他社と差別化するポイントを見つける|競合分析のコツと効率化
新製品の開発や事業戦略の立案において、競合分析(competitor analysis)は不可欠な要素です。しかし、ただ漠然と競合企業を分析するだけでは、効果的な戦略立案には至りません。
本記事では、競合分析のやり方の基礎から実践的な手順まで、経験豊富なマーケティングリサーチのプロフェッショナルの視点からわかりやすく解説します。
競合分析の基礎知識と重要性
競合分析はなぜ必要か
ターゲット市場で成功を収めるためには、自社の強みを活かした独自のポジショニングが不可欠です。
しかし、そのポジショニングを確立するためには、競合他社の動向を正確に把握し、市場全体を俯瞰的に理解する必要があります。
競合分析は、この市場理解と戦略立案の基盤となる重要なプロセスです。
特に近年のビジネス環境ではデジタル化の進展により市場トレンドの変化が加速し、新規参入も容易になっています。
そのため定期的な競合調査により業界動向を把握し、迅速な戦略の見直しを行うことがビジネスの成功に直結します。
「競合」の種類について
一言で競合といってもいくつかの種類があります。
そのなかでも抑えておくべき競合タイプは4種類です。直接競合がいないからといって競合分析が不要になるのではなく、あらゆる側面での競合を見定めていくことが重要です。
■競合分析の種類

直接競合 | 同じ製品やサービスを提供している企業 |
間接競合 | 同じニーズを異なる方法で満たす製品やサービスを提供している企業 |
代替競合 | まったく異なる製品やサービスだが、同じ顧客の予算や時間を奪い合う関係にある企業 |
潜在競合 | 現時点では競合ではないものの、将来的に市場に参入する可能性のある企業 |
競合分析をしないリスク
競合分析をしないと、以下のような問題・課題が起こる可能性があります。
- 市場の変化への対応の遅れ
- 競合他社への差別化要素の喪失
- 価格設定の誤り
- 新規参入者からの予期せぬ攻勢
- 顧客ニーズとのミスマッチ
定期的な競合分析を行わないことは、ビジネスの存続自体を危うくする可能性が高いです。自社を把握し、他社を知ることを前提に戦略的にブランド・商品を販売していくことが重要です。
競合分析の3つの目的
では実際にどのような目的をもって競合分析を実施するのでしょうか。
■競合分析の3つの目的

競合他社分析による差別化
競合他社の強みと弱みを正確に把握することで、自社の差別化ポイントを明確にできます。
そのためには以下のような分析を行います。
- 製品・サービスの特徴分析
- 価格戦略の比較
- マーケティング手法の調査
- カスタマーサービスの質の評価
- 技術力の比較
この分析により、競合企業が手薄な領域や、自社が優位性を持つ分野を特定し、効果的な差別化戦略を立案できます。
また競合を参考にすることで、より具体的な差別化ポイントを見出すことができます。
ポジショニングの明確化による戦略の仮説立案
市場における自社の現在のポジションを正確に把握し、目指すべき方向性を定めることができます。
これには主に以下のような手段をとることが多いです。
- 現在の市場でのポジショニング評価
- 目標とするポジショニングの設定
- ギャップを埋めるための戦略立案
- 実行計画の策定
- KPIの設定と進捗管理
明確なポジショニング戦略により、経営資源の効率的な配分が可能となります。さらに、市場シェアやベンチマークを設定することで、具体的な目標を持って戦略を実行できます。
市場理解による新規事業機会の創出
競合分析を通じて市場全体を理解することで、新たなビジネスチャンスを発見できます。
- 未開拓の市場セグメントの特定
- 顧客ニーズの変化の予測
- 新技術の導入可能性の評価
- パートナーシップの機会発見
- 新規サービス開発のヒント
特にデジタル化による市場トレンドの変化が激しい現在、この視点は極めて重要です。
競合分析の7ステップ実践ガイド
競合分析によるメリットや重要性がわかってきたところで、次はどのように実践していくべきなのかそのステップを紹介していきます。
■競合分析の7ステップ

Step1:競合の特定と分類
