航空業界の市場分析をしてみた
皆さんはどのようなシーンで飛行機を利用しますか?
仕事や旅行、実家への帰省など用途は様々かと思います。
また利用する航空会社を選ぶときの基準も価格、サービスの質、ブランドへの信頼など色々な理由があげられそうです。
このように”航空”に対する価値は、人によってシーンに寄ってそれぞれ異なります。
今回はそんな”航空”市場をピックアップして、Knowns 消費者リサーチをもとに分析をしていこうと思います。
マーケター担当やメーカーの方々のお役に立てると嬉しいので是非最後まで読んでみてください。
航空業界を紹介
まず簡単に日本の航空業界について紹介していきます。
日本の航空業界は主にFSC・LCC・MCCに分かれています。
・FSC(フルサービスキャリア)
例えばANAやJALがFSCの部類に該当します。
信頼の高さが魅力的で、利用時のサービス面はとても充実しています。
しかし価格が高いのでビジネス利用の人が多い部類です。
・LCC(ローコストキャリア)
例えばPeachやJetstar、エアアジアなどがLCCの部類に該当します。
日本語では「格安航空会社」と呼ばれ、サービスがシンプルな代わりに格安で運営する航空会社です。
とにかく料金が安いのが特徴ですが、その分サービスのオプションに追加料金が発生するので、メリット・デメリットが多い印象の部類です。
・MCC(ミドルキャリア)
例えばスターフライヤーやスカイマークなどがMCCの部類に該当します。
日本語では「中堅航空会社」と呼ばれ、文字通りFSCとLCCの中間のような存在です。
もう少し詳細に解説すると、価格やサービス面等が中間あたりで、双方の良いとこどりとも言われています。
記事の後半でMCCについて詳しく分析する予定ですので、楽しみにしていてください!
ポジショニングマップ
まずは航空業界に属する各ブランドの認知度や満足度などのポジショニングを確認してみます。
認知度ポジショニングマップ
認知率×好感率
最初に認知率と好感率でポジショニングしてみます。
各ブランドの認知度がどれくらいあるのか、好印象・好感触と感じている人はどれほどいるのかを確認することができます。
■認知率×好感率 ポジショニングマップ

認知率×好感率では1位がJALとなりました。
認知率90.3%、好感率52%と非常に高い数値となっています。
しかしANAも認知率85%、49.2%と同様に高い数値となっており、両ブランドともさすが世界を代表するFSCのブランドですね。
マップ全体に目を向けると、「ANA・JAL」「Peach、Jetstar、スカイマーク」「その他」の3グループに分かれているのが確認できます。
「Peach、Jetstar、スカイマーク」のグループは認知率55〜70%、好感率も25%前後とFSCには劣る数値となっており、顧客の特徴も変わってきそうですよね。
満足率×潜在顧客率
次に満足率と潜在顧客層でポジショニングしてみます。
ブランドの利用者はブランド価値にどれほど満足しているのか、将来の顧客として見込まれる人はどれほどいるのかを確認することができます。
■満足率×潜在顧客層 ポジショニングマップ

満足率×潜在顧客層では項目ごとに1位は異なっています。
満足率は先程と同様に1位がJAL、2位がANAという結果でした。
対して潜在顧客層は1位がPeach(47.7%)、2位がJetstar(47.1%)、3位がスカイマーク(39.8%)となりました。
潜在顧客層のTOP3は認知率×好感率のポジショニングマップで真ん中のグループだった3ブランドがランクインする形となっています。
PeachやJetstarは約2人に1人が潜在顧客層ということで、どのような特徴の人が多いのかとても気になりますね。
また認知、好感、満足で次点の位置につけ、さらに潜在層も多いので今後の成長に期待が持てそうです。
イメージポジショニングマップ
各ブランドのイメージについても分析してみます。
消費者からどんなイメージを持たれているのか、各ブランドの大きな印象はどういった点にあるのかを理解することができます。
ポジショニングする前に”航空”に対するイメージを簡単に確認しておきたいと思います。
今回は航空ブランドの利用経験がある人を対象に、今後も利用する理由を探りたいので次回購入したい層に限定して分析してみます。
■航空業界 イメージ分析

