コスパ以外に利便性?メニューの多さ?進化し続けるあのファミレス
こんにちは。ベトナム在住ライターの寺内です。
2月は旧正月(毎年変動)があり、その時期は日本に一時帰国していたのですが、今回は台北に遊びに行ってみました。
その際、ホテルのそばにあり、思わず入りたいくなったのが「サイゼリヤ」…!
残念ながらあちらも旧正月だったので「サイゼリヤ」もお休み中で利用できなかったのですが、ベトナムにはないのでとても恋しくなりました。
■ポジショニング分析MAP_ファミリーレストラン 認知率×満足率(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチのファミリーレストランのポジショニング分析では認知率と満足率2位の「サイゼリヤ」。
今回はそんな「サイゼリヤ」について分析していきたいと思います!
サイゼリヤ
サイゼリヤの歴史
1967年、まだイタリア料理が一般的でなく、街の洋食屋風イタリアンとしてわずか15坪の店舗から「パーラーサイゼリヤ」として始まりました。
その後、1973年にカジュアルイタリアンレストランとして「サイゼリヤ」の営業を開始。数カ月後、価格を相場の1/3にし、セントラルキッチンを設けることで多店舗展開を開始しました。
参考:サイゼリヤ歴史写真館 | 「どこにでもある」サイゼリヤを。 / サイゼリヤ
1990年代にはワインやオリーブオイル・パスタ・チーズなどの直接輸入を開始し、自社生産工場の設立やドリンクバーシステムの導入、1999年300店展開を迎えた頃、創業者の「お客様に喜んでもらうほうが先」という想いから、原価率があがり客単価が下がるにも関わらず、当時480円で大人気だったミラノ風ドリアを290円に値下げしました。
この年から、標準化された店舗の高速出店(100店舗以上/年)が始まりました。
参考:株式会社サイゼリヤ | 新卒採用サイト ブランドヒストリー / サイゼリヤ
2000年代には国内だけでなく海外展開も開始し、2011年には国内・海外合計店舗数が1000店舗に、海外店舗数合計が100店舗を突破、2013年には国内店舗が1000店舗を達成しました。
その後も新しい商圏への出店や全店全席禁煙化などを経て、現在は「世界10,000店舗、年間来客数14億人」をビジョンに掲げています。
サイゼリヤの特長
「お客様においしい料理をリーズナブルに提供する」をコンセプトに、サイゼリヤは「おいしさ」「価格」「食材」を一貫して貫いています。
・おいしさ
毎日食べても飽きない・健康的な毎日の食・一品一品の料理のサイズ設定と一人の時も大人数の時も料理を“コーディネーション”できるメニュー展開
・価格
お客様に喜んでもらえる、注文したくなる価格を目指す・様々なメニューと組合せがしやすい価格設定
・食材
30店舗以下の頃からイタリアの生産者にアプローチし、長い年月をかけて信頼関係の構築・生産者とともに品質向上や供給量増加した輸入食材を使用
日本国内で1,000店舗以上展開しながらも、“どこにもない”を提供しています。
利用者層分析
■ブランドデータ_サイゼリヤ 認知率/好感率(Knowns 消費者リサーチ調べ)
■デモグラフィック分析_サイゼリヤ 現在利用者層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

サイゼリヤ利用者のデモグラ構成比をみると20代前半、40代後半が多く出ています。
男女比では女性が多いです。
■7 Journey_サイゼリヤ(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■ファネル分析_サイゼリヤ(Knowns 消費者リサーチ調べ)

「サイゼリヤ」の7 Journeyを見てみると、認知率がとても高く、ロイヤル層の顧客が約45%で多いことも分かります。
ファネル分析では認知からの購入意向も87.9%と高く、また現在購買⇒リピート意向は97.9%とリピーターが多いようです。
そのなかでやや好意的ではありますが最近利用していない巻き戻し層がやや高めです。
■デモグラフィック分析_サイゼリヤ 巻き戻し層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■相関分析_サイゼリヤ(Knowns 消費者リサーチ調べ)

※絞り込み条件:巻き戻し層が現在利用しているファミリーレストランブランド
「サイゼリヤ」巻き戻し層のデモグラを見てみると30代後半〜60代前半が多く出ています。
また、過去サイゼリヤ利用者の現在利用しているブランド相関分析ではすかいらーくグループの「ガスト」の他、「びっくりドンキー」「ココス」が上位になっています。
イタリアンではなくファミリーレストランが上位にきていることから、さまざまな料理を食べたい方が巻き戻し層には多いのでしょうか?
どんな人に選ばれる?
■サイコグラフィック分析_サイゼリヤ 現在利用層・個人価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■サイコグラフィック分析_サイゼリヤ 現在利用層・社会価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■サイコグラフィック分析_サイゼリヤ 現在利用層・消費価値観(Knowns 消費者リサーチ調べ)

サイコグラフィックを見てみると、個人価値観は“自己愛強め””都会派”、”アウトドア派”な方が多いです。
社会価値観は“トライブ重視””依存集中型”に次いで“家族優先”と“出世優先”が並んでいます。正反対のクラスターが並んでいるのは、さまざまな職業や環境の方に利用されているのでしょうか。
消費価値観は“レビュー熟考消費”に次ぎ、“トレンド・限定重視消費”が高いです。
消費者の心を掴む理由は?
■ワードクラウド_サイゼリヤ 現在利用層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

■商品・サービスへの意見_サイゼリヤ 現在利用層(Knowns 消費者リサーチ調べ)

