N1分析とは?マーケティングに活用するやり方をわかりやすく解説!
商品やサービスを展開するには、顧客の理解を深めることが大切です。
全体的な顧客に注目するのではなく、特定の顧客の理解を深めることで効果的なマーケティング戦略を考えられるようになります。
特定の顧客を分析するには、N1分析のフレームワークがおすすめです。
N1分析を実施することで、顧客自身も気づいていないニーズや新しい価値を創造する分析ができます。
しかし、これまでN1分析を実施したことがない担当者は「どのように活用すればいいのかわからない」という悩みもあるでしょう。
N1分析は分析手法のなかでも最近注目されてきた手法のため、マーケティング業界でも理解されていないことが多いです。
当記事では、N1分析の詳細からマーケティングに活用するやり方までわかりやすく解説します。
N1分析とは

N1分析とは、実在する1人の顧客の理解を深める分析手法です。
「N」は分析対象のユーザー数を指しており、N1分析は1人の分析をすることを差します。
1人の顧客の理解を深めることで、顧客視点に立ちながら商品・サービスのアイデアや訴求する伝達方法などをマーケティング戦略に活かすことが可能です。
N1分析は、複数の大手企業でマーケターとして活躍した西口一希氏が提唱した分析手法となっています。
西口氏は、ニュースアプリケーションであるスマートニュースをアプリランキングNo.1へ押し上げた実績があり、新たな分析手法によってたしかな成果を出しています。
特定の顧客の動向を深掘りすることで、行動や心理から本質的なニーズを抽出できる点はN1分析の大きな特徴といえるでしょう。
N1分析の必要性
消費者のニーズが多様化している現代では、商品やサービスを選択する深層心理や行動理由を把握することは難しくなっています。
また、競合他社から類似する製品が多く展開されているため、機能面や利便性だけでなくユーザー体験を意識した提供が必要です。
従来の分析手法はあくまでも傾向を把握できるものであり、仮説に基づいたマーケティング戦略が実施される流れでした。
N1分析は特定の顧客にフォーカスすることで、商品・サービスに興味を持ったきっかけや立てた仮説の正誤をインタビューからチェックできます。
結果としてユーザー体験を意識したプロダクト開発ができるようになり、競合他社との差別化を図りながら独自の優位性を見出すことができるのです。
そのため消費者のニーズや競合他社との差別化を図るためにも、N1分析は必要なフレームワークとなっています。
ペルソナ設計との違い
N1分析と類似する方法として、ペルソナ設計があります。ペルソナとは、自社商品・サービスの典型的なユーザーを体現する仮想的な人物像のことです。
年齢や性別、地域、家族構成、職業など実在する人物のように設定し、効果的なマーケティング戦略を考えていきます。
N1分析とペルソナの大きな違いは、実際の顧客を対象としているかどうかです。N1分析は実際のユーザーに焦点を当てているため、より具体的な動向を分析できます。
一方ペルソナはあくまでも仮想的な人物像を想定しているので、自社のターゲットを把握できていなければ正しく設定することが難しいです。
そのためN1分析は実在1人の顧客、ペルソナは仮想的な人物像をもとに分析する方法であると理解しておきましょう。
N1分析を実施する3つのメリット

N1分析を実施することで、以下のような3つのメリットがあります。
・顧客視点で考えられる
・事業の改善点が見つかる
・プロダクト開発のヒントを得られる
それでは順番に説明します。
1.顧客視点で考えられる
N1分析は、1人の顧客に焦点を当てるため、顧客視点に立ちながら考えられるようになります。
仮説をもとにした分析だけでは事業者側の理想や希望が反映されやすく、効果的なマーケティング戦略を考えることは難しいです。
顧客が満足するユーザー体験を提供するには、客観的な視点での分析が必要になります。
N1分析を実施すれば顧客の深層心理や行動理由を把握できるので、事業者側の都合に流されず顧客視点で事業を進めていけます。そのため顧客視点で考えられる点は、N1分析を実施する大きなメリットの1つです。
2.事業の改善点が見つかる
N1分析は特定の顧客とインタビューを行うため、ユーザーの悩みや不安なポイントなどを参考にしながら事業の改善点が見つかります。
例えば化粧水を販売している場合、肌質によって効果の違いや持続力などは不安になりがちなポイントです。
顧客からの情報をもとに展開する商品の改善を行えば、顧客満足度が向上して売上アップを期待できます。
全体的な顧客からインタビューを実施すると人によって意見が異なるため、効果的な改善点を抽出することが難しくなります。
N1分析であれば改善点を絞れるので、方向性のブレをなくすことが可能です。そのため事業の改善点が見つかる点は、N1分析を実施するメリットといえます。
3.プロダクト開発のヒントを得られる
N1分析のインタビューを通じて、顧客から商品・サービスに興味をもったきっかけや求める効果を調査すればプロダクト開発のヒントになります。
従来の分析手法は全体的な顧客からのデータをもとに分析するため、あくまでも傾向から仮説を立てて実行へと移ります。
しかし、近年消費者のニーズは多様化・細分化されているので、データだけでは必ずしも最適なユーザー体験を提供することは難しいです。
N1分析は1人の顧客の購買モデルを深く掘り下げることから、どんなプロダクトが求められているのかを把握できます。
そのためプロダクト開発のヒントを得られる点は、N1分析を実施するメリットの1つといえるでしょう。
N1分析を実施する3つのデメリット