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
最も強いイメージは安心・安全でした。
安心・安全を重視する人が多いことから、ブランドへの”信頼”は顧客にとって利用するブランドを選ぶ大きな基準になりそうです。
また利便・合理性や期待感・ワクワクも同様に上位となっており、どれも50%を超えています。
長距離移動に便利な存在である航空ですが、利用中の快適さやサービスの質も顧客にとって非常に重要な項目のようです。
またコスパ・経済性も上位にランクインしており、LCCがどれほど需要あるかが分かりますね。
このイメージ分析の結果をもとに、ポジショニングを行っていきたいと思います。
安心・安全×利便・合理性
まずはイメージ分析の第1位と第2位の項目をポジショニングしてみます。
■安心・安全×利便・合理性 イメージポジショニングマップ

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
安心・安全×利便・合理性では、項目ごとに上位が異なりました。
安心・安全は1位がANA(36.2%)、2位がJAL(33.7%)、3位がスカイマーク(22.9%)という結果でした。
やはりFSCのブランドは安全性という観点ではかなり高評価のようです。
利便・合理性は1位がエアアジア(35.8%)、2位がJetstar(32.6%)、3位がPeach(32.5%)となりました。
LCCのブランドが上位にランクインしており、安く移動できる魅力が数値に反映していると考えられます。
エアアジアはマレーシアを拠点とする世界最大規模のLCCです。
海外旅行を計画したことがある人は、1度は耳にするブランドではないでしょうか。
国内線・国際線どちらも数多くの路線を就航しており、利便性と安さを兼ね備えた”旅人のミカタ”とも言えるブランドです。
期待感・ワクワク×コスパ・経済性
次に視点を変えて、期待感・ワクワク×コスパ・経済性について見ていきます。
「期待感・ワクワク」は移動時間の楽しみやクーポンの豊富さなど、要素は多く挙げられますが、航空ブランドのイメージとしては非常に重要ですよね。
また移動のコスパについても、移動になるべくコストを抑えてほかに費用をかけたいといった理由などでブランド選びの基準として優先度の高い項目になりえます。
この2つのイメージがブランドによってどのような違いがあるのか見ていきましょう。
■期待感・ワクワク×コスパ・経済性 イメージポジショニングマップ

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
期待感・ワクワク×コスパ・経済性もそれぞれの項目で上位は異なっています。
期待感・ワクワクは1位がANA(30.6%)、2位がJAL(26.4%)、3位がスカイマーク(26.1%)となりました。
ANAはサービスの質はもちろん、顧客を楽しませる様々なイベントを実施している印象があります。
例えば「そらとぶピカチュウプロジェクト」と呼ばれる、ポケットモンスターとのコラボレーションです。
ポケットモンスターがラッピングされた機体や、機内サービスの中にコラボイベントが含まれていたりと、子供から大人まで楽しめるイベントが実施されています。
このような顧客をワクワクさせるサービスが充実している点が、高い数値を叩き出している要因の1つになっていると考えられます。
「そらとぶピカチュウプロジェクト」/ANA公式サイトhttps://www.ana.co.jp/ja/jp/international/theme/pikachujet/?msockid=33ff7ef9b61163bd34766fb0b7e362d3
コスパ・経済性では1位がPeach(42.9%)、2位がJetastar(35.0%)、3位がAIRDO(32.5%)という結果でした。
LCCの中でも数値が大きく違うのは興味深いですね。
また先程の利便・合理性で1位だったエアアジアが上位にランクインしていないのは驚きです。
エアアジアの魅力や顧客の特徴について深堀すると、興味深い結果が得られるかもしれません。
スカイマークのブランド認知度
ここまで航空業界全体について分析しましたが、ここからはブランドを1つピックアップして分析していきます。
今回ピックアップするのはスカイマークです。
これまでのポジショニング分析でも何度か登場したスカイマークですが、MCCの部類に入っているブランドの1つとして、魅力や顧客の特徴などを探っていけたらと思います。
7 Journey調査
■スカイマーク 7 Journey

スカイマークはチャンスやきっかけ待ちの割合が非常に高い結果となりました。
「購入経験は無いが、きっかけがあれば購入したい」という人が多いため、ブランドの施策によっては顧客を増やせる可能性を大いに秘めています。
スカイマークが離着陸する空港は12箇所で、日本の玄関口でもある羽田空港からは6路線が就航しています。
また就航路線が一番多い空港は神戸空港で、現在8路線の就航をしています。
チャンスやきっかけ待ちはどのような人が多いのかを探ってみるのも面白いかもしれませんね。
7 Journeyを違った角度から
次に7 JourneyTableを用いて、更に深堀りをしていきます。
■スカイマーク 7 JourneyTable×性別

