担当者の愛だけじゃない?缶コーヒー×アニメの意外な共通点
こんにちは。ベトナム在住ライターの寺内です。
私はガシャポンや競走馬グッズについてSNSでよく調べているのですが、先日こんなコラボを発見しました!
「BOSS」と「ウマ娘」のコラボです!
■ポジショニング分析MAP_缶コーヒー 満足率×認知率(Knowns 消費者リサーチ調べ)

今回のコラボを分析するにあたって、缶コーヒーの満足率x認知率を調べると、「BOSS」は認知率90%、満足率も75%を超えており、缶コーヒーカテゴリーでは1位に君臨していました。
業界1位の「BOSS」がなぜ「ウマ娘」とコラボしたのか、早速分析していきたいと思います!
サントリーBOSS
「BOSS」の缶コーヒーは元はUCC上島珈琲が製造していた「WEST缶コーヒー」の後継商品として1992年に誕生しました。
初代の「BOSS」は仕事の合間の一服として飲まれる“働く人の相棒”をコンセプトに、市場調査から1000種類以上の試作など約20ヶ月の期間をかけて開発されました。
理想の自分像として「BOSS」という名前になり、さらに相棒として人格化しやすいよう、おじさんのロゴマークが採用されているそうです。
その後時代や働き方の変化に合わせながら、様々な缶コーヒーを発売しました。
2022年8月に30周年を迎えた「BOSS」は、これまで500種類以上の商品を発売してきたそうです。
次世代向けの「クラフトボス」の登場もありましたが、缶コーヒーの「BOSS」も長年愛され続けています。
BOSSの人気商品は?
現在発売中の「BOSS」シリーズは地域限定品やココアなども含めて30商品ありますが、サントリー社内でも“四天王”と呼ばれている『レインボーマウンテンブレンド』『贅沢微糖』『ブラック』『カフェオーレ』の4商品が人気だそうです。
2004年にANACAFE(グアテマラ全国コーヒー協会)との提携により、厳選7エリアの高級認証豆を「レインボーマウンテン豆」と命名し、BOSSブランドの新たなるレギュラータイプの商品「 レインボーマウンテン ブレンド」を発売後、それぞれのユーザー層のニーズに合わせてカフェオレ、ブラック、微糖を加え4つのカテゴリーを商品化し、成功を納めています。
また2014年のコンビニコーヒーブームの際はブラジルの最高級豆を使用し、ブランド最高峰のコクを追求した「プレミアムボス」が発売され、20代から「BOSS」を飲み続け、缶コーヒーを愛してやまないヘビーユーザーにフィットしたそうです。
参考:缶コーヒー「BOSS」30周年 市場縮小にあらがうマーケの一手は? / 日経XTREND
上記四天王に加え、「プレミアムボス」を含んだ5種類が現在の主力商品だそうです。
今回のコラボに限らず、これまでもネットフリックスやゼルダの伝説など、さまざまなコラボも行っており、時代に合わせて消費者へのコミュニケーション実施を行っています。
参考:「BOSS」30周年 「働く人の相棒」として時代ごとのコミュニケーション実施 / 宣伝会議
購入者層分析
■ブランドデータ_BOSS 認知率・好感率(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■デモグラフィック分析_BOSS 現在購入層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

BOSS購入者のデモグラ構成比をみると30代後半〜50代後半と60代後半、特に40代後半の割合が高く出ています。
男女比では男性が多いです。
■7 Journey_BOSS(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■ファネル分析_BOSS(Knowns 消費者リサーチ調べ)

「BOSS」の7 Journeyを見てみると、認知率が高く、ロイヤル層の顧客も多いことが分かります。
ファネル分析では認知からの購入意向も77.4%と高く、現在購買⇒リピート意向は97.1%とリピーターがとても多いです。
そのなかでやや好意的ではありますが最近購入していない巻き戻し層や、知ってはいるけれど購入には至っていないきっかけ待ちの層が高めです。
どんな人に選ばれる?
■サイコグラフィック分析_BOSS 現在購入層・個人価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■サイコグラフィック分析_BOSS 現在購入層・社会価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■サイコグラフィック分析_BOSS 現在購入層・消費価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

