覚醒より“リフレッシュ”を。コーヒー派も紅茶派も満足のアレを分析
こんにちは。ベトナム在住ライターの寺内です。
突然ですがみなさんは缶コーヒーのBOSSとクラフトボスであればどちらを購入されますか?
■ポジショニング分析MAP_コーヒー飲料(ペットボトル・紙パック) 満足率×認知率
(Knowns 消費者リサーチ調べ)

前回BOSSの分析で「クラフトボス」についての記事を多く見かけ、「BOSS」とどんな違いがあるのか調べたくなったので、今回は認知率が比較的高い「クラフトボス」について分析してみたいと思います!
クラフトボス誕生秘話
2017年4月にサントリー食品インターナショナルより発売されたのがペットボトル入りコーヒー「クラフトボス」です。
2013年よりコンビニで本格コーヒーが100円で発売開始し、2015年には「ブルーボトルコーヒー」をはじめとした、豆や焙煎、ハンドドリップにこだわった本格コーヒーが好まれるサードウェーブコーヒーブームが到来しました。
そして新しく生まれたコーヒー文化の中で缶コーヒーが埋もれないよう市場調査を重ねた結果、コーヒーを好きな若い世代はコーヒーに「爽快感」を求めており、缶に対する拒否感が強く、コンビニコーヒーのプラスチック容器には新鮮な印象を持っていることが分かったそうです。
調査では若者は缶飲料に対して「中身が古そう・おいしくなさそう」といった長期保存できる缶詰と同じ印象があり、実際過去にはペットボトルのコーヒーも販売されていましたが、醤油のような見た目と言われて売れなかったそうです。
その経験から”ペットボトルのブラックコーヒーは売れない”という暗黙の常識が業界全体に存在していました。
しかし、ボスブランドは消費者の要望に応えるコーヒーの発売を目指し、この常識を覆す大きな挑戦として、ペットボトルコーヒーも販売に踏み切りました。
参考:クラフトボスはなぜ売れた? 若者離れの危機を救った新マーケティング戦略 / マーケターブログ
また従来の缶コーヒーの「BOSS」は、現場で働く人が短い休憩時間に“覚醒”するための相棒として長年愛飲されてきましたが、働き方の多様化に伴い、ゆっくりと時間をかけて飲める“新しい相棒”をコンセプトとして登場したのが「クラフトボス」です。
クラフトボスの特長
「クラフトボス」はゆっくり飲めるよう、コーヒーの苦さを我慢せずにすっきり飲める味に設計しているそうです。
香りの高さを感じさせつつも、苦みを抑えており、従来の缶コーヒーの愛飲者たちにはやや薄味で物足りなく感じるぐらいをあえて狙っているようです。
参考:苦くない、透明ペット…。若者を捉えた「缶じゃないBOSS」 / 日経XTREND
容器は、コンビニコーヒーのようなフレッシュさとデスクに置いたときに心地よさや気楽さを感じられるよう、レトロなガラス瓶をモチーフにした透明ペットボトルを採用しています。
また世代・職種を超えて幅広い人に選ばれるよう、コーヒーシリーズ・紅茶シリーズだけでなく、フルーツオレや抹茶ラテなどラインナップも充実しています。
購入者層分析
■ブランドデータ_クラフトボス 認知率・好感率(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■デモグラフィック分析_クラフトボス 現在購入層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

クラフトボス購入者のデモグラ構成比をみると30代後半~50代前半が多く、特に40代前半が多く出ています。
男女比では男性が多いです。
■7 Journey_クラフトボス(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■ファネル分析_クラフトボス(Knowns 消費者リサーチ調べ)

