顧客~社会に寄り添う企業と40年間増え続けるあの人気商品を分析


こんにちは。ベトナム在住ライターの寺内です。

お正月から悲しいニュースが多く、心痛む新年の幕開けとなってしまいました。

このたび石川県能登地方を震源とする大規模地震により犠牲となられた方々に心よりお悔み申し上げるとともに、被災されたみなさまにつきましては一日も早く日常生活を取り戻せるようお祈り申し上げます。

これから状況が良くなっていくと信じて、私は私ができることに精進していきたいです。

今回の震災で東日本大震災のことを時々思い出し、悲しくなることも多いのですが、勇気づけられたのが“山崎製パンの緊急食糧支援”のニュースでした。

当時私は東京にいたのですが、その時も山崎製パンは自社のトラックを使って食糧の緊急輸送をしており、ニュースやXで“リアルアンパンマン企業”と言われていた記憶があります。

今回はそんな山崎製パンに敬意を表して、分析記事を書きたいと思います。

製造~販売まで手掛ける山崎製パン

山崎製パンの歴史

「山崎製パン株式会社」は1948年飯島藤十郎社主によって創業されました。

戦後の食糧難の中で、新宿中村屋の大旦那、相馬愛蔵氏の唱える「商業道」に導かれた飯島氏は「良品廉価・顧客本位」の精神に徹した製品とサービスを提供し成長・発展してきました。

また、欧米の先進機械設備を導入するとともに世界各国の優れた製品を日本の市場に導入し、日本の製パン業界の水準を欧米の水準に引き上げること・日本の食生活、食文化の向上に目標に事業を推進しました。
現在、ヤマザキパングループは創業以来70年以上を経てパン、和菓子、洋菓子をはじめビスケット、キャンディー、チョコレートなど製菓類や、米飯、調理パン、麺類など高品質でバラエティー豊かな商品を製造しています。

参考:山崎製パンのバリューチェーンを支えるIT基盤―計算センターの“戦略と実践” / IT Leaders

さらにコンビニエンスストアの「デイリーヤマザキ」地域密着型小売店の「ヤマザキショップ」、ベーカリーカフェの「ヴィ・ド・フランス」等の自社業態店も展開しています。

また、創業時より“自分で作って、自分で運び、自分で売る”というビジネスモデルを一貫しています。

製品を作っているだけではなく、生産した製品を運ぶ「物流部門」そして自分でも販売する「販売部門」も設けています。

参考:数字で知るヤマザキ / 山崎製パン

そして現在全国に2万人の従業員、工場は全国に26カ所にあるそうです。

ヤマザキパンで特に人気のパンは?

■ポジショニング分析MAP_菓子パン 満足率×認知率(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:認知・好感・満足度ポジショニング分析MAP_菓子パン 満足率×認知率

■ブランドデータ_ランチパック 認知率・好感率(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:ブランドデータ_ランチパック 認知率/好感率

まず菓子パンの満足率x認知率を調べると、認知率・満足率が最も高いのが「ヤマザキ ランチパック」でした。​特に認知率は90%近く、圧倒的に認知度が高いことが特徴です。

人気商品・ランチパックの歴史

「ランチパック」は1984年に開発され、今年で発売から40年を迎えるロングセラー商品です。

食パンのおいしさをより多くのお客様に味わっていただきたいとの思いから、いつでもどこでも、手軽に食べられる形状のパンを販売したい、という思いから開発されました。

参考:ランチパックヒストリー / ランチパックスペシャルサイト

 「ランチパック」の特徴といえばしっとりで柔らかな食パン。

「ランチパック」に使用する食パンは、山崎製パンが開発した独自の製法で製造しており、今でも改良を重ねています。

パンのスライス面のキメが細かいので、よりジューシーな具材をサンドすることができるそうです。時代とともにパッケージのリニューアルも行われています。

この技術のおかげで様々な具材が入ったランチパックを食べることができるんですね!

ランチパックの購入者層分析

■デモグラフィック分析_ランチパック 現在購入層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:デモグラフィック分析_ランチパック 現在購入層

ランチパック購入者のデモグラ構成比をみると20代~50代前半が多く、特に30代前半の割合が高く出ています。

男女比では女性が多いです。

■7 Journey_ランチパック(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:7 Journey_ランチパック

「ランチパック」の7 Journeyを見てみると、認知率が高く、ロイヤル層の顧客がとても多いことが分かります。

■ファネル分析_ランチパック(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:ファネル分析_ランチパック

ファネル分析では認知からの購入意向も89.5%と高く、また現在購買⇒リピート意向は98.3%とリピーターも多いです。​​

強いて言うのであれば、やや好意的ではありますが最近購入していない​​巻き戻し層が少し高めです。

どんな人に買われている?