「サイゼリヤ」利用者のワードクラウドや意見を見てみると、コスパに関する意見が多く見受けられました。
長年カジュアルイタリアンレストランとして、特長にあげたコンセプトに則って存在していることが消費者にも伝わっているのだと思います。
実際に利用したという声でも「学生の頃から利用している」や「1人でも入りやすい」「メニューが豊富」と、さまざまなシチュエーションで利用されやすいことがわかります。
コロナ禍値上げせず黒字化
多くの外食業界が値上げを行ったコロナ禍においても、サイゼリヤは値上げせずに黒字化を実現しています。
値上げせずに黒字化できた理由としては、自社独自の食材調達が大きいようです。
トマトは自社栽培、その他の食材も仕入れ業者をできる限り通さずに自前で買い付け、ワインの直輸入など…ちなみにイタリア産ワインの輸入量は日本一だそうです!
参考:サイゼリヤが「世界一」の理由 商道を貫いた創業者たち / 日経BigGate
また営業時間の見直し、デジタル化によるオペレーション改善、集計作業などの簡略化など、徹底的に無駄を省く取り組みが安い価格でのメニュー提供につながっているようです。
2024年春のグランドメニュー
先日発表された、春のグランドメニューの改定においては、従来メニューの改良のほか、全粒粉パスタを使ったメニューが登場しています。
全粒粉パスタは小麦をまるごと挽いて香ばしさが引き立ち、通常の小麦粉と比べて食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養が豊富に含まれているそうです。
サイゼリヤがヒット商品を生むために戦略的に力を入れているのは、新商品の開発ではなく既存商品の改良だそうです。
そんな中での新商品の全粒粉パスタは今後ヒット商品になるかも注目していきたいですね!
参考:「大胆に!」をキーワードに、売れないメニューをヒット商品に / PRESIDENT Online ACADEMY
また、デモグラの巻き戻し層ではイタリアンではなく、ファミリーレストラン利用者が多かったので、既存商品の改良ではなく新商品が増えるということは色々なメニューを求める層に届くのかもしれません。
注文方法の簡易化
利用者の意見にも出てきていましたが、以前までは注文用紙にメニュー番号を記入し店員さんに渡す方法でしたが、現在はQRコードを使ってスマートフォンでセルフオーダーするモバイルオーダーを取り入れ始めています。
参考:サイゼリヤの注文方法が進化してる!?カギは「客のストレス減」「効率化」 大手外食チェーンで起きているDXの正体 / ITmediaビジネス
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2402/26/news019.html
モバイルオーダーのメリットとしてはセルフオーダーにより聞き間違いや伝達ミスの減少、自前のスマホ注文による衛生面での安心、紙メニューと違い、印刷費用がかからない・機動的なメニュー提案が可能、外国語変換で日本語が苦手な外国人でもホール業務ができる・外国人のお客様も注文がしやすいくインバウンドにも対応可能、が挙げられます。
参考:紙で注文のサイゼリヤ、スマホのセルフオーダー導入に「複雑な反応」と絶賛 / Business Journal
まとめ
「サイゼリヤ」利用者の特徴
・20代前半、40代前半、女性が多い
・都会派・自己愛強め・アウトドア派
・さまざまな職業や環境の方に利用されている
・レビュー熟考・トレンドや限定重視消費の傾向
・メニューの改良や注文方法の簡易化など、長年続きつつも進化していることが「サイゼリヤ」の人気の理由なのかもしれません。
よく行くファミレスランキングは?
ちなみにファミレスの利用頻度については株式会社しんげんが運営する主婦向けの情報メディア「SHUFUFU」のアンケート調査によると、2~3ヶ月に1回や月に1回程度の人が多いようです。
また、よく利用するファミレスでは1位は「サイゼリヤ(38.5%)」、2位「ガスト(31.5%)」となっており、3位の「ココス(7.5%)」と4位の「ロイヤルホスト(6%)」と比べると「サイゼリヤ」「ガスト」が圧倒的な人気であることがわかります。コスパが良さが一番の理由のようです。
参考:【アンケート調査】よく行くファミレスのランキング1位はどこ?昼間の時間利用が最多! / SHUFUFU
■イメージ分析_サイゼリヤ(Knowns 消費者リサーチ調べ)

Knowns 消費者リサーチの「サイゼリヤ」のイメージでは“コスパ・経済性”が赤丸の他のファミリーレストランのイメージ平均よりも圧倒的に高いことがわかります。
ライバルはすかいらーく?ファストフードも?
サイゼリヤの巻き戻し層のブランド相関分析ではすかいらーくグループの「ガスト」が上位にきていることから、「サイゼリヤ」のライバルは「ガスト」を含む「すかいらーくHD」なのかもしれません。
現在「サイゼリヤ」にはファミリーレストランだけでなく、ファストフードの双方から利用者が流入しているそうです。
その理由には利用者のサイコグラやイメージでも出ていた“安いから”という理由が断トツですが、“おいしいから”も安さに次ぐ理由となっています。
参考:サイゼリヤ、「安いだけ」に危機感 接客や味を見直し2000店舗へ / 日経XTREND
しかしそこに胡座をかかず、松谷秀治社長はファミレスより安く、ファストフードより手が込んでいる「ファストカジュアル」化を掲げ、接客・料理ともに再成長に向け店舗の力を上げようと取り組んでいるそうです。
「サイゼリヤ」の進化が止まらない背景には、社長の自社を省みる姿勢が大きいのかもしれません。