「クラフトボス」の7 Journeyを見てみると、認知率はそれほど高くありませんが、ロイヤル層の顧客が多いことが分かります。
ファネル分析では認知からの購入意向も80.5%と高く、また現在購買⇒リピート意向は96.3%とリピーターが多いようです。
そのなかでやや好意的ではありますが最近購入していない巻き戻し層がやや高めです。
どんな人が購入してる?
■サイコグラフィック分析_クラフトボス 現在購入層・個人価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■サイコグラフィック分析_クラフトボス 現在購入層・社会価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■サイコグラフィック分析_クラフトボス 現在購入層・消費価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

サイコグラフィックを見てみると、個人価値観は“柔軟姿勢””倹約家””どんぶり勘定”な方が多いです。
社会価値観は“ワーカホリック””正義マン”“マインドフリー”と、真面目なビジネスパーソンに多く利用されているのでしょうか。
消費価値観は“コスパ消費”に次ぎ、“直感消費”が高いです。
企画当初のターゲット層がITワーカーだったことも、サイコグラフィックの結果に合ってる気がします。
コーヒーだけじゃないクラフトボス
コーヒーだけに限らず、紅茶やフルーツオレなどラインナップが豊富な「クラフトボス」ですが、消費者にはどの商品が人気なのでしょうか?
CCCMKホールディングスが実施した調査で、全国15~69歳の男女が2021年8月1日~2022年7月31日の期間に購買した「コーヒー・紅茶」カテゴリーに関する購買商品ランキングの結果によると、男女総合では「クラフトボス ブラック」「クラフトボスティー」「クラフトボス ラテ」がランクインしていました。
上位3位が「クラフトボス」シリーズと、クラフトボスの人気が伺えます。
男性はコーヒー、女性は紅茶?
性別ごとにランキングを見ると、男性はコーヒー系(赤色)が多く、女性は紅茶系(青色)が多くランクインしています。
男性はコーヒー派、女性は紅茶派が多いのかもしれません。
参考:【1歳刻み!約7,000万人の購買商品ランキング】「コーヒー・紅茶」男女総合ランキング!1位はサントリー「クラフトボス ブラック」! / CCCMKホールディングス株式会社 / PRTIMES
またLINEリサーチの日本全国の15歳~59歳の男女を対象に、コーヒー・紅茶の人気や楽しみ方について調査によると、全体では約7割がコーヒー派、約3割が紅茶派という結果になっています。
男性、女性ともにコーヒー派が多く、特に男性は7割強となっています。
また、年代があがるにつれてコーヒー派が増える傾向があり、50代の男女ではコーヒー派が7~8割と出ています。
一方紅茶派は女性が多く4割弱となっています。紅茶派は特に女性の10代・20代に多く、コーヒー派を上回っていることがわかります。
参考:コーヒー派?紅茶派?どっちが多い? / LINEリサーチ
どんな時にコーヒー・紅茶は飲まれる?
どんな時にコーヒーや紅茶を飲むかについては、コーヒー派、紅茶派ともに「仕事/勉強/家事などの合間・休憩しているとき」、「くつろいでいる・のんびりしているとき」、「リラックスしたいとき」が上位にきています。
コーヒーは紅茶にくらべ、仕事・勉強など何か作業をしている合間に飲まれることが多く、また「眠気ざましをしたいとき」「朝起きたとき」や「集中したいとき」がランクインしているのも特徴です。
紅茶は「くつろいでいる・のんびりしているとき」「リラックスしたいとき」と、リラックスタイムで飲まれる傾向があるようです。
「おやつのとき」「食事のとき」もランクインしており、紅茶は様々な食事のシーンでも好まれるようです。
参考:コーヒー派?紅茶派?どっちが多い? / LINEリサーチ
クラフトボスの人気の理由は?
■ワードクラウド_クラフトボス 現在購入層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■商品・サービスへの意見_クラフトボス 現在購入層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