■サイコグラフィック分析_ランチパック 現在購入層・個人価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:サイコグラフィック分析_ランチパック 現在購入層/個人価値観

■サイコグラフィック分析_ランチパック 現在購入層・社会価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:サイコグラフィック分析_ランチパック 現在購入層/社会価値観

■サイコグラフィック分析_ランチパック 現在購入層・消費価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:サイコグラフィック分析_ランチパック 現在購入層/消費価値観

サイコグラフィック(現在購入有)を見てみると、個人価値観は“倹約家”に次ぎ“八方美人”“報われ待ち”な方が多いです。

社会価値観は“自分より家族優先””ワーカホリック”“正義マン”と、家族との繋がりや仕事を大事にする人が多いのでしょうか。

消費価値観は“お得感重視消費”“トレンド・限定重視消費””リターン期待型消費”が高いです。

セールやクーポンでものをよりお得に購入したい、話題性のあるものや限定品、コスパを重視する傾向があるようです。

ランチパック40年の人気の秘密は?

■ワードクラウド_ランチパック アンケート回答者全体(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:ワードクラウド_ランチパック アンケート回答者全体

■商品・サービスへの意見_ランチパック(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:商品・サービスへの意見_ランチパック アンケート回答者全体/注目の意見

※絞り込み条件:アンケート回答者全体・注目の意見

「ランチパック購入者」のワードクラウドを見ると“種類”に関する文字が目につきます。

また購入者の注目の意見でも、手軽さや美味しさに関する意見の他、種類の多さや期間限定・ご当地商品に関する声も多かったです。

技術面で実現できる強みがそのまま注目の意見に反映されていますね!

なかでも人気の味はどれ?

参考:数字で知るランチパック / ランチパックスペシャルサイト

ランチパックシリーズでの一番の売れ筋は、「たまご」「ピーナッツ」「ツナマヨネーズ」の定番3商品だそうです。

「ピーナッツ」は1984年の販売当時からある定番味で、老若男女問わず人気があるそうです!私もランチパック=ピーナッツのイメージがあります。

累計2000種類!?驚異のラインナップ

1秒間に12.3個売れているというランチパックは、毎月いろいろな種類の商品が登場しています。

人気商品やご当地料理、キャラクターとのコラボもあり、定番商品と合わせて毎月40~60種類のラインナップがあるそうです。発売中の商品については、ランチパック公式サイトで確認できます。

参考:6月から、全パッケージをフルリニューアル!ランチパックの新パッケージに注目! / パンキジ ヤマザキ

2024年1月にはボリューミーな食べ応えが特徴で通常のランチパックに使用している食パンよりも厚切りのパンを使用「たっぷり満足シリーズ」、3つもしくは4つの味が楽しめることが特徴の「バラエティーシリーズ」、国産果実のジャムを使用した「NIPPON FRUITS PACKシリーズ」から新製品を展開しています!
どれも美味しそうですね!購入者の注目の意見でもありましたが、バラエティーシリーズはお得感がありますよね。

参考:発売中の商品 / ランチパックスペシャルサイト

好評だったムック本

2022年4月と11月にはムック本、『みんな大好き! ヤマザキ ランチパックBOOK』(株式会社宝島社)が発売され、開発秘話やランチパック図鑑、キャラクターについてなど、ランチパックの魅力が詰まった1冊になっており、ファンに好評だったそうです。

サイコグラフィックでも“モノ重視”の方が多かったので、ファン層に合った企画だったのかもしれません。

特別付録には「ほんものみたいなダブルポーチ」が付いており、ランチパックのパッケージがそのままデザインされた透明ビニールポーチと、ふわふわの食パンポーチがセットになっています。

そしてそんなムック本がミニチュア化した、「豆ガシャ本 みんな大好き! ヤマザキ ランチパックBOOK」(1回 500 円・税10%込、全4種)が2023年12月第5週から順次、全国のガシャポンバンダイオフィシャルショップや、玩具売り場、量販店、家電店などに設置されたガシャポン自販機シリーズにて発売されています。

推しのぬいぐるみなどに持たせても可愛いサイズ感だなと思いました!

切り離したパン耳部分はラスクに!

