データ活用でお客様の課題を解決する組織へ進化
- 会社名
株式会社北海道新聞社
- お話を伺った方
東京支社営業局
– 堤 智久 氏(中央左)
– 濱谷 歩 氏(リモート参加)
営業局ソリューション推進部
– 花井 篤志 氏(中央右)
– 平松 元親 氏(右)
– 杉林 和亮 氏(左)
※以下、敬称略
――はじめにみなさまの部署の業務内容やミッションを教えていただけますか?
花井:私たちの所属するソリューション推進部は、2023年4月、本社営業局内に発足しました。
情報取得・発信におけるデジタル化が加速度的に進み、印刷媒体をメインにする我々新聞社は年々苦境に立たされています。
かつては新聞広告や主催イベントへの協賛獲得で大きな収入を得ることができましたが、それを「昔は良かった」と懐かしみ、無為に日々を過ごすつもりは毛頭ありません。
新聞広告・イベント協賛にこだわらず、あらゆる新しい稼ぎ方を探り収益獲得策を講じています。
そのためには、まず先方の課題や悩みにしっかり耳を傾け、何が最適提案なのかを考える、つまりソリューション営業への転換を図らねばなりません。ソリューション営業に必要な知見を得て、商材や仕組みを実装し、営業フロントとともに先方を口説くのが当部のミッションです。
今風に言うプロダクトアウト(=我々が売りたい物をお客さんに売る)をやめようとしています。過去を否定するわけではなく、クラシカルな営業スタイルをキープしつつも、新しい営業スタイルも身につけなければなりません。
起点は「先方は何を望んでいるのか」です。極端な例ですが、あるお菓子屋さんから「着ぐるみを作りたい。商品パッケージも作成したい。ポップアップ店舗も欲しい」という相談があれば、着ぐるみやパッケージ制作が得意な会社をつなぐこともします。店舗スペースも探します。新聞社は地場の多くの業界とつながりがあります。このような提案も、我々の強みを生かした顧客の課題解決につながっています。
そういう舞台を作っていこう、とできたのがソリューション推進部です。

濱谷:私は東京支社の営業局に所属しており、主に東京に本社を置くお客さまを中心に、北海道新聞への出稿やイベントへの協賛などの営業を行っております。元々ソリューション推進部にいた堤が東京支社に異動するタイミングで、私たちの部署でも Knowns 消費者リサーチの活用が始まっており、ソリューション推進部が考えている新しい営業をまさに実践しようとしている部署になります。
――なるほど!ソリューション推進部で実際に新しく始めた取り組みを教えていただけますか?
平松:今、北海道ではアウトドアが流行っていることもあり、アウトドアメディア『ASATTE CAMP(あさってキャンプ)』や子育て世代に向けた『mamatalk(ママトーク)』、北海道の食と観光に特化した『TripEat(トリップイート)』などのバーティカルメディアを運用しています。ターゲットセグメントも明解なメディアです。
『mamatalk』は地域密着型のトピックスを中心に、役立つ情報をSNSと連動しながらタイムリーに発信しており、地域での子育てを応援しながら子育て世代とのつながりを広げています。
『ASATTE CAMP』『TripEat』は道内の情報が中心ですが、道外の方にも楽しんでいただける内容で北海道への関心を高めていただけるようになっています。
いかに購読層を広げるかが目下の課題ですが、これらのメディアから新聞購読とはまた異なる層を獲得できています。併せてこのメディアのタイアップ記事販売と広告運用も自社で行っております。

