話題になったあのブームを分解。子どもから大人まで支持されるわけ


こんにちは。ベトナム在住ライターの寺内です。

みなさんは“ミロ活”をご存知ですか?

私はかなりの低血圧で、朝ごはんもなかなか食べられない(食べると眠くなって動けなくなってしまう)のですが、そんな話を親友にしたところ、“ミロを飲むといい!”と言われ、半年ほど前から“ミロ活”をしています。

ベトナムや東南アジアでもメジャーなドリンクの「ミロ」。

今回はそんな「ミロ」について分析していきたいと思います。

ネスレ ミロ

ネスレ ミロの歴史

麦芽飲料「ミロ」は、1934年にネスレ オーストラリアの科学者トーマス・メインが開発しました。

製品名の由来は紀元前600年ごろのギリシャ神話に出てくるチャンピオンアスリート、Milon(ミロン)だそうです。

1935年からオーストラリアのスミスタウンにある工場で製造を開始し、80年以上たった今も「ミロ」の製造を続けています。


参考:ネスレの歩み | 企業情報 / ネスレ日本
https://www.nestle.co.jp/aboutus/global


日本では『強い子のミロ』をキャッチフレーズに、1973年に発売を開始しました。
今では世界30か国以上で販売されているネスレのロングセラー商品です。

ネスレ ミロの特長

「ミロ」の特長は、不足しやすいカルシウム、鉄という2種のミネラルと、6種のビタミンをバランスよく配合していることです。

水にも牛乳にも溶けるココア味で、ホットでもアイスでも飲むことができます。

また公式サイトによると、朝食と一緒に「ミロ」を飲むことで、朝食+野菜ジュースや朝食+牛乳よりも、もっと効率よく栄養を摂取することが可能とのことです。​​

「ミロ」と「ココア」の違いは「ミロ」は大麦飲料で、大麦飲料とは大麦が種子の中に発芽する際の必要な栄養を豊富に生成し、その大麦エキスを濃縮し主成分としている飲料です。

「ミロ」にはココアも含まれていますが、それに加えて、大麦エキスと2種のミネラルと6種のビタミンが含まれている点が普通のココアと違う点​​​​​​です。

また、水にも牛乳にも溶けるココア味で、ホットでもアイスでも飲むことができます。

開発者のメイン氏も93才で亡くなるまで毎日、カップ1杯の「ミロ」を飲んでいたそうです!

ネスレ ミロ購入者層分析

■ブランドデータ_ネスレミロ  認知率・好感率(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:ブランドデータ_ネスレミロ  認知率/好感率

■デモグラフィック分析_ネスレミロ 現在購入層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:デモグラフィック分析_ネスレミロ 現在購入層

ネスレ ミロ消費者のデモグラ構成比をみると30代前半〜50代前半が多く、特に40代後半が多く出ています。

男女比では女性が多いです。

■7 Journey_ネスレミロ(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:7 Journey_ネスレミロ

「ネスレ ミロ」の7 Journeyを見てみると、認知率がとても多いことが分かります。

■ファネル分析_ネスレミロ(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:ファネル分析_ネスレミロ

ファネル分析では現在購買⇒リピート意向が96.3%とリピーターがとても多いです。

一方その中でやや好意的ではありますが最近購入していない​​巻き戻し層も高めで、購入意向⇒現在購入​​の割合も低いのが気になります。

購入まで至ればリピーター率が高いので少し勿体無い気がしますね。

どんな人に買われている?

■サイコグラフィック分析_ネスレミロ 現在購入層・個人価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:サイコグラフィック分析_ネスレミロ 現在購入層/個人価値観

■サイコグラフィック分析_ネスレミロ 現在購入層・社会価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:サイコグラフィック分析_ネスレミロ 現在購入層/社会価値観

■サイコグラフィック分析_ネスレミロ 現在購入層・消費価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:サイコグラフィック分析_ネスレミロ 現在購入層/消費価値観

ネスレ ミロを現在購入している層のサイコグラフィックを見てみると、“倹約家””アウトドア派””健康志向”な方が多いです。

また社会価値観は“自分より家族優先””おりこうさん””ワーカホリック”と、正反対のクラスターが並んでいます。

認知率も高かったので、決まった価値観を持つ人々だけではなく、さまざまな職業や環境の方から好感を得ているのでしょうか。

そして消費価値観は懐かしいものを好む“ノスタルジー消費”に次ぎ、人や社会・環境に配慮した“エシカル消費”、そして人気の高い流行や限定品を好む“トレンド・限定重視消費”の傾向がありそうです。

ミロ ロングセラーの理由は“懐かしさ”?