性別ごとに7 Journeyを分けてみると、チャンスやきっかけ待ちは男性の方が割合は高いです。
しかし未認知は女性の方が割合は高く、各項目の層をロイヤル層へ転換するにはいくつか工夫が必要かもしれません。
■スカイマーク 7 JourneyTable×年齢

また年齢別に分けてみると、チャンスやきっかけ待ちは40代や50代の割合が高い結果となっています。
対して10代や20代は消極ロイヤルや未認知に多く、利用経験があるか全く知らないかの二極化とも言えます。
しかし若年層の認知度が高ければ、将来の利用者数の維持や向上が期待できるので注目ポイントとして考えても面白そうです。
その中でも30代は積極ロイヤルの割合が高く、年代によって割合の高い項目は異なっています。
■スカイマーク 7 JourneyTable×居住地

また居住エリア別に分けると、九州エリアに大きな特徴が見られました。
積極ロイヤルや消極ロイヤル、巻き戻しで割合が高かったのです。
実際に離着陸する空港を地域別で分けると九州・沖縄地方が最も多く、合計6箇所の空港でスカイマークを利用することができます。
居住エリア別の割合の偏りは、就航路線が大きく影響していると考えられます。
※「離反予備軍」や「離反」は母数(n=)が少ないため、分析対象外としています。
FSC・LCCとの違いを徹底比較
顧客の特徴をより理解するべく、FSCやLCCの顧客とも簡単に比較してみます。
今回はそれぞれのブランドを今後も利用したい人はどんな特徴があるのかに焦点を当てているので、次回購入したい層に限定して分析していきます。
FSCとの比較
FSCではイメージポジショニングにおいて多くの項目で1位だったANAと比較してみます。
今回は比較して気になった部分をピックアップして紹介していきます。
まずは性別と年齢です。
■ANA デモグラフィック分析 性別・年齢

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
■スカイマーク デモグラフィック分析 性別・年齢

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
性別はスカイマークの方がやや男性の割合が高いですが、大きな差はありません。
しかし年齢別ではANAの方が10代や20代の顧客も多く、全体的にバランスが取れているように見えます。
価格だけでいえばANAの方が平均的に高い傾向にありますが、スカイマークの方が若者に利用されていないのは気になりますね。
■ANA デモグラフィック分析 居住エリア

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
■スカイマーク デモグラフィック分析 居住エリア

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
先程も特徴の1つに挙げた”スカイマークは九州・沖縄地方の顧客が多い”という点ですが、ANAと比較してもスカイマークの方が割合は高い結果でした。
やはりスカイマークの顧客は九州・沖縄地方に多いのでしょうか。
次にサイコグラフィックです。
■ANA サイコグラフィック分析

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
■スカイマーク サイコグラフィック分析

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
それぞれの特徴として挙げられるのは、ANAは直感重視が多く、スカイマークは定番消費が多いということです。
またスカイマークの方が倹約家の割合は高く、スカイマークの方が安いという認識が強いようです。
■ANA サイコグラフィック分析

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
■スカイマーク サイコグラフィック分析

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
そしてスカイマークはリターン期待型消費やエシカル消費、ノスタルジー消費の割合も高い結果でした。
ブランドの取り組み次第では、新しい顧客の獲得やブランド価値の向上などの可能性を秘めていると考えられます。
特に使った金額以上のリターンが得られていると感じている人が多いので、まずは利用してもらうことが必要になってきそうですね。
LCCとの比較
FSCとの比較結果をもとに、次はLCCと比較してみます。
先程のFSCとの大きな違いはやはり、LCCの方が安価でサービスがシンプルな点です。
この特徴をふまえて今回は、コスパ・経済性で1位だったPeachと比較していきます。
■Peach デモグラフィック分析 性別・年齢

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
■スカイマーク デモグラフィック分析 性別・年齢

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
年齢ではスカイマークの方が男性の割合が高いものの、両ブランドに大きな差はありません。
年齢別では、ANAとは対照的に若者の割合が非常に少ないです。
全体で比較すると両ブランドとも同じ特徴を持っていると言えます。
次にサイコグラフィックです。
■Peach サイコグラフィック分析

