ファッションレンタル業界の市場分析をしてみた


「サブスク」という単語を初めて聞いた頃、サブスクリプションなのかサブスクプリションなのかサブクスリプションなのかも曖昧でしたが、定額制のサービスはいつの時代も私たちの暮らしとともにあったと思います。

新聞、宅配スーパー、音楽、映画。

いつの間にか生活に溶け込み”豊かさ”や”コスパ”、”効率性”、”合理性”など様々な価値を提供してくれています。

そんなサブスクの中でも最近注目されているのがシェアリングエコノミー系です。

代表的なものがファッションレンタルサービス。

今回は、そんなファッションレンタル業界について市場分析をしてみました。

ファッションレンタル業界紹介 

昨年2024年に経済産業省が出している分析レポートによると、百貨店の一店舗当たりの販売額が前年同期比10%以上増加していると示されています。


2024年上期小売業販売を振り返る 経済産業省
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20241122minikeizai.html


百貨店の中の内訳をみると、婦人服や子供服などのファッション、身の回り品、飲食系の3ジャンルが大きな割合を占めていることが分かります。

物価高で贅沢品であるファッションはなかなか厳しい局面を迎えている印象がありますが、百貨店でのファッション熱はまだ消えていないようですね。

近年百貨店ではレンタルサービスにも力を入れており、現在の消費者のニーズを敏感に読み対応している様子が伺えます。


衣料品への支出 家計調査より 総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/kakei/tsushin/pdf/22_5.pdf


また総務省の家計調査内のレポートでは、2010年の衣料品に対する消費者の低価格志向がうかがえると述べられています。

この頃にはすでに”コスパがいい”ことを重視する価値観が広まり、ファストファッションや多くの低価格帯ブランドが登場し、注目トピックとなっていました。

そんな時代の流れに対応する一つのアイデアが、ファッションレンタルサービスと言えるのではないでしょうか。


ファッションの世界にもシェアリングエコノミー 経済解析室より 経済産業省https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20170118hitokoto.html


こちらは2017年に出された記事ですが、8年前にはもう定額制ファッションレンタルが新サービスとして注目されていたことが分かります。

この8年で着々と成長してきたこの市場が、人々の価値観や婦人服市場に与えた影響とはどんなものがあったのでしょうか?また、これからどんな影響を与え得るのでしょうか?

近年盛り上がりを見せているファッションレンタル業界についてここから先はKnowns 消費者リサーチのデータを見ながら分析していきます。

ポジショニングマップ

認知・好感・満足率MAP

■好感率×認知率 ポジショニングマップ

※和装レンタルブランドは今回対象外

好感率×認知率のマップを見ると、好感・認知ともに高いのはアナザードレス

続いて、ラクサス。認知率ではairCloset、好感率ではRcawaiiが3位につけています。

アナザードレスは、大丸松坂屋が運営しておりハイブランドやデザイナーズブランドがレンタルでき、特別な日に着たい服もたくさんあります。

(個人的には物欲お化けなのでちょっと惹かれました。笑)

ラクサスは、ブランドバッグでairClosetとRcawaiiはプロが服を選んでくれるのは共通ですが、エアクロはオフィス系ファッションを中心に扱っていてメインターゲットは30~40代、Rcawaiiは20~60代まで幅広く着用できる洋服を扱っています。

中でもギャル系やドレスの扱いもあり、20代から人気なようです。


利用状況 個人投資家の皆様へ airCloset
https://corp.air-closet.com/ir/individual/


全体的に認知率は20%弱と、業界としてまだまだ認知拡大・市場拡大の可能性があります。

■好感率×潜在顧客層 ポジショニングマップ

※和装レンタルブランドは対象外

潜在顧客層×好感率のマップでは、アナザードレスが頭一つ抜けている結果となりました。

潜在顧客層というのは、「購入したことはないが、購入してみたいと思っているユーザー層」や「購入したこともなく、購入してみたいとも思っていないユーザー層」(ターゲットからは最も遠いが、知ってはいるので何かのきっかけで購入する可能性がある)のことを指しています。

