ビールブランド調査から読み解く消費者インサイト
日本のビール市場を数字で読み解く
コンビニエンスストアに並ぶビールを見ると、多くのブランドが競い合っているのがわかります。そのなかでも、消費者の頭の中で選ばれているブランドはどれなのでしょうか。
今回、Knownsが実施したビールブランド調査では、スーパードライ、一番搾り、プレモル、ヱビス、オリオンビールという日本の主要5ブランドについて詳細な分析を行いました。
この調査は消費者の認知から実際の購買行動まで、4段階のプロセスを追跡したデータです。
スーパードライは1,736名の回答者のうち1,646名が認知、一番搾りは1,770名中1,676名が認知しています。
ブランド認知と実際の購買には大きなギャップがある
この調査結果を見てみると、「知っている」と「買っている」は全く別の話だということが明確になりました。
まず認知率を見てみましょう。スーパードライは圧倒的で95.2%、一番搾りが89.2%、ヱビスが90.4%と続きます。プレモルは76.4%にとどまっています。
このような商品カテゴリの場合だと若年層では差が顕著で、10代での認知率はプレモルが60.3%、ヱビスも66.2%と低い数値を示しています。
興味深いのは認知から実際の購買への転換率です。
認知している人のうち、実際に現在購買している人の割合を見ると、スーパードライが49.1%、一番搾りが42.1%、ヱビスが38.5%、
そしてプレモルとオリオンビールはともに25.4%という結果でした。
この結果から、知っていても半数以上の人は買っていないということがわかります。
例えばスーパードライの場合、60代での現在購買率が52%を超えている一方で、30-34歳では44.6%にとどまっています。
この10ポイント近い差は、年代によって全く異なる購買行動があることを示しています。
単に認知度向上だけにマーケティング予算を投じても、必ずしも売上につながらないということが言えそうです。
また興味深いのは年代別の転換パターンです。オリオンビールは20代前半の転換率が59.2%と突出して高く、若年層への訴求力の強さを示しています。
これは沖縄発のブランドが持つ独特な魅力が、若い世代に響いていることを意味するのかもしれません。
【年代×性別分析】ターゲット戦略の見直し方が見えてくる
「ビールは男性の飲み物」というイメージは、データを見ると確かにリアルを反映しているようです。
これはビジネスチャンスの裏返しでもあります。
全ブランドで現在購買者の約6割が男性という結果が出ています。
スーパードライが59.8%、一番搾りが60.3%、プレモルに至っては63.4%、ヱビスが61.8%、オリオンビールが64.3%です。
これらの数字は、女性市場がまだ十分に開拓されていない可能性を示唆しています。
年代別の分析では、各ブランドの明確な特徴が浮かび上がりました。スーパードライは65-69歳の購買者が12.2%を占め、高年齢層の安定した支持を得ています。
一方、オリオンビールは10代が14.5%と他ブランドの2倍近い数値を示し、若年層へ強くアピールできていることがわかります。
プレモルは興味深いポジションにあります。20-24歳が8.6%、25-29歳が8.3%と若年層での数値が低く、この世代への訴求に課題があることが分かります。
しかし、これは言い換えれば、若年層への戦略的アプローチ次第で大きな成長機会があるということです。
家族でバーベキューをする際、父親がスーパードライ、母親がサワー、そして大学生の子どもがオリオンビールを選ぶ。
こんな光景が、データから見えてくる現在の消費パターンかもしれません。
【7Journey分析】顧客の現在地を正確に把握できる
「7Journey分析」とは、消費者を7つの段階に分類して現在地を把握する手法です。
この分析では、それぞれの顧客層に最適なアプローチが見えてきます。
今回は、スーパードライに絞ってそれぞれの数値をみてみましょう。
最も注目すべきは「ロイヤル層」の分布です。
スーパードライでは44.5%と圧倒的な数値を示し、安定したファン層を確保しています。
これは約半数の顧客が継続的に購入し続けるほど、ブランドとの強固な関係を築いているということを意味しています。この層の顧客は、競合ブランドの新商品が出ても簡単には離れません。
一方で「きっかけ待ち層」も重要なセグメントです。23.4%とこの層が多く存在します。
これらの消費者は適切なタイミングと魅力的な提案があれば、購買に転換する可能性が高い層です。
「巻き戻し層」も見逃せません。一度は購買していたが現在は離れてしまった顧客の存在を示しています。
表のなかの11.7%という数値です。この層は過去に購買経験があるため、適切なアプローチで再獲得できる可能性があります。