まずは競合を正確に特定し、適切に分類することが、効果的な分析の第一歩となります。
具体的な手順例:
- 市場定義の明確化
- 検索エンジンでの調査
- 業界データベースの活用
- 顧客インタビューの実施
- 展示会・イベント情報の収集
これらの情報を基に、前述の4つの競合カテゴリーに分類していきます。この業界ではここが大手だから競合である、など一つの側面のみで判断してしまうと正しいポジショニングも見つけられず無理な戦略・施策に繋がることがありますので注意しましょう。
Step2:情報収集と整理
競合に関する情報収集
一番シンプルで労力がかかる部分ですが、十分に情報収集をしておくことでその後の分析・戦略立案の質が上がります。
必要に応じて外部サービスなどを使って効率化もしましょう。
既存の競合データ閲覧と追加で新しい情報収集もできるKnowns 消費者リサーチのようなデータプラットフォームサービスもおすすめです。
フレームワークによる情報の整理
情報を収集したあとは、情報の粒度に合わせて整理をしないと分析の際にうまく使えません。競合分析をする際によく利用されるフレームワークをご紹介します。
3C分析
市場環境を包括的に理解するための基本フレームワークです。
以下の自社とその周囲を3つの要素に分けて分析します。
Customer(顧客) | Competitor(競合) | Company(自社) |
---|---|---|
ターゲット顧客の特定 | 競合他社の強み・弱み | 自社の強み・弱み |
詳しい実践方法や活用に関してはこちらの記事をご参考にしてください。
参考:3C分析実践ガイド|やり方・手順から活用のコツまで詳しく解説
SWOT分析
内部環境と外部環境を統合的に分析するフレームワークです。
4つの要素に整理し、事業の現状や課題を把握することで戦略の策定やマーケティングの最適化などに活用できます。
詳しい実践方法や活用に関してはこちらの記事をご参考にしてください。
参考:SWOT分析とは?基礎からブランド戦略への実践的活用法を徹底解説
5フォース分析
5フォース分析は、業界の競争構造を理解するためのフレームワークです。
この手法は、5つの競争要因から業界の収益性を分析します。
詳しい実践方法や活用に関してはこちらの記事をご参考にしてください。
参考:5フォース分析で自社の立ち位置を明確化。競争優位性の構築方法とは
PEST分析
PEST分析は、外部環境の変化が事業に与える影響を分析するフレームワークです。
Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの観点から分析を行います。
政治的要因 | 法規制の変更、税制改正、政治的安定性など |
経済的要因 | GDP成長率、インフレ率、為替レートなど |
社会的要因 | 人口動態の変化、ライフスタイルの変化、価値観の変化など |
技術的要因 | 新技術の登場、技術革新のスピード、研究開発投資など |
STP分析
STP分析は、効果的なマーケティング戦略を立案するためのフレームワークです。Segmentation(市場細分化)、Targeting(標的市場の選定)、Positioning(ポジショニング)の3つのステップで構成されます。
市場細分化 | 大きな市場をより小さな、均質なグループに分割 | 年齢、性別、収入、ライフスタイルなど |
市場選定 | 細分化された市場から重点的に攻略する先を選択 | 市場の規模、成長性、競合状況、自社の強みなど |
ポジショニング | 選定した市場における自社の位置づけを明確化 | 高品質・高価格、手軽・低価格など |
詳しい実践方法や活用に関してはこちらの記事をご参考にしてください
4P分析
4P分析は、マーケティングミックスを検討するための基本的なフレームワークです。
Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の4つの要素から構成されます。
製品 | 商品の機能、品質、デザイン、ブランドなど |
価格 | コスト、競合価格、顧客の価格感度、ブランドイメージなど |
流通 | 直販、小売店、オンライン販売など |