つまり、購入顧客層が多いということはそれだけ天井は高いところにあるとも言えます。

ただ、数値を見てみると潜在顧客層は6~9%の間に多くのブランドが位置しており、実際はそこまで差がないことが分かります。

業界全体を通して、認知と潜在顧客層拡大において伸びしろが大きいと言えるでしょう。

イメージポジショニングMAP

利便・合理性×期待感・ワクワク

■利便・合理性×期待感・ワクワク イメージポジショニングマップ

※和装レンタルブランドは対象外

利便・合理性×期待感・ワクワクのポジショニングマップで、存在感を示したのはairCloset

日常着のサブスクということで利便性が高く、またプロのスタイリストが選んだ服が届くというシステムなので「なにが届くんだろう!」とワクワクするイメージが定着するのも納得です。

百貨店取り扱いブランドがレンタルできるアナザードレスは、期待感・ワクワクの数値が2番目に高く、airClosetと同様に日常着が毎月借りられるメチャカリは利便・合理性の値が高くなっています。

クローゼットにものが増えなかったり、洗濯や衣替えの手間が省けたりと合理的な一面もこのファッションレンタルサービスの大きな特徴のひとつです。

話題の・流行っている×コスパ・経済性

■話題の・流行っている×コスパ・経済性 イメージポジショニングマップ

※和装レンタルブランドは対象外

コスパ・経済性×話題の・流行っているのマップでも、これまで何度も名前が出ているairClosetメチャカリの数値が高いです。

合理性が評価されているairClosetとメチャカリが、コスパでも評価されているのはとても納得感があるというか、そういうことだよね!と大きくうなずいてしまいました。

物価上昇が著しい昨今、定額でファッションを楽しめるのは支出が安定するという部分でも、魅力的に感じる人は多いと思います。

話題性でいうと、去年からairClosetではディズニーアイテムのレンタルも開始しています。

こちらはパークへ行くときやイベントの際に利用できる都度課金システムで、思い出を写真に残せる!一度しか着ないようなものでもゴミにならないのでサステナブル!と話題になっていました。

ブランド認知度 aircloset

ポジショニング分析でも何度も登場したairClosetが創業後初めて、黒字化したというニュースがありました。


【エアクロ】24年6月期通期決算について エアクローゼット_IR
https://note.com/aircloset_ir/n/n9c0f296aa8dd


レンタルできる商品の確保や会員数の積み上げが必要な「ファッションサブスク」では赤字が先行することは逃れられませんが、この度黒字に転換したということで、今後さらなる成長が期待されます。

そんなairClosetについて、少しデータを見て掘り下げていきます。

ブランド認知調査

Knowns 消費者リサーチでまずブランドの認知率・好感率を見てみました。

ブランド名 認知率 好感率
airCloset 10.4% 3.4%

airClosetの認知率は10.4%と高いとは言えませんが、創業10年を迎えたということで飛躍の年になることを期待したいですね!

具体的には、これまでも行ってきたLINE広告やSNSなどが認知を広めるために大きな力となるのではないでしょうか。

シェアリングエコノミーという考え方や単語が世に広まるにつれ、airClosetの名もどんどん浸透しそうな予感です。


参考:「コンテンツ制作力×チームアップ」で認知獲得3倍に エアークローゼットとワンスターのLINE広告戦略 MarkeZine
https://markezine.jp/article/detail/36792


■7 Journeyマップ airCloset

認知率は先ほど示した通りですが、認知層の中をみていくとチャンスやきっかけ待ちのグループを大事にしたいところです。

興味はあるけれどまだ始めていない人にとってなにがフックになるか考えてみると、個人的には「好きなブランドが取り扱いブランドに加わった」とか「割引キャンペーンで試すことが出来る」などが効果的なのではないかと思います。

各顧客セグメントの特徴と併せて検討することでより適切なコミュニケーションがとれるかもしれません。今後の施策も注目ですね。

ブランドロイヤリティ調査

■7 Journey Table 性別・年齢 airCloset

細かな内訳をみると、まず離反予備軍の女性が多い点が気になりますが、回答者の数が少ないためここはもう少し様子を見ることが必要です。

メインターゲットである30代に離反の可能性が大きいとすると、大きな課題となり得るので対策をしっかりとっていきたいですね!