ランチパックを作るときにできるパンの耳は、食品ロス削減の商品コンセプトを元に、2012年4月より「ちょいパクラスク」として販売されています。パッケージもランチパックシリーズと統一されており、可愛らしいですね。

以前はパン耳は飼料用に販売されていましたが「ちょいパクラスク」が好評だったため、山崎製パンではパンの耳等の未利用食料のさらなる有効活用に取り組んでいるそうです。

参考:ちょいパクラスク / ランチパックスペシャルサイト

まとめ

「ランチパック」購入者の特徴

  • 20代~50代前半、女性に人気
  • 倹約家・八方美人・報われ待ち
  • 家族との繋がりや仕事を大事にする人が多い
  • お得感・トレンドや限定品・コスパを重視した消費傾向

40周年を迎え、愛される定番商品だけでなく、どんどん新商品が開発されているランチパック。

ご当地限定も商品もたくさんあるので、旅行の際にも購入してみたいと思いました。

業界トップの山崎製パン

■パン業界 売上高&シェアランキング

出典元:業界動向リサーチ パン業界 売上高&シェアランキング(2021年-2022年) https://gyokai-search.com/4-pan-uriage.html

※出典元:業界動向リサーチ パン業界 売上高&シェアランキング(2021年-2022年)

2023年の業界動向リサーチ​​のパン業界売上高&シェアランキングを見てみると、山崎製パンが独走状態であることがわかります。

製パン業界No.1になれたのは、エンジニアの技術力により品質の追求や生産現場を安定稼働できているからとのことです。

また前述した​​、創業時より「自分で作って、自分で運び、自分で売る」というオンリーワンビジネスモデル​​もトップを独走できる理由なのではないでしょうか。

参考:パン業界のランキングや動向、現状などを研究 / 業界動向リサーチ

ランチパック以外にも人気の商品は盛り沢山

山崎製パン公式サイト「パンキジ」の2022年ヤマザキの菓子パン売上ランキングによると、意外にもランチパックは4位から登場しています。

参考:2022年の振り返り企画!2022年ヤマザキの菓子パン売上ランキング / パンキジ ヤマザキ

1位の「まるごとソーセージ」​​は1987年発売のロングセラー商品で、9年連続​​で1位に選ばれているそうです。 

「コッペパン(ジャム&マーガリン)」と「薄皮つぶあんぱん」の順位は入れ替わりはありますが、「まるごとソーセージ」を含めたTOP3の顔ぶれは3年連続で同じだそうです。

しかしトップ10にランチパックシリーズは3商品ランクインしているので、やはり根強いファンがランチパックにもいそうです。

山崎製パン公式Xではいちごのシーズン到来ということで 新商品とロングセラー商品の新旧対決が行われていました。​​新旧どちらも美味しそうで、悩ましいですね。

また山崎製パン公式サイト「パンキジ」ではパンのアレンジレシピや豆知識など、読んでいて楽しいのでお勧めです!

災害時の緊急食糧支援とは

今回山崎製パンに着目しましたが、日本で大規模災害が起きた場合、多くの企業が食料に限らず日用品などを被災地に届けています。

参考:能登半島地震、ヤマザキパンの食糧支援に称賛の声…実は政府からの救援要請 / Business Journal

これは企業が独自に行なっているわけではなく、日本の内閣府の政策で、「プッシュ型支援」と言われています。

参考:内閣府 防災情報のページ

今回の能登半島地震では農林水産省から、業界団体であるパン工業会に対して食糧支援の要請があり、加盟している大手メーカーはそれに応えるかたちで食糧支援を行なっているので、山崎製パン以外のメーカーも提供されています!
数々の大企業が行うプッシュ型支援の中でも山崎製パンの動きが特に迅速なのは、前述のように創業時から「製造・物流・販売」の自社一貫体制、そしてすぐに行動する社風・社内体制だと思います。

参考:大規模災害時の緊急食糧支援 / 山崎製パン

山崎製パンは40年以上前に、当時のパン工場としては国内最大・最新鋭であった武蔵野工場を失火により全焼する経験をしており、人的被害は奇跡的になかったものの、大手スーパー各社などから注文を受けた大量の製品が生産・供給できなくなるという会社存亡の危機に直面したそうです。

その際、武蔵野工場の受注分を関東周辺の各工場が昼夜フル回転でカバーし、火災から3日目には代替生産を軌道に乗せて、通常通りの受注と供給が出来るようにしました。

その経験から、1995年の阪神・淡路大震災であり、2011年の東日本大震災での緊急食糧支援をはじめ、2016年の熊本地震の際は自社工場も被災しましたが、そつなく緊急食料支援を行っています。

自社工場の稼働を、全社を挙げてバックアップすることと独自配送が、政府並びに各自治体から求められた山崎製パンが被災地への緊急食糧の供給を迅速に行えるのでしょう。

参考:山崎製パンはなぜ、災害時の緊急食料支援に強いのか《Editors’ Picks》 / ダイヤモンドオンライン

消費者リサーチ