販促 | 広告、PR、セールスプロモーションなど |
詳しい実践方法や活用に関してはこちらの記事をご参考にしてください。
参考:4P分析の基本を丁寧に解説|成功のコツと失敗しないポイントとは
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、企業の価値創造活動を体系的に分析するフレームワークです。
主活動と支援活動に分けて、各活動での競争優位性を検討します。
主活動 | 調達、製造、販売、マーケティング、サービスなど |
支援活動 | 人事管理、技術開発、インフラストラクチャーなど |
詳しい実践方法や活用に関してはこちらの記事をご参考にしてください。
参考:成長加速!顧客価値を最大化するバリューチェーン分析の実践ステップ
VRIO分析
VRIO分析は、企業の経営資源が持続的競争優位の源泉となり得るかを評価するフレームワークです。
Value(価値)、Rarity(希少性)、Inimitability(模倣困難性)、Organization(組織)の4つの観点から分析します。
価値 | その経営資源が機会を活用し、脅威を中和するのに役立つか |
希少性 | その経営資源を保有している企業がどの程度少ないか |
模倣困難性 | 競合他社がその経営資源を真似することがどの程度困難か |
組織 | その経営資源を活用するための組織能力があるか |
ほかにも製品比較やNPS(Net Promoter Score)分析も、競合他社との差別化を図る上で重要な情報整理となります
参考:NPS®分析とは?4象限分析など定量・定性分析手法を徹底解説
どれも競合分析をする際に有効なフレームワークですが、それぞれ役割が異なります。適切な使い方をして最大限活用していきましょう。代表的なフレームワークを体系的に紹介している記事もありますので状況によってどの手法を使うのか悩む時は是非ご参考にしてください。
Step3:ポジショニングマップの作成
フレームワークを活用してある程度競合情報が整理できたら、次は自社含めた業界のポジショニングマップを作成します。ポジショニングマップは、市場における各社の位置づけを視覚的に理解するための有力な手法です。

視覚化することでテキストやデータ上では見つからないポイントが発見できることも多くあります。
ここまでのデータ収集・フレームワークそしてポジショニングマップを作成することで多方面から網羅的に理解を深めることができるので、次のステップでより実態に沿った仮説立案や分析を進められます。
Step4:競合との比較分析・仮説立案
ここまでの複数要素のデータの整理をしたうえで総合的に製品・サービスの比較分析と仮説立案をしていきます。
ここをしっかり見極めることでどのポイントを訴求するか明確になります。
逆にこの時点で勘や思い込みに頼った内容になるといまいち他の製品・サービスとの違いを消費者に理解してもらえなくなります。
ここまでのデータ整理をもとに客観的に分析・仮説立案していくことが重要です。
Step5:戦略立案をする
ここまでの分析でみえてきた仮説を基に、実行可能な戦略を立案します。
現状分析の統合 | 3C分析結果の整理・SWOT分析との統合・重要課題の抽出 |
戦略の検討 | 差別化戦略の方向性・リソース配分の優先順位・実行スケジュール |
KPIの設定 | 達成目標の明確化・評価指標の設定・モニタリング方法 |
ここまでの分析や情報収集の質が高ければ高いほどより効果的な戦略立案に繋がります。
Step6・7:戦略実行・振り返り
戦略立案で出した施策を実行に移していきます。また実行までで終わりではありません。その後状況に合わせて修正をして精度を上げていくことで成果を最大化することができます。どのように計測して振り返るのかKPIの設定と併せて計画しておくと安心です。
ここまで情報収集から振り返りまですべてのステップを丁寧に行っていくことが大切です。多くの時間と労力を割いて行う分析なのでしっかりと結果につなげるポイントを抑えていきましょう。
データベース活用による効率的な競合分析