また、ロイヤル層では50代が意外と多いことが分かります。

実際に「50代 airCloset」で検索すると結果が沢山表示されました。

それだけ世間には興味や需要があるんですね!airClosetのスタイリング紹介サイトでも50代をターゲットにした記事をいくつも出しています。


#50代 airClosetStyleより
https://www.air-closet.com/share-style/tag/50%E4%BB%A3/


サブスクサービスは新規会員の獲得と同時に、会員の定着も業績を上げるうえで重要な要素です。

離反予備軍だけでなく既存会員を引き留めるサービスやサポートも大切ですよね。


『airCloset(エアークローゼット)』が、初の会員プログラム「エアクロプライム」を提供開始 airCloset Newsより
https://corp.air-closet.com/news/press-release/240611/


airClosetでは、会員限定プログラムも展開しています。様々な施策を打ち出し、企業努力が見えます。

ブランドイメージ

今のイメージとその変化

■時系列イメージ分析 airCloset

※期間単位:3ヶ月単位
※2024年10月以降の数値は集計中のため参考値

基本的に利便・合理性とコスパ・経済性のイメージが安定して上位に位置しています。

前述したイメージポジショニングマップで、どちらもairClosetが右上にあったので納得の結果です。

■商品・サービスへの意見 airCloset

KnownsBizにある消費者の意見にも、このようにコスパや合理性に触れるようなものが多くありました。

■時系列イメージ分析 airCloset ベーシック・定番的

ベーシック・定番的のイメージも高い割合を占めています。

airClosetで取扱いのあるアイテムが、デザイン性の高いものよりも人や場所を選ばず着ることができるようなものが多いのでこういったイメージが定着したと考えます。

■時系列イメージ分析 airCloset 期待感・ワクワク

期待感・ワクワクのイメージも比較的高い位置で推移していますが、airClosetの動きを見ているとワクワク感の提供に力を入れているのではないかと読み取れます。


エアークローゼットが、ドレスレンタル『airCloset Dress(エアクロドレス)』をスタートairCloset ニュースリリースより
https://corp.air-closet.com/news/press-release/241120/

ディズニーアイテムのファッションレンタル『Disney FASHION CLOSET』に、 新キャラクターや夏バウンドコーデが登場! airCloset ニュースリリースより
https://corp.air-closet.com/news/press-release/240627/


オケージョンドレスやディズニーコーデの都度課金レンタルや有名人とのコラボ企画など、話題性や期待感のあるようなものがたくさんあります。

会社として”ワクワク”を大切にすることは大々的に謳っているので、その理念に沿って運営していることがすごく伝わりますね。

今後、もっとこの期待感・ワクワクのイメージが高まっていくのではないかと予想します。

利用者だけにとどまらず業界に対するメッセージ

プロモーションやコンテンツ内で様々なメッセージを発信しているほか、企業理念ページにも記述がある通り新たな雇用を生み出す場としてもairClosetは大きな役割を担っているのではないかと考えています。


airCloset 企業理念より
https://corp.air-closet.com/philosophy/


元ファッションスタイリストの私の経験則ではありますが、スタイリスト社会は年功序列の色が結構残っていたのを覚えています。先輩たちが大活躍している=若手はなかなか仕事が取れないということがよく起こります。

また、不規則な仕事なので夜通し撮影準備なんてこともよくあります。そして、リースした重い荷物(衣装)をもって街を歩き回るのが日常です。

そうすると、どうしても結婚出産子育てというステージの変化が起きた時に続けるのが難しくなる仕事なのです。

そういったプロたちの新たな活躍の場に、airClosetはなり得るのではないでしょうか。

これらの価値提供を考えると、airClosetの成し遂げようとしていることはとても大きなこと、意義のあることなのだと感じます。

ユーザーはどんなSNSを見ている?