■ワードクラウド_ネスレ ミロ(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:ワードクラウド_ネスレ ミロ アンケート回答者全体

※絞り込み条件:アンケート回答者全体

「ネスレ ミロ」のワードクラウドを見ると“子供”“美味しい””栄養”の文字が目につきます。

■商品・サービスへの意見_ネスレミロ(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:商品・サービスへの意見_ネスレミロ 注目の意見/アンケート回答者全体

※絞り込み条件:注目の意見のみ・アンケート回答者全体

ワードクラウドでも大きく出ていた“子供”“栄養”ですが、注目の意見でも「子供の頃から飲んでいる」「手軽に栄養(鉄分・カルシウム)が摂れる」という意見がとても多かったです。

長年愛される・リピーターが多い商品であり、子供の頃から飲んでいる人が多いので、現在購入者のサイコグラフィックの“健康志向”“ノスタルジー消費”“エシカル消費”にも合っていますね。

2023年には発売50周年を迎え、特設サイトも開設されていました。

発売当初は『強い子のミロ』をコンセプトに、CMなどでも販売促進されていましたが、現在は成長期の子どもだけではなく、大人にとっても必要な栄養素がしっかり含まれていることや、日本人に多い「乳糖不耐症」の方が牛乳ではなく、豆乳やヨーグルトでもミロが楽しめるレシピなども公開されています。

■ブランドスイッチ分析_ネスレミロ(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:ブランドスイッチ分析_ネスレミロ

また、ブランドスイッチ分析でも現在「ネスレ ミロ」を購入している方が別に購入したいと考えている飲料は上記のラインナップとなっており、栄養価の高いアーモンドミルクや豆乳など、ミロと合わせても楽しめる飲料がランクインしています。

■イメージ分析_ネスレミロ(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ: イメージ分析_ネスレミロ

「ネスレ ミロ」のイメージを見てみると、“家庭的・安堵感””ベーシック・定番的””ノスタルジー・懐かしさ”が上位に来ています。

他の飲料のイメージ平均(赤丸)に比べ、“ノスタルジー・懐かしさ”“青春・甘酢っぱい”が上位にきているのはネスレ ミロの特徴で、長年愛されてる・子供の頃から親しみのあるブランドであることが伺えます。

現在購入者のサイコグラフィックの結果とも合っており、現在購買⇒リピート意向が96.3%とリピーター​率が高いのもわかる気がします。

“ミロ活”で人気爆発

一時は販売休止の人気

そんな多くの人にとって懐かしのロングセラー商品であるミロの売り上げが、突然前年比約2倍に拡大したのは2020年7月でした。

売上急拡大のきっかけは、2020年7月に投稿された「体内の鉄分が平均の7分の1しかないと指摘されたがミロを飲んだことで平均値になった」という、貧血解消に関する個人ツイートだったそうです。

このツイートをきっかけに女性を中心に、貧血の悩みを持つ人たちの間でミロを飲んで貧血対策をする“ミロ活”という言葉が広く流布しました。

2020年9月末には主力商品の「ネスレ ミロ オリジナル240g」が売れすぎて一時販売休止になり、増産態勢を整え同年11月中旬に販売を再開したものの、販売休止中に入手できなかった人たちが殺到。

供給計画をはるかに上回る約7倍超(前年比数量ベース)の発注が続き、翌月の12月8日に今度は日本で販売する全てのミロが販売休止になりました。

その後生産態勢をさらに増強し、2021年3月1日の販売再開以降は安定供給ができており、売り上げは19年同期比の約3.5倍に拡大したそうです。

“ミロ活”による購入者層の変化

それまでは「子供のいる家庭」中心に「ミロ」は売れていたそうですが、“ミロ活”ブームをきっかけに栄養素の補給が目的と思われる「子供のいない人」の購買数が急増しました。