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
■スカイマーク サイコグラフィック分析

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
両ブランドを比較して数値にいくつかの差を発見しました。
Peachはお得感重視消費やコスパ消費の割合が高い結果となり、対してスカイマークはリターン期待型消費、エシカル消費、ノスタルジー消費が高い結果でした。
スカイマークの方が高かった3つの項目はANAとの比較でも特徴の1つとして紹介しており、スカイマークの顧客の特徴とも言えそうですね。
しかし”お得感”という観点では、やはりPeachの方が上のようです。
ブランドイメージ
次にイメージ分析を用いて、それぞれの顧客が持つブランドへのイメージを比較してみます。
まずは今回の比較対象として用いたANAとPeachです。
■ANA イメージ分析

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
■Peach イメージ分析

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
ANAの1位は安心・安全で36.3%でした。
航空全体の最も強いイメージも安心・安全でしたよね。
また期待感・ワクワクやベーシック・定番的も上位にランクインしており、固定の顧客や家族連れなど幅広い顧客がいそうですね。
さらに伝統・頑固さやカリスマ性があるも上位の項目となっています。
さすが日本を代表する航空ブランドとして、長年活躍しているブランドなだけありますよね。
PeachはANAで上位に入っていないコスパ・経済性が42.7%と、圧倒的な数値で1位となりました。
さすがLCCのブランドといったところでしょうか。
他にもチャレンジ・応援やカジュアル・プチリラックスといった項目もランクインしており、ANAとは大きくイメージが違いますね。
次にスカイマークのイメージを見てみます。
■スカイマーク イメージ分析

※絞り込み条件 : 次回購入したい層
スカイマークの1位は利便・合理性で32.4%でした。
またコスパ・経済性も平均を上回っており、FSCよりかはLCCの方が属性は似ているように感じます。
さらにANAやPeachの上位に無かった項目として、平等・世の中のためになるがランクインしていました。
先程のサイコグラフィックでもエシカル消費の人が多くいたので、実際にスカイマークの地域貢献やサスナビリティに関する取り組みを調べてみました。
すると多くの取り組みが実施されているのを確認したので、いくつかご紹介したいと思います。
まずスカイマークの機内販売メニューや無料サービスで、それぞれの地域の特産品を販売・提供していました。
そして地域の企業と連携して地方創生キャンプへの協賛を行ったり、神戸空港を拠点にした独自の路線を築いて地域の利便性向上に貢献するなど多くの要因を発見しました。
スカイマークは最も地域への貢献が強いブランドともいえるかもしれません。
マーケの可能性を探る
ここからはスカイマークのブランド価値の向上にはどんな要素が必要か、ヒントを見つけていきます。
すでにヒントになりうる発見はいくつかしていますが、消費者の声やSNSなどの視点からもヒントを見つけたいと思います。
消費者の意見や印象は
まずスカイマークにはどんな印象や意見を持っているのかをみていきます。
まずは次回購入したい層から見てみます。
■スカイマーク 消費者の声 次回購入したい層

次回も購入をするつもりの顧客は、価格に対するサービスの質を高評価する意見が多く見受けられました。
また安価で利用できることから、LCCと比較してコメントをしている人も何人か見受けられます。
そしてサービスの質では「FSCと遜色ない快適さ」といった評価もいただいていました。
■スカイマーク 消費者の声 顧客満足率<普通・やや不満・不満>

対して満足率の低かった意見を見てみると、「席が狭い」「ゲートまで遠い」などの意見が集まっていました。
価格が安い分座席の幅やサービスの質がシンプルになるのは当然でもあるので、どれだけ安くクオリティの高いサービスを提供できるかは非常に難しい課題ですよね。
ユーザはどんなSNSを見ている?
次にSNSの利用状況を見てみます。
スカイマークの公式が運営しているSNSアカウントは、X(旧Twitter)やInstagramなどが挙げられます。
またYouTubeも投稿頻度は少ないですが、公式アカウントは存在していました。
■SNS利用状況 次回利用意向あり

次回購買意向ありは、YouTubeやLINEを閲覧している割合がやや高い結果となりました。
しかし公式アカウントを運営しているX(旧Twitter)やInstagramは全体平均、もしくはそれをやや下回っていることもわかりました。
■SNS利用状況 次回利用意向なし

次に購買経験のない人を分析してみると、「SNSを利用してない」という人の割合が平均より高い結果でした。
また利用している人の中では、YouTubeの閲覧が多いことも分かります。
購買経験の無い人に対して、SNSでの誘致はあまり効果的ではない可能性がありますね。
あのブランドを丸裸に【2週間トライアル実施中】
今回は航空業界の市場分析と、「スカイマーク」について認知度〜イメージ調査まで見てきました。
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