「クラフトボス」現在購入者のワードクラウドや意見を見ると、コーヒー・紅茶に限らず種類の多さに関する意見が多いことがわかります。
また、500mlの容量の多さやあえて苦みやコクは控えめである風味についてのコメントもありました。
ペットボトル商品による、ゆっくりと時間をかけて飲める仕様なのもサイコグラフィックの特徴に出ている“倹約家”や“コスパ消費”にマッチしている商品なのだと思います。
参考:クラフトボスの「クラフト感」って? ブームだけじゃないヒットの理由 / CBOメディア
そして近年ではビールやチョコレートなどでも“クラフト”とついた商品が人気になっており、“クラフト”=手作り感やこだわりあふれる商品のイメージがある方は多いのではないでしょうか。
実際に「クラフトボス」も容器は透明ペットボトルで、“クラフト”と聞いて私たちが連想する、木工の家具やクラフト紙のベージュ色を使用しています。
サイコグラフックでは“ジャケ買い消費”は低かったものの、見た目からわかりやすいパッケージデザインが、“直感消費”の方々に合っているのかもしれません。
■イメージ分析_クラフトボス 好感あり(Knowns 消費者リサーチ調べ)

クラフトボスに好感がある人のブランドイメージでも「リラックス・リフレッシュ」に次ぎ、「深み渋み・落ち着いた」や「カリスマ性がある」がコーヒー飲料全体の平均(赤丸)よりも高く出ていました。
LINEリサーチの結果では一般にはコーヒー派が総じて多く、「自分をON」にしたいときに飲む統計が出ていましたが、クラフトボスの特長が多くの人に浸透しているのだと思います。
クラフトボスと言えば、個性的なTVCMも印象的です。
■CM一覧_クラフトボス(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチに登録されているクラフトボスのCM一覧を見ると、理解率・好感率ともに高いことがわかります。
■CMイメージ_「宇宙人ジョーンズ・町おこし」篇(クラフトボス)(Knowns 消費者リサーチ調べ)

最新作には平手友梨奈さんが起用されており、CMイメージも平均と比較して“カジュアル・プチリラックス”“リラックス・リフレッシュ”が高く出ており、クラフトボスのコンセプトに合っていますね。
もともとは缶コーヒー文化を支えようと行なった調査でしたが、それによりクラフトボスの「ゆっくりと時間をかけて飲める“新しい相棒”」のコンセプトは誕生し、ボトル形状や風味、CMなど様々な媒体を通して幅広い消費者に寄り添っているようです。
それに加え商品ラインナップの多さも、コーヒー派・紅茶派、それ以外も取りこぼすことなく消費者の心をつかむことに成功しているのでしょう。
まとめ
「クラフトボス」購入者の特徴
- 40代前半、男性が多い
- 柔軟姿勢・倹約家・どんぶり勘定
- 真面目なビジネスパーソンに利用される
- コスパ消費・直感消費の傾向
「クラフトボス」は世代・職種を超えて幅広い人に選ばれるようラインナップが豊富なだけでなく、クラフト感のあるパッケージデザインから長時間作業しながら飲むことができるテイストとボリュームが人気の理由であることがわかりました。
■ブランドスイッチ分析_クラフトボス(Knowns 消費者リサーチ調べ)

ブランドスイッチ分析を見てみると、「クラフトボス」現在購入者が他に選ぶ商品として「雪印コーヒー」や「グリコカフェオーレ」が選ばれています。
過去購買でも「雪印コーヒー」「グリコカフェオーレ」が上位にきており、どちらも発売当初から紙パックのコーヒーで、やはり缶コーヒーを好まない層に選ばれているようです。
商品特徴としてはどちらも乳飲料の商品で、濃いコーヒーというよりもミルク感が強い=クラフトボスと同じことがわかります。
また「雪印コーヒー」は1963年発売、「グリコカフェオーレ」は1979年発売と歴史の古いコーヒーで、クラフトボス現在購入者の消費価値観のサイコグラフィッックで3位に上がっている“ノスタルジー消費”にもマッチしています。
みなさんは長時間作業の相棒にはどんな飲み物を何を選ばれますか?
消費者リサーチ