ネスレ日本によれば、直近のミロの購入世帯数は「子供のいない家庭」が「子供のいる家庭」を上回っているといえそうです。

“ミロ活”ブームで新商品を発売

大人の購入者層が増えたことにより、そんな大人たちの反響にこたえる製品として、ネスレ日本は2021年10月に甘さをひかえめにした「ネスレ ミロ オトナの甘さ」を発売しました。

糖質量が「ネスレ ミロ オリジナル」は9.8gであるのに対し、「ネスレ ミロ オトナの甘さ」は砂糖の一部を食物繊維に置き換えることで7.9gにしているそうです。

PRTIMESの「ネスレミロ オトナの甘さ」プレスリリースでもほぼ全ての年代の女性で、鉄の摂取量が不足傾向にあることがわかります。

カルシウム、鉄、ビタミンDなど、2種のミネラルと6種のビタミンをバランスよく含むこれまでの「ミロ」の特長はそのままに、「ミロ」の栄養素と食物繊維の相性の良さを特長としているので、毎日の健康習慣に取り入れやすい商品ですね。

■デモグラフィック分析_ネスレミロ(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ:デモグラフィック分析_ネスレミロ 現在購入層 / 子供の有無

※絞り込み条件:現在購入層・子供の有無

Knowns 消費者リサーチの現在購入者の子供の有無を見ると、子供がいる層がやや多いものの、そこまで差異はないことがわかります。

この結果から今までは子供や家族層メインの購入者層でしたが、“ミロ活”ブームや大人向け商品の展開により、やはりより広い世代や背景の人々から購入されるようになったと考えられそうです。

ブームを一過性で終わらせない

“ミロ活”ブームで改めてミロの栄養素が注目されたネスレは、その後もさまざまな認知度アップ戦略を展開しています。

2022年3月には、ミロとマグカップのセット購入と自身の鉄不足チェック判定が行なえる自動販売機「ミロ 鉄分お助け自販機」を「ネスカフェ原宿」に設置しました。

そして2022年8月には個室型ワークブース「テレキューブ」とコラボし、自身の鉄摂取量を数値で把握できる「ミロ 鉄分お助け テレキューブ」を、東京・丸の内で展開していました。

どちらも期間限定で現在は実施終了していますが、“鉄”摂取量チェックは現在も公式サイトで行うことができます。

■イメージ分析_ネスレ ミロ(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチ調べ: イメージ分析_ネスレ ミロ 現在購入層/女性/子供なし

※絞り込み条件:現在購入層・女性・子供なし

Knowns 消費者リサーチで≪女性・子供なし・現在購入者≫のミロのイメージをみてみると、前述したフィルターなしでのイメージとは異なり、“リラックス・リフレッシュ”“爽快元気・エネルギッシュ”が上位に来ています。

自分自身の健康やちょっとした気分転換のために購入する方が多いようですね。増えてきた消費者層に合わせて今後色んなバラエティのレシピやシリーズ商品が出てきたら嬉しいですね。

まとめ

「ネスレ ミロ」を買う人の特徴

  • 30代前半〜50代前半​​、女性が多い
  • 倹約家・アウトドア派・健康志向
  • さまざまな職業や環境の方に利用されている
  • ノスタルジー消費・エシカル消費・トレンド・限定重視消費

今回の分析で、「ネスレ ミロ」は元々“健康志向”“ノスタルジー消費”の購入者層のサイコグラフィックに合ったロングセラー商品でしたが、“ミロ活ブーム”により、多くの購入者層の取り込みに成功していることがわかりました。

今回SNSをきっかけに人気が再熱したのも、多くの人が知っている・飲んだことがある馴染みがあるロングセラー商品ならではだったからなのではないでしょうか。

また「ネスレ日本」自体もブームを一過性に終わらせず、これまでなかった「成人女性の鉄不足」にフォーカスしたコミュニケーション​​や、鉄をはじめとした特定の栄養素を手軽に摂ることができる“バランス栄養”という訴求を​​継続的にPRすることで、過去に購入していたが現在購入していない「巻き戻し層」や、知ってはいるが購入に至っていない「きっかけ待ち層」などに向け、さまざまなコンテンツでミロのアピールを行うことで、リピーターを増やしているのだと思います。

消費者リサーチ