カテゴリーエントリーポイント分析の具体事例|歯磨き粉市場編


本記事は、ノウンズ株式会社が提供する消費者リサーチツール「Knowns(ノウンズ)」を用いて行ったカテゴリーエントリーポイント(CEP)分析の事例レポート(歯磨き粉市場)を解説するものです。

「なぜその商品を思い出すのか」。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)は、そうした“想起のきっかけ”を分析するアプローチです。

たとえば「虫歯ができたから」「口臭が気になるから」といった文脈で、どのブランドが思い出されやすいか─

それがCEP分析の出発点です。

※CEPの基本的な考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。


※レポートの全体像や詳細なグラフを含む完全版は、以下よりダウンロードいただけます。


歯磨き粉ジャンルにおけるCEPの分布と傾向

今回ご紹介するのは、「歯磨き粉市場」におけるCEP分析の実例です。

ブランドが戦略的に投資すべき「CEP」の特定を行う流れを解説していきます。

前提となるCEPsの考え方(メンタルマーケットシェアの概念について)

CEP分析各CEPにおいてどのブランドがどれだけ想起されたかをもとに、ブランドの“想起されやすさ”を定量的に可視化する手法を示しています。

分析は以下の3ステップで構成されています。

1. CEPパワー(CEP自体の想起率)

まずは、それぞれのCEPが全体の中でどれくらい頻出しているかを見ます。歯磨き粉の例では、たとえば「虫歯ができた」、「口臭の悩みが発生した」など各CEPの頻出度を調査します。

2. 想起シェア(各CEPにおけるブランド構成比)

次に、各CEPごとに、どのブランドがどれくらい思い出されたかを見ていきます。

たとえば「虫歯ができた」というCEPがCEPsのうち50%を占めていたと仮定します。

この「虫歯ができたとき」というCEPで想起されたブランドのうちの15%がブランドBだったとしたら、「虫歯ができたとき」におけるブランドBの想起シェアは30%です。

3. CEPシェア(CEPパワー × 想起シェア)

最後に、CEPごとの想起シェアに、そのCEP自体のパワーを掛け合わせることで、ブランドがどの文脈でどれだけ思い出されているかをスコア化できます。

例:

  • 「虫歯ができた(CEP1)」というCEPはCEP全体の50%
  • CEP1内でブランドBの想起シェアが30%
  • ブランドBのCEP1におけるCEPシェアは 0.5 × 0.3 = 15%

このように、各CEPでのCEPシェアをブランドごとに合算することで、そのブランドが市場全体でどれだけ思い出されやすいかを定量的に表すことができるのです。

この合算値を「メンタル・マーケットシェア(MMS)」と呼んでいます。

MMS(メンタル・マーケットシェア)が示すもの

メンタル・マーケットシェアは、単なる認知度や好意度とは異なり、「生活者の具体的な購買文脈で、どれだけ“真っ先に思い出されるか”」というブランドのリアルな強さを反映しています。

  • 特定のCEPでは強いが、他の文脈では忘れられている
  • ライバルブランドが特定CEPで急成長している
  • 想起されてはいるが、MMSには結びついていない(=マイナーCEP中心)

といったブランドごとのポジションを把握することで、打ち手の優先順位やメッセージングの調整ができるようになります。

歯磨き粉市場を対象にした実際のCEP分析

まずはじめに歯磨き粉市場におけるCEPを調査した結果が下記です。

CEPは多様に分散|1位でも10%台前半

最も高い「想起率」を示したのは「虫歯ができて歯のケア意識が高まった」というニーズで実に13.3%の人がこのCEPをきっかけに歯磨き粉を思い出しています。上位5つのCEPだけで全体の過半数を占めるものの、その他にも「口臭ケア」「着色汚れ」「フレーバーへの飽き」など、想起文脈は広範にわたります。