サイコグラフィックを見てみると、個人価値観は“柔軟姿勢””結果至上主義””倹約家”な方が多いです。
社会価値観は“ワーカホリック””おりこうさん”と、真面目なビジネスパーソンが多い反面、“ゴーイングマイウェイ”な部分もあるようです。
消費価値観は“リターン期待型消費”に次ぎ、社会的問題にも目を向けている“エシカル消費”が高く出ています。
ウマ娘プリティーダービー
■ポジショニング分析MAP_スマホ用ゲーム 満足率×認知率(Knowns 消費者リサーチ調べ)

スマホ用ゲームの満足率x認知率を調べると、「ウマ娘 プリティーダービー」は満足率75%を超えており、認知度も60%以上と比較的高いです。
「ウマ娘 プリティーダービー(以下ウマ娘)」は、Cygamesが運営する育成シミュレーションゲームです。
参考:ウマ娘プリティーダービー 公式ポータルサイト / Cygames
実在する競走馬を擬人化した「ウマ娘」と二人三脚で「日本ダービー」「安田記念」など実在するレースに出走し勝利を目指す、競馬の要素を取り入れたゲームです。
実在する名馬のディテールを再現したキャラクターだけでなく、実際の競馬の歴史・競馬場などの要素を盛り込んだストーリーなどでゲーム性やシナリオも充実しており、競馬ファンもうならせる細かなこだわりが人気となっています。
漫画、アニメなどのメディア展開も行われ、アプリは2022年4月に1400万ダウンロードを突破し、日本ゲーム大賞2021優秀賞を受賞しています。
利用者層分析
■ブランドデータ_ウマ娘 認知率・好感率(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■デモグラフィック分析_ウマ娘 現在利用層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

ウマ娘利用者のデモグラ構成比をみると20代前半~40代前半が多く、特に20代前半〜30代前半と40代前半の割合が高く出ています。
男女比では男性が圧倒的に多いです。
■7 Journey_ウマ娘(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■ファネル分析_ウマ娘(Knowns 消費者リサーチ調べ)

「ウマ娘」の7 Journeyとファネル分析を見ると、現在購買(利用)⇒リピート意向は94.9%とリピーターが多いです。離反率も低いことから一定のファン層がいることがわかります。
知ってはいるけれど利用には至っていない潜在顧客層が高めです。
どんな人が利用してる?
■サイコグラフィック分析_ウマ娘 現在利用層・個人価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■サイコグラフィック分析_ウマ娘 現在利用層・社会価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■サイコグラフィック分析_ウマ娘 現在利用層・消費価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