■SNS利用状況 airCloset

※絞り込み条件:購買・利用・観戦経験あり

airClosetの利用経験がある人の中で、SNSを使っている人は約90%です。

1位 2位
閲覧 YouTube Instagram
投稿 Twitter(X) Instagram

※LINEは用途がずれるのでここでは触れません

その中でも最も閲覧しているのがYouTubeで、投稿しているのがTwitter(X)という結果が出ています。Instagramは閲覧も投稿もするという方が多いようです。

また実際のairClosetのSNSに目を向けると一番力を入れているのはInstagramという印象を受けます。

マーケの可能性を探る

シェア拡大への課題はどのファネルなのか

■ファネル Table 性別・年齢 airCloset

デモクラ別のファネル分析を見ると、認知は男女半々ですが購入意向や現在購入は女性が6割となっています。

利用者が多い分、離反予備軍も女性の割合が70%を占めています。

年齢別でみてみると、購入意向は30~40代が多く、現在購入は50~60代の割合が思ったより多いです。

過去購入や離反予備軍では30~40代の数字が大きいので、利用してみても退会したり、やめようかと考える人が30~40代には多くいることが分かります。

■ファネル分析 airCloset

■ファネル Table 年齢×転換率 airCloset

認知→購入意向や現在購入→リピート意向はどの年代も50%以上の数字が出ているのに対し、購入意向→現在購入がほとんどの年代で10~20%前後、認知→現在購入が10%前後となっています。

認知率を上げることが第一課題であるものの、その後購買まで至るにはハードルがあるようです。

そのハードルとは何なのでしょうか?

■商品・サービスへの意見 airCloset

上記はKnowns 消費者リサーチに寄せられた口コミです。

また、airClosetのHP「よくあるご質問」ページにはご着用中のトラブル対処法洗濯する場合アイテム到着時の汚破損について修繕費用・弁償金一覧等の項目が設けられていました。

以上のことを踏まえ消費者目線で考えると、このあたりがハードルとなるのかなと想像します。

  1. 本当に”いい服”があるのかどうか。
  2. 誰かが着たものなので、衛生状態が気になる
  3. 試着ができないので借りても着れないor着ないリスク
  4. 返却が手間
  5. 破損したときの追加料金などが心配

1はあえて“いい服”と表現したのですが、これはかなり人の主観に左右されますよね。

シンプルなものが好きな人もいれば、どこかに凝ったデザイン性があるものが好きな人もいたり、モノカラーが好きな人もいれば、いろんな色を着たい人もいるなかで、もちろん”いい服がなかった”という口コミがでることだってあると思います。

エアクロとしては、取り扱いブランドや商品数を拡大することで多くの人の好みに対応できるよう企業努力していると感じています。

また、2の衛生状態や3のリスクについてはどれだけプロを信用できるか?という視点が関わってくるのかなと思いました。

返却されたものは毎回プロが洗ってくれるわけですし、服を選んでくれるのもairClosetが抱えるプロのスタイリストです。

それでも自分が洗ったものの方がきれい。自分で服を選んだ方がおしゃれ。そう思う方は逆にairClosetを使わずにファッションを楽しめる方だということです!

4については、レンタルサービスのシステム上返却工程を省くことは不可能かと考えられるので恐らくメリットvsデメリットの話になります。

つまり極論で言えば返却の手間をかけてもサービスの恩恵をとるのか、返却が面倒だから利用をやめるのか、ではないかと思います。

5は、公式でも料金が出ていますが、大人が服を借りて破損することってそんなにないと思いますし、もし何かあっても数百円ならそんなに大きなハードルにはならないのではないかと感じたのですが、どうでしょうか。


修繕費用・弁償金一覧 airCloset
https://www.air-closet.com/compensation/


これらはairClosetならではというよりはファッションレンタルをする行動そのものに対するハードルになってくるともいえそうです。

ややマイナスのイメージを持った購入意向層にこれらのハードルを越えて利用してもらう方向性での企業努力と、単純にきっかけ次第で利用が拡大されそうな未認知層・チャンス層と両方アプローチしていくとまだまだairClosetないしは市場の拡大もあるのではないでしょうか。

もっと色々なデータをみていくと他の側面やヒントも見えてきそうですね。

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ファッションレンタル業界の市場分析と、「airCloset」について認知度〜イメージ調査まで見てきました。

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Knowns 消費者リサーチ