競合分析をはじめ分析をしていくにはどうしても前半での十分なデータ収集が必要です。前述のステップでも一番ボリュームがあったのは分析までの情報収集と整理のステップでした。
データ収集・整理は多岐にわたるほど時間と労力を要します。そのうえコストも安くはありません。
そういうときにデータベースを活用することでかなり時間短縮・効率化をすることができます。
ここではデータベースの活用をすることによるメリットを解説していきます。
分析時間の短縮
データベースの活用により従来の競合分析と比べ、大幅な効率化が可能です。
リアルタイムデータの活用 | 市場動向の即時把握・競合動向の常時モニタリング・トレンド変化の早期発見 |
データの一元管理 | 情報の散在防止・分析精度の向上・チーム間の情報共有 |
コスト削減と精度向上の両立 | 効率的な競合分析によるコスト削減と分析精度の向上 |
自動化ツールの活用 | データ収集の効率化・分析作業の自動化・レポート作成の簡略化 |
分析プロセスの標準化 | 手順の明確化・ノウハウの蓄積・品質の均一化 |
市場分析には欠かせない競合分析。やるからには効率的に実現できるデータベースの活用をお勧めします。
Knowns 消費者リサーチで効率的な分析をする
この記事でご紹介したステップで行えば、競合分析はできるはず。ただ、時間がかかってしまい挫折する方もいるのではないでしょうか。 Knowns 消費者リサーチは、ブランドの情報を大量に集めてデータベース化しているプラットフォームです。
これまで収集してきた膨大な顧客データやブランドデータをすぐ確認できるようになっています。
■Knowns 消費者リサーチフレームワーク 7 Journey
Knowns 消費者リサーチのデータベースは、単なる数値データだけでなく、消費者が持つイメージや消費価値観などのデータも蓄積されていて、自社ブランド以外でも欲しいデータがその場で手に入ります。
興味がある方は、是非詳しい資料をご覧ください。
実際のデータ活用例をご紹介
Knownsの機能やデータを使って競合分析をすることができます。ここでは一部をご紹介していきます。
CEP分析×Knowns カップアイス市場編
CEP(カテゴリーエントリーポイント)とは特定のカテゴリーを購入しようと想起するオケージョン(機会)のことです。CEPを知ることにより、同カテゴリーがどのように購入されるのかの理解が深まり、様々なCEP軸でのブランド分析をすることでブランドの課題や戦略が見えてきます。
Knownsではブランドの競合データ収集・分析をすることで、CEPを見つけて自社との差別化できるポイントを見つけていきます。
カップアイスブランドの場合、まずどういったときにカップアイスが欲しいかという項目でCEP毎での複数ブランドの数値を比較します。

この数値をみて、自社ブランドが競合と比較してどのCEPが得意なのか不得意なのかを見極めます。
そのうえで、差別化ポイントになりそうなCEPを見つけたらより詳しく深堀していきます。気になる続きは是非こちらの資料からご覧ください。
U&A調査(使用実態調査)×Knowns 洗濯洗剤編
U&A分析は特定の商品カテゴリーやサービスについて、市場での利用実態と使用者の意識・考え方など、どのように利用してどう考えているのかを把握するために行う定量調査です。
Knownsではアンケート配信をしてデータを収集し、市場全体での消費者行動を明らかにしていきます。
洗濯洗剤のケースでは、デモグラフィックデータと何を使って洗濯をしているのかをまず明らかにし、洗剤の利用頻度や購入シーンなどを見ていきます。

その後特定のブランドとの競合の利用状況を比較していくことでブランドが狙えるポジションを見極めていくことができます。
どのような属性で見ていくかによってわかってくるポイントが変わるので切り口が重要になってきます。
詳しいデータ・分析の続きは是非こちらの資料からご覧ください。
まとめ
競合分析の種類はたくさんあります。今ある状況や今後狙いたいポジションなどを正確に見極めて戦略・施策を練っていくためには労力はかかりますが丁寧な分析が求められます。時間やリソースが足りない中でも効率的な情報収集や分析をしていくことでより効果的な競合分析をしていきましょう。