カテゴリーエントリーポイント(CEP)とは完全ガイド|作り方から実践法・成功事例まで


カテゴリーエントリーポイントとは、消費者が商品やサービスを購入しようと考えた際に、特定のブランドを思い浮かべるきっかけやヒントのこと。簡単に言えば「あるシチュエーションで最初に頭に浮かぶブランド」を決める要因です。

カテゴリーエントリーポイントを増やすことで顧客との接点が増え、売上の拡大が期待できることが分かっています。

一つのカテゴリーで勝てなくても、複数のカテゴリーでカテゴリーエントリーポイントを確立すれば、成功のチャンスは広がります。

この記事では、カテゴリーエントリーポイントの基本からKnownsを使った活用法まで包括的に解説していきます。

カテゴリーエントリーポイント(CEP)がもたらす3つの主要メリット

「最初に思い浮かぶブランドになる」ことはどれほど重要なのでしょうか?ここではカテゴリーエントリーポイントがもたらす3つの主要メリットを見ていきましょう。

ブランド想起率の向上

カテゴリーエントリーポイントの目的は、消費者の購買行動に影響を与え、自社ブランドの購入を促進することです。消費者は、商品やサービスを購入する際に、限られた数のブランドしか検討しません。

この検討対象となるブランド群を「エボークトセット」と呼びますが、カテゴリーエントリーポイントを獲得することで、自社ブランドを消費者のエボークトセットに含めることができ、購買に繋がる可能性を高めることができます。

さらに、カテゴリーエントリーポイントは「市場シェアの拡大」「カテゴリーの成長」にも貢献します。市場で確固たる地位を築いているブランドは、カテゴリーエントリーポイントを通じて新たな顧客を獲得し、市場シェアを拡大することができます。また、新興ブランドは、独自のカテゴリーエントリーポイントを確立することで、新たなカテゴリーを創造し、市場の成長を促すことも可能です。

購買意思決定プロセスの短縮化

「思い出す」から「購入する」までの道のりをどれだけ短くできるか。これが現代マーケティングの大きな課題です。

消費者が商品購入を決断するまでのプロセスにおいて、カテゴリーエントリーポイントは重要な役割を果たします。効果的なカテゴリーエントリーポイントの設定により、消費者の購買決定が短時間で行われやすくなります。

特に注目すべき点として、未顧客(ライト・ノンユーザー)ほど、カテゴリーエントリーポイントで最初に連想した商品を選ぶ傾向があり、ブランドスイッチも少ないというデータがあります。

これはカテゴリーエントリーポイントがきっかけとなって購入に至るプロセスが短縮されることを示しています。

カテゴリーエントリーポイントとブランドが強く結びついていると、次のような効果が生まれます。

  • 消費者が特定の状況やニーズに直面した際、即座に特定のブランドを想起するようになる
  • 購入の検討から決定までの時間が短縮される
  • 「チケットを発券したついでに軽食も買っておこう」というように、購入のきっかけが生まれやすくなる

例えば、喉が渇いた時に自動販売機の前で長考する人はあまりいませんよね。多くの場合、特定のブランドを無意識に選んでいます。これこそがカテゴリーエントリーポイントの力です。

競合との明確な差別化

カテゴリーエントリーポイントは競合他社との差別化においても極めて重要な役割を果たします。

企業が効果的にカテゴリーエントリーポイントを設定し活用することで、競合他社との明確な違いを打ち出し、独自のポジショニングを確立することができます。

競合優位性を持つカテゴリーエントリーポイントを設定することで

  • 他社が提供していない独自の価値を顧客に提供できる
  • 競合がカバーしていないニッチな市場を狙うことで、独自のポジションを確立できる
  • 特定のカテゴリー内での差別化を図り、競争優位なポジションを築くことができる

また、カテゴリーエントリーポイントを複数持つことでリスク分散も可能になります。特定のカテゴリーエントリーポイントに依存しすぎると、トレンドの変化によって影響を受けやすくなりますが、

多様なカテゴリーエントリーポイントを持つことでマーケットリスクを分散し、安定した集客が期待できます。

カテゴリーエントリーポイントは単なるマーケティング手法ではなく、ブランドの想起率向上、購買意思決定の促進、そして競合との差別化という3つの主要メリットを通じて、企業の成長戦略の中核を担う重要な概念なのです。

Knownsを活用した効果的なカテゴリーエントリーポイント(CEP)戦略の設計手順

「でも、具体的にどうやってカテゴリーエントリーポイント戦略を立てればいいの?」と思われるかもしれませんね。私たちKnownsでは独自のデータベースを活用して、カテゴリーエントリーポイントを策定するご支援も行っています。