N1分析を実施するうえで、以下のような3つのデメリットも存在します。
・分析すべき顧客の特定が難しい
・対象の顧客によって成果が変動する
・仮説の調査・テストが必要
メリットと合わせてチェックし、自社で取り入れるべきか判断してください。
1.分析すべき顧客の特定が難しい
N1分析は1人の顧客を対象とした分析手法ですが、分析すべき顧客の特定が難しい点はデメリットです。
分析を行う顧客を特定するには入念なリサーチが必要になるため、担当者は専門的な知識が求められます。マーケティングの予算が限られている場合、分析の人材リソースに対して負担が大きくなってしまいます。
N1分析を実施する顧客の特定を行うには、顧客分析ツールの導入がおすすめです。顧客分析ツールであれば自社の顧客情報を属性別にリスト化できるので、分析対象の特定をスムーズに行えます。
人材リソースの削減にもつながるため、N1分析を実施する際には導入を検討しましょう。
2.対象の顧客によって成果が変動する
N1分析は対象の顧客によって成果が変動するため、想定した売上を得られない可能性も高いです。
1人の顧客の意見が必ずしも全体顧客が求める要素ではないので、プロダクトを改善したことによって逆効果になる恐れもあります。
1人の顧客に絞り込むことで少なからず発生するケースであるため、事前に目標を設定しておくことが大切です。
詳細なゴールや知りたい情報を決定しながら分析を進めることで、プロダクトから高い成果を期待できるようになるでしょう。
3.仮説の調査・テストが必要
N1分析は1人の顧客を調査するため、分析結果をもとにした仮説が正しいとは限りません。
仮説が全体の顧客に通用するわけではないので、ほかの調査やテストを実施しながら検証することが大切です。
N1分析の仮説が正しいと認識していると、マーケティング戦略を実施した際に求めているような効果は得られなくなってしまいます。
そのためN1分析を実施するときは、仮説の調査やテストを実施して十分な効果を見込めるのか判断するようにしましょう。
N1分析のすすめかた