堤:新規事業を実現する上で何が大事かというと、まずは新しいプロダクトです。
プロダクトを整えた後、営業も新しい考えで成立させる必要があります。
整える段階と成立させる段階、その両方にデータ分析が重要だと考えています。
データ軸を持って新しい営業領域に出ていきましょうと動き出しているわけです。
そして、北海道に興味がある、北海道に目的を持っている企業に「北海道のことなら道新(北海道新聞社)にお願いすればワンストップでやってくれる」と認識してもらうのが目標です。
杉林:部署のミッションとして「お客さまの課題解決」の話をしましたが、データを使って解決をしていくのが一番大きな変化になっています。
これまでの経験値や感触などで企画を行ったこともありました。しかし、それではお客さまが必ずしも納得するとは限りませんし、成功する根拠もないのが事実です。
――Knowns 消費者リサーチの導入のきっかけは、データ分析でお客さまの課題を解決するためですか?
杉林:はい。課題解決を行うためにデータを活用して分析を行うのはもちろんですが、それだけではなく最近は営業活動の中にKnowns 消費者リサーチを活用しています。
その他にも、Knowns 消費者リサーチのカジュアルリサーチを使って、弊社が持つバーティカルメディアのコンテンツも作成しています。読者の皆様がちょっと気になることを、データから見た視点で記事を作るみたいなイメージです。
濱谷:北海道では、ドアノックの際に「道新」の名前だけでお会いできますが、東京ではそうはいかない。なぜ北海道なのかの理由が必要になります。
データを活用し提案の機会を増やす狙いもあります。
ドアノック資料作成への活用で、クライアントの課題を引き出し、さらにはクライアントも気がついていない課題から建設的な議論や仮説につながる使い方を理想と考えています。
堤:社内にもデータは存在しています。実は、このデータ整備に6年前から取り組みはじめております。
しかし社内データは、購読者の比率が高いデータのため、年代や北海道内在住など偏りがあります。マーケティングとして活用するには不十分な部分がありました。
セールスに活用するには、若年層や首都圏など道外のデータが欲しいと感じていました。これは首都圏の人たちにリーチするためというよりは、首都圏の人たちと比較して地域性を理解するためです。
――なぜKnowns 消費者リサーチだったのでしょうか?
堤:先ほどの課題を抱えていた時にノウンズ代表の田中さんをご紹介いただいたのがきっかけです。
まず法人が独立系だったというのが大きいですね。大手の系列に属していない。
そして事業をスタートしたばかりというのもタイミングが良かったです。一緒にいろいろ挑戦していけるという期待が大きかったです。
――逆にスタートアップがよいというのはどういうことでしょうか?
堤:よくある出資して回収するファイナンス重視と思われがちですが、そうではないです。我々に向き合ってくれると思ったからです。
北海道というエリアに注目してくれる、新聞社と向き合ってくれるっていう企業は、北海道外企業では少ないです。
スタートアップ企業は、スモールスタートで1つ1つ小さい成功事例を積み上げて成長しますよね。その成功事例として真剣に向き合ってくれると思ったからです。
また、代表の田中さんが失敗を経験しているのもプラスでした。失敗をしたことないスタートアップ企業の経営者も何人か知っていますが、非常に不安定さを感じるケースが多かった。
そして一番の要因は、ノウンズ社が自分たちでデータを集めて保有するという面白いビジネスモデルだったことが大きいですね。
――Knowns 消費者リサーチの導入はスムーズでしたか?
堤:スタートは苦労しました。
なぜかというと、新聞広告やバナー広告などの枠を売って会社は稼ぐという考え方が基本の社内では、「データを取得するのに費用を拠出する」というのは、会社にとって意味があるものとは理解されにくいのです。
とはいえ、幹部にデータの重要性を何とか理解していただきました。
全社的にデータに重要性を感じ、データを活用できる組織が理想ですが、現時点では一部にとどまっています。
まずは営業局で実績を作っていくという段階です。

――Knowns 消費者リサーチの導入きっかけで軽く触れて頂きましたが、具体的な活用を教えていただけますか?
杉林:1つは営業提案書への活用です。お客さまへの最初の提案に役立てています。市場や競合のことを一通り調べられるのが便利です。お客さまがおかれている状況をKnowns 消費者リサーチでまずは把握、そして出たアイデアをカジュアルリサーチで検証し、課題解決のための提案を行っています。
データがあることで私達も企画案が立てやすいですし、同時にお客さまの納得度・理解度の高い状態を作れていると考えています。
2つ目は弊社バーティカルメディアのコンテンツへの活用です。時流やちょっと気になることなどをアンケート調査して記事にしています。
――面白そうですね!例えば、どんなアンケートをしたのですか?
杉林:そうですね。好きなお寿司のネタは何?とか(笑)
北海道民は「サーモン」が好きなんですけど、関東の人は「マグロ」が1位。そして光物が他の地域よりも上位でした。関西は「バッテラ」が入るのかなと思いましたが、そうでもなかったですね。東京の人との違いなどの地域の差は、読者も面白く感じてもらえると思います。
イベント的なものでは父の日をテーマに、「理想のお父さんはどんなタイプ?」について調査しました。道民からは、芸術家パパは好かれていなかったですね(笑)
https://moula.jp/articles/life/entry-3039.html