大まかには、4つのステップで進めていますので、具体例をもとにみていきましょう。今回は、テイクアウトお弁当チェーンのブランドをピックアップしてみます。

Knownsを活用したカテゴリーエントリーポイント(CEP)策定手順 STEP①

まず初めに「想起されるシチュエーション」における各カテゴリーエントリーポイントのシェアを算出します。ここでは「あなたが「テイクアウト弁当チェーン」を買う時はシチュエーションですか?」というアンケート調査から始めます。

具体的には、シチュエーションとしてチェックされた件数の総数を100%とした場合に、各カテゴリーエントリーポイントがどの程度の割合を占めているのかを明らかにします。なお、集計はカテゴリーエントリーポイントの大項目・小項目ごとに分類して行います。

そうすると「忙しい日や疲れて」「手軽に済ませたい」「なんとなく」「急にご飯を用意する必要がある」などのシチュエーションが想起ポイントとして見えてきます。

Knownsを活用したカテゴリーエントリーポイント(CEP)策定手順 STEP②

続いて各カテゴリーエントリーポイントにおけるブランドの想起状況について整理します。具体的には、各カテゴリーエントリーポイントごとに、各ブランドがどの程度想起されたのかを、選択率(%)として数値化し、項目別にまとめています。あわせて、各カテゴリーエントリーポイントにおけるブランド想起の総量(件数ベース)も集計し、全体像を把握します。

各チェーンブランドごとに、「忙しい日や疲れて」「手軽に済ませたい」「なんとなく」「急にご飯を用意する必要がある」などのシチュエーションでどれくらい想起されるかを可視化することができます。

Knownsを活用したカテゴリーエントリーポイント(CEP)策定手順 STEP③

テイクアウト弁当の購入シチュエーションについてのアンケート表をCEPシェアに合わせて圧縮した表

次に各カテゴリーエントリーポイント内におけるブランドシェアを算出します。具体的には、STEP②で算出した各カテゴリーエントリーポイント内のブランドシェアを基に、全体に対するシェアが把握できるよう、各カテゴリーエントリーポイントのシェアに応じて数値を圧縮・補正します。

たとえば、「想起シーン」×「ブランドA」における、全体に対する想起シェアを算出する形です。

このようにして各ブランドごとにどういったカテゴリーエントリーポイントでどれだけ想起されやすいかを可視化します。

Knownsを活用したカテゴリーエントリーポイント(CEP)策定手順 STEP④

続いてメンタルマーケットシェア(MMS)を算出します。

メンタルマーケットシェアとは実際の購買シェア(マーケットシェア)ではなく、「思い浮かべられた」「知っている」「選択肢に入っている」ブランドとして、どれくらい想起されているかを示す指標です。

STEP③で算出した「全体に対する各カテゴリーエントリーポイント×各ブランドのシェア」をもとに、各ブランドのメンタル上のシェアを集計します。つまり、消費者の頭の中でどれだけそのブランドが想起されているか、いわば「心の中のシェア」を可視化することを目的としています。

これにより各カテゴリーエントリーポイントで各ブランドがどの程度のシェアを獲得しているか、あるいは獲得できていないか、を可視化し注力ポイントを明らかにすることができるのです。

カテゴリーエントリーポイント活用における注意点

カテゴリーエントリーポイントの注意点を示した図

カテゴリーエントリーポイントを活用する際には、以下の点に注意する必要があります。

  • 消費者のニーズとの整合性: 消費者が本当に求めているカテゴリーエントリーポイントなのかを把握することが重要です。
    例えば、健康食品を販売する場合、「健康的なライフスタイル」をカテゴリーエントリーポイントとして設定することは有効ですが、ターゲットとする消費者が「ダイエット」に関心が高い場合は、「体重管理」をカテゴリーエントリーポイントとした方が効果的です。
  • 利用頻度: 特定のカテゴリーエントリーポイントが実際にどの程度の頻度で消費者に想起されるのかを確認する必要があります。
  • 競合との差別化: 競合ブランドとの差別化を意識したカテゴリーエントリーポイントを設定することが重要です。
    例として「高品質なコーヒー」をカテゴリーエントリーポイントとして設定した場合、多くのコーヒーブランドが同様の訴求をしているため、差別化が難しく、消費者の記憶に残りません。
  • 過剰なエントリーポイント: あまりにも多くのカテゴリーエントリーポイントを設定すると、ブランドイメージが曖昧になり、消費者に混乱を与えてしまう可能性があります。
    例えば、あるブランドが「高品質」「低価格」「環境にやさしい」といった複数のカテゴリーエントリーポイントを設定した場合、消費者はそのブランドの特徴を明確に理解することができず、購買意欲が低下する可能性があります。

カテゴリーエントリーポイントを活用していくには?