特定ブランドが単一のCEPで独占しているケースは少なく、ブランド戦略においては複数のCEPをどうカバーするかが鍵になります。

年齢が上がるほど、機能的・健康寄りの悩みがCEPになりやすい

先ほどのCEPを回答者の年齢別に示したのが下記のデータです。

「虫歯ができた」「口臭の悩みが発生した」「歯科医で指摘を受けた」といった、明確な課題意識を伴うCEPは、40代以上の比率が高く、50〜60代では特に顕著です。
たとえば「虫歯ができて歯のケア意識が高まった」では、40代以上で54%(32%+22%)を占めており、“気になったから行動する”という明確なトリガーが高年代層に強いことが読み取れます。

この傾向は、「歯のホワイトニング意識が高まった」「健康や予防意識の高まり」など、機能性訴求や実感ニーズと関連の深いCEPに共通しています

実際にブランドで見ると──特定CEPの独占はほぼ見られない

ここでは、各カテゴリーエントリーポイント(CEP)において、どのブランドがどれだけ想起されているかを定量化した「CEPシェア」の一覧を示しています。

多くのCEPで“想起の分散”が起きている

この図から明確にわかるのは、一部のCEPを除いて、特定ブランドが圧倒的に想起されているケースは少ないという点です。
たとえば「虫歯ができて歯のケア意識が高まった」ではクリニカ(2.1%)が最も高いものの、他ブランドもそれなりのスコアを持ち、1ブランドによる独占的なポジションは築かれていないことがわかります。

「使用中の歯磨き粉に飽きた」「口臭の悩み」など、機能系・嗜好系いずれのCEPにおいても、複数ブランドが均衡して想起されている構図が目立ちます

MMS(メンタルマーケットシェア)を算出する

MMS(メンタルマーケットシェア)は、各CEPにおける想起シェア(CEPシェア)をブランドごとに合算したものです。つまり「どれだけ多くの文脈で、そのブランドが消費者の頭に浮かぶか」という尺度。これは、一般的な認知率よりも、実際のブランド選好に近い行動変数です。

MMS(メンタル・マーケットシェア)は、実購買と高い相関を示す

棒グラフを見ると、MMSと現在購入率/購入経験率の並び順がほぼ一致していることがわかります。
とくに相関係数が高く、現在購入率との相関は 0.896、購入経験率との相関は 0.899 と、ほぼ完全に近い一致を示しています。

このことから、「思い出されている=買われている」傾向が強く、MMSは実態に即した指標であることが実証的に示されています。

ここから得られる最大の示唆は、「まずは想起されなければ、そもそも選ばれない」という厳然たる事実です。

逆に言えば、ブランドが占有したいCEP(想起文脈)を明確に定め、そこに集中的に訴求を行うことで、実購買に近づけることができるという戦略設計が可能になります。

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ここまで、歯磨き粉市場におけるカテゴリーエントリーポイント(CEP)の全体像と、年代別の傾向、さらには各CEPにおけるブランドの想起構造についてご紹介してきました。

ご覧いただいたように、CEPは単なる“理由”の集計ではなく、「どんな場面で、どのブランドが、どのように思い出されているか」を可視化する重要な視点です。そして、それらのデータをもとに「どの文脈を取りに行くか」「どの文脈で競合とぶつかるか」といったブランド戦略を描くことができます。

ただし、今回ご紹介したのは分析全体のごく一部に過ぎません。

本レポートの完全版では、

  • 上位10のCEPにおける想起構造の詳細な比較
  • CEPごとのブランドポジションを一覧化したマトリクス
  • MMS(メンタル・マーケットシェア)の計算ロジックとブランド別スコア
  • 年代別・性別ごとのCEP傾向
  • 特定ブランドが狙うべき“未開拓CEP”の抽出と示唆

など、より踏み込んだ分析内容と視覚的に理解しやすいグラフ・図表を多数掲載しています。

「どの文脈で想起されることが、実購買につながるのか?」
「競合より一歩先に、どの“場面”を取りに行くべきか?」

こうした問いに、定量的な答えを与えてくれるのがCEP分析の強みです。

歯磨き粉という身近なカテゴリを題材にしながらも、他カテゴリでも応用可能な分析手法と示唆が詰まったレポートになっております。
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