設計から実施準備まで2〜3週間、大規模なものでは1〜2ヶ月の期間を見込んでおくことが現実的です。
専門知識が必要な理由
効果的なアンケート設計には、統計学、心理学、調査手法、業界知識、技術的な側面など、様々な分野の専門知識が必要です。これらの専門知識を一人ですべて習得するのは困難であり、多くの場合、専門家のサポートが必要になります。
設計ミスが調査結果に与える影響
アンケート設計のミスは、調査結果の信頼性を大きく損なう可能性があります。一度実施したアンケートは後から修正できないため、設計段階での慎重な検討が重要です。 曖昧な表現や誘導的な質問により、回答者の真意とは異なる回答が集まってしまいます。
適切な選択肢がない場合、回答者は仕方なく近い選択肢を選ぶことになり、データの精度が下がります。 これらの設計ミスは、間違った経営判断や商品開発の方向性の誤りにつながる可能性があり、企業にとって大きな損失となる場合があります。
効率的なアンケート設計を実現する方法
設計作業を効率化するツールの活用
現代では、アンケート設計を効率化する様々なツールが利用できます。
これらを適切に活用することで、時間とコストを大幅に削減できます。 オンライン調査プラットフォームにより、専門的な知識がなくても基本的なアンケートを作成できます。テンプレート機能を活用することで、設計時間を短縮できます。
専門サポートを受けるメリット
アンケート設計の専門家からサポートを受けることで、質の高い調査を効率的に実施できます。
専門家は豊富な経験と知識を持っており、バイアスの回避、適切な質問文の作成、効果的な設問順序の設計などにより、信頼性の高いアンケートを作成できます。
社内で試行錯誤しながら設計するよりも、専門家のサポートを受けることで大幅な時間短縮が可能です。外部の専門家からの客観的な視点により、より中立的で効果的な質問を設計できます。
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- 設問自由設計 目的に応じて1問から自由にカスタマイズ可能。細かなニュアンスの検証や深掘りにも対応できます。
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専門家のサポート付きで進められるので安心して調査を実施することができます。
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実際のデータも気になる方は是非こちらの記事もご覧ください。
参考:「TikTok Shop」関心層2割、今後の広がりは”信頼”がカギ?【ノウンズ株式会社調べ】
まとめ
アンケート設計は、調査の成功を左右する重要な要素です。適切な設計により、回答率の向上と回答精度の向上を同時に実現できます。
そして質の高いアンケートは、ビジネスの意思決定を支える重要な情報源となります。まずは完璧を目指さず、小さなアンケートから始めて、経験を積みながら徐々にスキルアップしていきましょう。
ほかにもカジュアルリサーチを使った事例をご紹介中です。 気になる方は是非ご覧ください。
参考:導入事例 マーケティングにおける「Who」を迅速に理解するためのツール
参考:導入事例 Knowns 消費者リサーチからしか分からない潜在顧客のデータを重宝