N1分析の基本的なやり方として、以下のような手順を行っていきます。
調査設計
対象顧客の選定
5セグマップ
9セグマップ
仮説の立案
インタビューの実施
検証・改善
それでは詳しく解説します。
調査設計
まずはN1分析を実施する目的を明確にするために、調査設計を行います。
調査設計の項目では、調査の背景や手法、目的、対象者像の選定、スケジュール管理などを活用します。
調査設計の要素が曖昧になるとN1分析の効果が低下してしまうため、入念に作り上げることが大切です。
対象顧客の選定
続いて、N1分析の対象顧客を選定します。
調査設計の要素をもとに、理想的な対象顧客を決定していきます。
曖昧な仮説から対象顧客を選定すると、インタビューが失敗する可能性が高いです。
N1分析の対象顧客はランダムで選定されるわけではなく、自社の属性に基づいて決定します。
対象顧客の選定はN1分析のキーポイントとなるため、慎重に行うようにしましょう。
5セグマップ
5セグマップとは「ロイヤル顧客」、「一般顧客」、「離反顧客」、「認知・未購買顧客」「未認知顧客」の5分類にセグメントした図式です。
ロイヤル顧客が最上位となり、未認知顧客は最下位に位置付けられます。上位層ほど顧客の購入頻度や認知度が高いため、プロダクトへの好意について可視化できます。
調査対象者に質問をしながら5セグマップのどんな項目に当てはまるのかをチェックすれば、プロダクトの認知度や購入経験、購入頻度を調査可能です。
競合他社のグルーピングも合わせて行えば、差別化のポイントも把握できるようになるでしょう。
9セグマップ
9セグマップとは、5セグマップに今後の購買意欲や頻度を含んだフレームワークです。
具体的には、以下のような分類を行っていきます。
積極 ロイヤル顧客
消極 ロイヤル顧客
積極 一般顧客
消極 一般顧客
積極 離反顧客
消極 離反顧客
積極 認知・未購買顧客
消極 認知・未購買顧客
未認知顧客
未認知顧客
積極 認知・未購買顧客
積極 離反顧客
積極 一般顧客
積極 ロイヤル顧客
消極 認知・未購買顧客
消極 離反顧客
消極 一般顧客
消極 ロイヤル顧客
5セグマップの上位4層に対し、販促効果とブランディング効果の変化を可視化できます。
ターゲット層が求める要素をリサーチすることにより、どの顧客層にどんな質問を問いかければいいのかを明確にすることが可能です。
仮説の立案
5セグマップや9セグマップから顧客の細分化ができたら、分類ごとに割合をチェックしていきます。
競合他社と比較しながら利益向上につながる顧客層を抽出し、現状の心理や動向の仮説を立案します。
仮説の立案は担当者だけで実施するのではなく、複数人の意見を参考にするためにもプロジェクトの関係者を含めて行うようにしましょう。
インタビューの実施
仮説の立案を完了後、対象顧客にインタビューを実施します。対象顧客のインタビューをもとに、心理や行動傾向を抽出していきます。
一般顧客を対象とする場合、プロダクトに関する専門知識はないのでわかりやすく質問することが大切です。
インタビューでは、顧客が話しやすい環境を用意するように意識しておきましょう。
検証・改善
顧客とのインタビュー内容をもとに、仮説の検証を行っていきます。
検証では仮説が合っていたのかをチェックし、結果に問題があれば各ポイントを精査していきます。
自社の利益向上のために顧客に向けてどのようなアプローチを実施すべきか、検証と改善を繰り返しながら精度を高めていくようにしましょう。
N1分析を実施するときの注意点

N1分析を実施するときは、以下のような点に注意してください。
・顧客に合わせたアプローチ方法を考えておく
・汎用性の高さを意識する
・全体的な有益性を意識する
正しい分析を実施するためにも、ぜひチェックしておきましょう。
顧客に合わせたアプローチ方法を考えておく
N1分析を実施するときは、顧客に合わせてアプローチ方法を変更する必要があります。
マーケティング戦略は顧客の属するセグメントによって変化するので、状況に応じて最も成果を上げられる方法について精査することが大切です。
5セグマップや9セグマップなどのフレームワークを活用すれば、顧客に合わせた施策を行えるようになるでしょう。
汎用性の高さを意識する
N1分析は1人の顧客に向けて分析を行うため、特定の1人を満足させるためにマーケティング戦略を考えがちです。
しかし、1人を満足させたから成果を出せるというわけではなく、最終的なセグメントに属する顧客にとって有益な施策を導き出すことが大切です。
インタビューから顧客の心理的行動や動向を抽出し、汎用性が高い内容を導き出しながら全体へと応用できるマーケティング戦略を立案するようにしましょう。
N1分析の成功事例
最後に、N1分析の代表的な成功事例について説明します。
N1分析は複数の大手企業でマーケターとして活躍した西口一希氏によって提供された分析手法であり、ニュースアプリとして有名なスマートニュースをアプリランキングNo.1に押し上げたことで知られています。
西口一希氏は想定される顧客を9セグマップで分け、家族や友人、知人までスマートニュースの認知・使用実感についてヒアリングを重ねました。
そしてN1の対象者データを中心に集めることへとシフトし、収集データをもとにプロダクトの新規コンセプトやアイデアを見出しながらPDCAを回しました。
結果としてスマートニュースは日米合算で月間使用者数は1,000万人を超えており、現在では代表的なニュースアプリとして幅広い層から利用されています。
まとめ
今回は、N1分析の詳細からマーケティングに活用するやり方、おすすめのツール、成功事例まで解説しました。
N1分析は顧客1人に対して分析を行い、理解を深めながら効果的なマーケティング戦略を考える分析手法です。
N1分析によって商品・サービスに興味を持ったきっかけや立てた仮説の正誤をインタビューすることで、ユーザー体験を意識したプロダクト開発ができるようになります。
自社では見つけられなかった事業の改善点やプロダクト開発のヒントが見つかるため、求める成果へとつなげられます。
ぜひ当記事で紹介したN1分析の内容を参考にしながら、顧客の理解を深めて最適なマーケティング戦略を実施するようにしましょう。