サイコグラフィックを見てみると、“八方美人””結果至上主義”“倹約家”な方が多いです。
また社会価値観は“おりこうさん””ワーカホリック”とBOSSと全く同じ結果が出ています。
“月曜恐怖症(週末謳歌)”な方が多いのは休日は趣味に没頭されている方が多いのかもしれません。
そして消費価値観は“ステータス消費””リターン期待型消費”“ネタ消費”が高いので、自分が価値を感じるものやコスパの良いもの、話題性のあるものに消費行動を起こす傾向がありそうです。
個人価値観の”結果至上主義””倹約家”、社会価値観の”おりこうさん””ワーカホリック”、消費価値観の“リターン期待型消費”と「BOSS」と「ウマ娘」には共通する項目が多いです。
では何故今回「BOSS」が「ウマ娘」とコラボをしたのか、深掘りしていきたいと思います。
なぜウマ娘とコラボ?
CMやキャンペーンで話題だった「BOSS」
缶コーヒーのBOSSといえばオリジナル・ジャンパー「ボスジャン」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
1993年から始まったこのプレゼント企画、「初代ボスジャン」のキャンペーンの当選者は2万人だったそう。
2017年の初代ボスジャン復刻の際には広告にて「初代ボスジャンを実際に持っている人」に情報提供を呼びかけ、約300人のボスジャンの持ち主から情報が寄せられたそうです!
また1993年のCMには日本ロック界の第一人者である矢沢永吉さんを起用しています。
当時、ほとんどテレビ出演していなかった矢沢さんがCMで冴えない中年男を演じるというインパクトも「BOSS」の知名度アップに繋がりました。
BOSS担当者のウマ娘愛からコラボ
2022年からスタートした「BOSS」と「ウマ娘」のコラボですが、実はBOSS担当者の方が熱狂的なウマ娘ファンであることがきっかけだそうです!
「BOSSは『働く人の相棒』として長年、沢山の方に愛飲されてきた。働く人。それは全力で走っている人。つまり実質ウマ娘じゃないか」
との発想から上司にプレゼン・説得をし、実現したコラボだそうです。
さらにウマ娘ファンのBOSS担当者の「#愛の1万字広告」は交通広告でも展開され、SNSでは担当者の想いの強さや文章の多さから“怪文書”と話題になりました。
参考:担当者が個人的に好きすぎて!?BOSSウマ娘キャンペーンの広告が話題に / アニ×コラ×ビズ
BOSSとウマ娘の共通点とは?
今回のウマ娘との第三弾コラボは「働く人の凱旋を讃(たた)えたい」というコンセプトです。
“仕事に勝って帰ってきた(=凱旋した)人に一息ついてほしい”という願いが込められおり、GⅠボスジャンを着用しながら全力で駆け抜ける姿を書き下ろした全6種のウマ娘(エルコンドルパサー、サトノダイヤモンド、ゴールドシップ、マンハッタンカフェ、ナカヤマフェスタ、シリウスシンボリ)が描かれた新商品「ボス 凱旋の一服」を2月6日(火)から発売しています。
さらに「GⅠボスジャン」や全74種の「コラボTシャツ」が当たります。
参考:「BOSS」と「ウマ娘 プリティーダービー」のコラボ第3弾!全6種の描きおろし限定デザイン「ボス 凱旋の一服」新発売! / サントリー
また今回のコラボを記念して、主力5商品「ボス レインボーマウンテンブレンド」「ボス 贅沢微糖」「ボス 無糖ブラック」「ボス カフェオレ」「プレミアムボス」を「ウマ娘 大集合コラボ缶」として一斉リニューアルします。
パッケージはオリジナルメダル風に仕上がったウマ娘が各商品にデザインされており、コーヒー豆は、世界中から厳選した未熟豆や欠点豆が最も少ないG1豆を使用し、フレンチローストすることで豊醇な味わいが引き出されているそうです。
“凱旋”や“G1”など、目指しているコンセプトがBOSSとウマ娘はあっているのかもしれません。
ブランドイメージは真逆?
■イメージ分析_BOSS 現在購入層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■イメージ分析_ウマ娘 現在利用層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

またサイコグラフィックでは類似点が多い結果でしたが、「BOSS」と「ウマ娘」の現在利用者のブランドイメージを見ると、イメージが真逆なことがわかります。
お互いにないイメージを持つもの同士のコラボで、消費者に新たな印象や認知・購入のきっかけを与えているのかもしれません。
まとめ
「BOSS」購入者の特徴
- 40代後半、男性に人気
- 柔軟姿勢・結果至上主義・倹約家
- ワーカホリック・おりこうさん・ゴーイングマイウェイ
- リターン期待型消費・エシカル消費の傾向
「ウマ娘」利用者の特徴
- 20代前半〜30代前半と40代前半、男性に人気
- 八方美人・結果至上主義・倹約家
- おりこうさん・ワーカホリック・月曜恐怖症
- ステータス消費・リターン期待型消費・ネタ消費の傾向
今回、両者デモグラでは同じような世代の消費者が多く、男性からの人気が高い結果でした。
一方で一致していない価値観については、BOSSを買おうか検討している「チャンス層」に視点を変えると興味深いデータが見られました!
■サイコグラフィック分析_BOSS チャンス層・消費価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

BOSSチャンス層の消費価値観は上位から
- ネタ消費
- トレーサビリティ重視消費
- レビュー熟考消費
となっています。
同じネタ消費傾向のあるウマ娘現在利用者がSNSで発信をしてくれれば、それがBOSSチャンス層のネタ消費・レビュー熟考消費を刺激し、双方のブランドイメージも真逆ながら話題にあがりやすくなるという戦略なのかもしれません。
またBOSSのチャンス層は「トレーサビリティ重視消費」の傾向もあります。
作り手の顔やこだわりが見えることを好むので、「#愛の1万字広告」によって担当者の人柄やウマ娘愛が伝わり、好感を得るきっかけとなる可能性がありそうです。
今回のコラボによって、ウマ娘に興味をもったBOSSのチャンス層のコレクター魂に火がつけば、「BOSS」と「ウマ娘」の相互利益に繋がりそうですね。