完全版のデータでは、他のブランドとの数値の比較も表になっています。
どのブランドが7Journeyの中のどの層に、ブランドとして施策を打つかの仮説を立てやすい形になっているので是非ご覧ください。
【価値観×消費行動】消費者が求める価値
消費者の購買行動の背景には、その人の価値観が関わっています。この調査では、購買者の価値観が分析されています。
興味深いことに、全ブランドの購買者には共通して「倹約家」「チャレンジャー」「ワーカホリック」という価値観があります。
現代の消費者は、無駄遣いを嫌いつつも新しいことに挑戦し、仕事に熱心に取り組む人という傾向があります。
ここでもスーパードライを選ぶ方の価値観を見ていきましょう。
個人価値観では、「チャレンジャー」が+7.8%と最も高い差分を示しています。
これは好奇心が旺盛で、探求心も高く、情報収集も積極的なタイプです。
前例にとらわれず、独創性を持ってチャレンジできる人たちがスーパードライを選んでいるということです。
続いて「倹約家」が+7.4%となっており、漠然とした将来の不安から貯蓄と投資をしている堅実な面も持っています。
自制心が強く、将来の可能性についての感覚を持っている人たちです。さらに「自己愛強め」が+6.9%で、承認欲求が強く、自身の容姿への賞賛に幸福を感じる傾向があります。
一方で、マイナスの特徴も明確で印象的です。「インドア派」が-5.9%と最も低く、のんびりと自分のペースで過ごすよりも、刺激を求める傾向があることが分かります。
社会価値観では「ワーカホリック」が+9.1%と突出しています。
仕事への熱意が高く、成長に対して意欲的で、仕事での成長にプレッシャーもやりがいも感じるタイプです。
また「自分より家族優先」が+6.7%となっており、子どもや家族の笑顔が自身のエネルギー源となる家族思いの一面も持っています。
注目すべきは「依存集中型」が+6.4%という結果です。
これは幸せを他人に依存し、自分の力ではなく、自分のことを幸せにしてくれる誰かを必要とする傾向を示しています。
消費価値観では「リターン期待型消費」が+8.8%でトップです。
使った金額以上のリターンが得られるものにお金を使う傾向があり、
単純に安いものではなく、価値ある商品を求める姿勢が表れています。
「エシカル消費」も+8.3%と高く、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動を重視していることが分かります。
興味深いのは「ネタ消費」が+4.7%とプラスになっていることです。
SNSに書き込む際のネタにするためやコミュニケーションのための消費行動も、ある程度重視していることが読み取れます。
これらのデータから見えてくるスーパードライ購買者像は、仕事に熱心で家族思い、新しいことにもチャレンジするアクティブな現代人です。
しかし同時に、将来を見据えた堅実さも持ち合わせており、購買においても費用対効果を重視する賢い消費者でもあります。
まさに「働き盛りの現代人」という表現がぴったりの価値観が見えてきました。
【完全版PDFでは全ブランドのデータを詳細に】
この記事では、調査結果資料のなかからいくつかポイントを絞ってお伝えしました。完全版PDFには更に詳細で実践的な情報が含まれています。
資料内にあるイメージ出現率の差分分析では、現在購買者と全体との間で各ブランドイメージがどのように変化するかが詳細に分析されています。
たとえば、スーパードライでは現在購買者において「ハマる・依存性」が+10.1%、「必要・ないと困る」が+9.3%向上することが分かります。
これは、ブランドへの依存度が高いことを示しています。
104項目にわたるサイコグラフィック(心理的特性)の詳細解説も是非見ていただきたい項目です。
「自己愛強め」「チャレンジャー」「倹約家」といった各特性が具体的にどのような行動や思考パターンを示すのかが詳しく説明されています。
これらの情報は、ターゲット顧客の理解を深め、より精度の高いマーケティング戦略の策定に直結します。
まとめ:データドリブンなブランド戦略の重要性
今回の調査から、ビール市場では認知と購買に大きなギャップが存在し、年代・性別だけでなく価値観に基づくアプローチが重要であることが明らかになりました。
特に、各ブランドの顧客セグメントの現在地を正確に把握し、それぞれに最適化された戦略を展開することで、より効果的なマーケティングが可能になります。
顧客データに基づく意思決定こそ、競争の激しい市場での差別化を実現する鍵となります。Knowns消費者リサーチでは、これらの業界レポートをすぐにご提供可能です。
無料でお配りしておりますので、是非サンプルレポートを一度ご覧ください。