カテゴリーエントリーポイントのの活用法をわかりやすく示した図

デジタルマーケティングの進化や消費者の価値観の多様化に伴い、カテゴリーエントリーポイントの重要性はますます高まっています。 今後は、以下の点が重要になると考えられます。

  • デジタルツールとの連携: WebサイトやSNS、アプリなどを活用し、消費者がカテゴリーエントリーポイントを想起しやすい環境を構築することが重要です。例えば、消費者が特定のキーワードで検索した際に、自社ブランドの広告を表示したり、関連性の高いコンテンツを提供することで、カテゴリーエントリーポイントを効果的にアピールすることができます。
  • パーソナライズ化: 個々の消費者のニーズに合わせたカテゴリーエントリーポイントを設定することで、より効果的に購買行動に影響を与えることができます。例えば、過去の購買履歴やWebサイトの閲覧履歴などを分析し、消費者の関心事に基づいたパーソナライズされた広告やコンテンツを提供することで、カテゴリーエントリーポイントを想起させ、購買を促進することができます。
  • 新たなカテゴリーエントリーポイントの創出: 既存のカテゴリにとらわれず、新たなカテゴリーエントリーポイントを創出し、市場を牽引していくことが重要です。例えば、既存の製品やサービスに新たな価値を付加したり、新たな顧客体験を提供することで、消費者のニーズを捉えた新たなカテゴリーエントリーポイントを創造することができます。

よくある質問(FAQ)

「もっと知りたい!」というあなたのために、カテゴリーエントリーポイント(CEP)に関する頻出の疑問に答えていきます。実践的な理解を深めるため、具体例とともに解説します。

カテゴリーエントリーポイント(CEP)とUSP(Unique Selling Proposition)の違いは何ですか?

カテゴリーエントリーポイントとUSPは混同されがちですが、根本的に異なる概念です。カテゴリーエントリーポイントはブランドを思い出すきっかけとなる利用文脈を指し、消費者視点に立った概念です。対してUSPは企業が提供する独自の強みという企業視点に立っています。

特に重要な違いは、カテゴリーエントリーポイントは「消費者が商品やサービスを購入しようと思ったときにブランドを想起するきっかけ」である一方、USPは「他社との差別化ポイント」です。

カテゴリーエントリーポイントを増やすことで、顧客との接点が増え、売上拡大が期待できます。

たとえば、あるコーヒーショップのUSPは「最高級の豆を使用した香り高いコーヒー」かもしれませんが、そのカテゴリーエントリーポイントは「朝の通勤前の活力チャージ」「午後の仕事の合間のリフレッシュタイム」「友人との会話を楽しむ場所」など複数存在します。USPは提供する価値、カテゴリーエントリーポイントは消費者がその価値を求めるシチュエーションと言えるでしょう。

効果的なカテゴリーエントリーポイント(CEP)を判断する指標には何がありますか?

効果的なカテゴリーエントリーポイント(CEP)を判断するには、以下の指標が有用です。

  • 顧客のニーズや欲求との一致度
  • カテゴリーエントリーポイントの利用頻度(一定の頻度が見込めるか)
  • 競合他社との差別化状況
  • 自社製品の強みとの整合性
さらに、カテゴリー内での想起順位も重要な指標です。想起の上位にあるほど選ばれやすいため、カテゴリーエントリーポイントごとの想起率を測定することで効果を判断できます。

まとめ|カテゴリーエントリーポイント(CEP)で「想起されるブランド」

カテゴリーエントリーポイントは、消費者が商品やサービスを思い浮かべる“きっかけ”を設計することで、購買行動に大きな影響を与えます。本記事では、カテゴリーエントリーポイントの基本から実践ステップ、成功事例、さらには業界別の応用まで包括的に紹介しました。

効果的なカテゴリーエントリーポイント戦略は、ブランドの想起率を高め、購買意思決定を短縮し、競合との差別化を生み出します。Knownsでは、シーンごとのカテゴリーエントリーポイントシェアやブランド想起率の分析、メンタルマーケットシェア(MMS)の算出など、定量的なアプローチを通じてブランドの「心の中のポジション」を可視化できます。

今後、デジタル環境やパーソナライズの進化に伴い、カテゴリーエントリーポイントの重要性はさらに高まるでしょう。自社ならではのカテゴリーエントリーポイントを見つけ出し、消費者の“記憶の最前列”に立つブランドを目指しましょう。