――意外です。北海道出身のアーティストってたくさんいらっしゃいますよね。松山千春さん、玉置 浩二さん、サカナクション、GLAY.も。大泉洋さんも。他に提案への活用もあれば教えていただけますか?
杉林:最近ですが、とある自動車のキャンペーンの提案をさせていただきました。ユーザーさまの趣味にキャンプが多いというデータがあり、私達のメディアであるアウトドアメディア『ASATTE CAMP(あさってキャンプ)』を活用し、新車種でキャンプを楽しみたくなるようなコンテンツとプロモーションを企画しました。
濱谷:東京支社では、道外自治体への道民の観光誘引提案にKnowns 消費者リサーチを活用しました。対象とした自治体は、空港があり北海道からのアクセスが良く、ゴルフ需要での利用が高い現状があります。ゴルフ場だけでなく、キャンプ施設数も多く、新しい需要開拓に「キャンプ」を提案しました。
クライアントの興味喚起ができ、さらなる調査につながりました。
実際に、カジュアルリサーチで「道民の対象自治体のキャンプ施設に関する認知関心」の調査をしたところ、認知も関心も高い結果となりました。前提として北海道はどこでもキャンプできるため、道外へのキャンプ関心の高さにデータとしても驚きました。
低価格のカジュアルリサーチは、気軽に気になったことを調べることができ、このような新しい消費者動向を知ることに活用しています。
他にも、とあるアルコール飲料の企画にも活用しています。「アルコール飲料ブランド×地方の美味しいもの 」企画のために、カジュアルリサーチで「お酒×気分×シチュエーション」のデータをとる予定です。結果によっては他の酒造メーカーへの提案のヒントになるかもしれません。とても楽しみです。
――Knowns 消費者リサーチをとても活用いただきありがとうございます。データ活用提案で感じたことありますか?
濱谷:課題ってなんですか?と聞いて全ての課題を教えてくれるクライアントはいないですよね。
私たちが客観的なデータから見えてくる課題を示すことで、クライアントも認識している課題を話してくれます。つまりオープンな関係に近づけます。
そこから、相手が何を大切にして数字を見ているのか、数字のズレでみえてくる課題も理解できます。
今も課題を引き出すのは難しいと感じます。
データがあれば、何でもできる訳ではないですし、どう生かすのかが大切だと実感してますね。
数字の見方は少しずつ変わってきました。100と1000だったら大きい1000の方がいいと思ってましたが、少ない数字にヒントを感じたり。
上司の堤から、遊び感覚でよいからデータから発想を膨らませってよく言われるのですが、思考を磨くトレーニング中です…ずっと続くと思います。

花井:データと聞くと「難しい」「固い」「自分には関係ない」というイメージを持つ方が多いですね(というデータは所持してはいませんが…)。
私たちもそういうイメージを持っていましたが、Knowns 消費者リサーチにはタレントやアニメコンテンツのデータがあるなど「取っつきやすい」印象です。
杉林:あと、カジュアルリサーチはものすごく便利ですよね。これまではデータを取得するのって「大変」って思っていました。この質問を何人に、どんな割り付けで…って考えて、見積り取ったら100万円か…みたいな話がよくありますよね。でも今は、
例えば、調べたいなってことがあったら、ちょっと帰る前にKnowns 消費者リサーチに登録しておくと次の日とかには結果がわかるので、データ取得が「気軽」なものに変化しました
花井:早い、安い、親しみやすい、です。
杉林:操作部分については、難しいことはなかったです。しかし、カジュアルリサーチ自体は手軽なのですが、質問を設計するところに難しさを感じていたところ、
最近のリニューアルでAIが簡単に質問設計のたたきを作ってくれるように変わりましたよね。誰もが気軽に調査分析してマーケティングできる環境にまた近づいたと感じました。
――うれしいお言葉をありがとうございます。エンジニアに伝えておきます。
花井:一つだけ改善をお願いしたいのは、表示スピードがもう少し早いと嬉しいです。時間がかかると「ちょっとあのデータも見てみようかな」という流れがストップしてしまいます。
堤:そうなんだよね。遊び感覚でよいのでタレントやアニメなど色々なデータをみて、発想を膨らませてほしい。楽しみながら、データになれて欲しいので、表示のテンポが重要だと感じています。
――わかります。「データを楽しめるテンポ」が重要です。表示スピードに関しては私たちも重要項目にしており、プロダクトチームがずっと動いており、実はすでにテスト環境で確認も出来ています。お見せしますね。
堤:え。そうなの?おおおおっ!確かに早いね!
―たくさん良い話を聞かせていただきありがとうございます。最後に今後の展望とKnownsに期待することを教えていただけますか?
花井:多くの企業や団体において、事業成長のためにはデジタル実装とデータ活用が欠かせないはずです。昭和男を自認する私も、旧来のKKD(勘と経験と度胸)に頼るスタイルではなく、データドリブンの重要性が身に染みました。わずか半年で。また、それらを使いこなせる人材を組織内にきちんと確保・増強していかなければなりません。
当社は数十万のファーストパーティーデータを所持しております。ユーザー皆さまへの適切な情報発信と利便向上のほか、当社収益策への活用も模索中です。その際、Knowns 消費者リサーチで得られた消費者インサイトとの掛け合わせなどで、何か面白いことができそうだなとワクワクしているところです。